バースデーキャンドル

 
「誕生日おめでとう」
 友雅はそう言ってあかねに微笑みかける。
「ありがとうございます」
 友雅の言葉に、あかねは嬉しそうに微笑む。
「これで、私と君の年の差が、また一つ縮まったってコトだね」
「ふふっ。また一つ友雅さんの年に近づきました。でも・・・、また六月になったら、年の差が離
れちゃうんですよね・・・」
 あかねがガッカリしたように呟く。
「どうして、そんなにガッカリするんだい?」
 友雅が、不思議そうにあかねを見つめる。
「だって、一生かかっても友雅さんには追いつけないんだなって・・・。友雅さんと、私の間には
十五年の空白があるわけでしょう?」
 そんなあかねを見て、友雅は嬉しそうに微笑んだ。
「どうして笑うんですか?」
 あかねは、納得がいかないといった表情で友雅を見る。
「どうしてって・・・。君が私との年の差をそんなに気にしてくれていたと知ってね。私のほうが、
こんなおじさん相手で、君がいつか退屈してしまうんじゃないかと思っていたから・・・」
「そんな・・・!! 友雅さんに退屈する日なんて、絶対来ませんよ!! 友雅さんは、いつも新鮮な喜
びを私に教えてくれる人だもん・・・」 
 あかねは、少し恥ずかしそうに頬を赤らめ、友雅を見上げる。
「ふふっ。そうかな・・・?」
 友雅がいたずらっぽく笑った。
「だって、私が好きになったのも、デートしたのも、キスしたのも・・・、全部全部、友雅さんが初
めてだから・・・」
 あかねがますます顔を赤らめ、恥ずかしさに俯いてしまう。
「そうだね・・・。私も、本当に人を好きになったのは君が初めてだよ・・・。こんな風に、誰かの
誕生を祝う日が来るとは思わなかったよ・・・」
 友雅は、先ほどから顔を赤らめ俯いているあかねに囁く。
「さあ、ロウソクに火をつけよう」
 そう言うと友雅はライターをあかねに持たせ、あかねの背後に回り、あかねを抱き締めるよう
に、あかねの手に自分の手を重ねる。
「何だか、キャンドルサービスみたい・・・」
「キャンドルサービス?」
「うん・・・。結婚式で、こうやってみんなのテーブルに火を灯していくの」
 あかねが、背後の友雅を振り返り、微笑む。
 その瞬間、友雅があかねの唇にそっと口付ける。
「友雅さん・・・」
 あかねが恥ずかしそうに友雅を見る。
「いつか、こうしてみんなのテーブルに火をともす日が来ると良いね」
 友雅はそう言って微笑む。
「その頃にはきっと、互いの年の差なんて、気にならなくなっているよ。そして、互いに会えなか
った時間よりも、ずっと長く一緒にいられる。君に出会えなかった頃のことなんて、思い出せなく
なるくらいにね・・・」
「うん・・・」
「それに、年齢ぐらいは君に追いかけてもらわないと・・・」
「どうして?」
「さあ、どうしてだろうね?」
 友雅はそう言って、はぐらかす。
 私は、君をずっと追いかけ続けるんだから・・・。友雅は、心の中でそう呟いた。


               終

お友達の誕生日記念に送った代物です。久しぶりの友×あかですが、どんな具合なんでしょう? 永泉さんが一番好
きなはずなのに、ウチのサイトに友雅さんの話が多いのは、書きやすいからという理由からだったんですが、久しぶり
に書いたら書きづらくなってました(苦)。まだまだ修行が必要です(笑)。