京ラブストーリー第二章<四>

「そうかい? 何だか騙されている気がしないでもないが、まあ、いいとしよう」
 とりあえずもまあまあらしい役を手に入れた友雅は、満足げに笑った。
「次、鷹通さんっ!!」
「はい」
 鷹通は胸に手を当て立ち上がる。
「あなたには、カンチと三上君の同級生であり、二人のマドンナである関口さとみをやってもら
います」
「あの、神子殿。マドンナというのは・・・?」
「マドンナって言うのは、みんなの憧れの的ってコトです。カンチも三上君もさとみがすきなんだ
よ・・・。なぜか・・・」
 あかねはドラマを思い出したのか、納得行かないといった顔で言った。
「ということは、神子殿。私は鷹通に恋心を抱かなくてはならないのかい? 美しいものは好きだ
が、鷹通は男だからねぇ」
「何言ってるんですか? 友雅さん!! 役者と言う生き物は、その役を演じている期間、相手役に
本気で惚れ込まなければならないんですよ!! そうじゃないと、役者なんて出来ないんですから
ね!! ドラマを演じている間は、鷹通さんを抱きたいという思いで臨んでください!! いいですね!!」
「あっ、ああ・・・。わかったよ」
 あかねのあまりにも凄い気迫に、友雅は圧倒される。
「神子・・・。あの、私も、全身全霊で鷹通殿を愛させていただきます」
「永泉さんは、鷹通さんじゃないんだよね。まあ、最初は鷹通さんなんだけどぉ」
 あかねは、笑顔で永泉を見つめる。
「では、皆さん、お待ちかねの赤名リカの発表です!!」
 一体、主役という大役を任されるの誰なのか。いよいよ僕の名前が呼ばれる瞬間が来たん
だ・・・と、なぜか勘違いしている詩紋。
「赤名リカは・・・」
 四人がそれぞれの思いを抱く中、その名が発表された。
「泰明さんです!!」
「同じ四神に属するもの。相手役にはちょうど良い」
 泰明はそう言って微笑む。
 しかし、その言葉に天真と詩紋が納得行かないといった様子であかねを見る。
「そこ!! 不満があるというなら、このあたしに言って御覧なさいな。聞いてあげるから」
「オイ、あかね。リカって自由奔放な女なんだぞ? もっとこう、他に適役がいるんじゃないか?」
「頼久っ!! 教えてやって!!」
「はっ、泰明殿ほど、自分の感情を表に出している方はおりません!!」
「わかった? 天真君」
 あかねの気迫に天真は怯む。
  しかし、そんな天真の姿を見ながら主役の座を譲りたくない詩紋が異議を唱えた。
「で、でも、やっぱり、泰明さんはリカには向かないんじゃないかなー? ボク、見たことあるけ
ど、リカのあの感情豊かな可愛いキャラクターは、泰明さんには無理だよ」
 詩紋は、だから、ボクを選んでよという顔であかねを見る。
「詩紋君、アンタ、まさか自分が一番リカに相応しい☆なんて思ってないだろうな。もし!! 思って
いるのなら、その考え、今すぐ改めろ!! じゃないと、頼久に斬らせるわよっ。アタシは本気よ。
頼久っ!!」
 あかねのその声に、頼久はゆっくりと刀を抜き、詩紋の喉元に当てる。
「じっ、冗談だよね、あかねちゃん・・・」
「アタシは常に本気だ!! そして、頼久も本気だから」
「神子殿のご命令ならば、この頼久、喜んで斬らせていただきます」
 あかね以上に頼久の目は本気だった。
「ごっ、ごめんなさいっ。ボク、少し勘違いしていたみたいです!!」
 詩紋は、ビクビクしながら答える。
「わかったならいいわ。頼久」
 あかねの合図に、頼久は刀をしまう。
「じゃあ、みんな。赤名リカは泰明さんに決定です。何か異議はありますか?」
 全員が首を横に振る。
「はいっ。じゃあ、みんな、拍手!!」
 何だかわからないが従わないと頼久に斬られるということを学習したみんなは、大人しく拍手
する。
「あかねー。オレや頼久、詩紋は何やれば良いんだよ?」
 天真が不思議そうに聞く。
「安心して。みんなにも、相応しい役を用意しています☆」
 あかねは、再びあの極上の笑みを浮かべる。
「頼久っ!!」
「はいっ!!」
 頼久は勢いよく立ち上がる。
「あなたは、三上君が乗っているフェラーリをやりなさい」
「ふぇらーり・・・?」
「車よ。高級車よ、カッコいいの」
「高級車・・・ですか?」
「高級車よ。気に入らないの?」
「いえ。この役、ありがたく受けさせていただきます。本物の車になろうと思います」
 頼久は笑顔で答える。
「良い心がけね」
 あかねはそう言って、頼久に微笑みかけた。
「あと、天真君と詩紋君なんだけど、二人には音響をやってもらおうと思います」
「音響?」
 天真と詩紋が本気なのかと言わんばかりの顔であかねに尋ねる。

               続く