無いものねだり<六>〜静流side〜

「私・・・。本当は、やらなければならないことがあるんです。でも、怖くて逃げて来てしまったん
です・・・」
「それを、お前さんはどう思っているのじゃ?」
「私は・・・。今、後悔しています。自分が誰かに忘れられるのが怖くて、逃げ出してしまったこ
と・・・。でも、私、どうしたら良いのか・・・」
 あかねは、俯いたまま呟く。
「元の場所に、笑顔で帰れば良いのじゃよ・・・」
 老人は、簡単なことだといわんばかりにあっさり言った。
「笑顔で?」
「みんな、普通に迎えてくれる・・・」
「そうでしょうか? 長い間、に逃げ出してしまったのに逃げ出したまま、連絡もしていないの
に・・・」
「それが、仲間というものじゃ」
「仲間・・・? ・・・。私、帰ります」
 あかねは、何か吹っ切れたように言った。
「ああ、気をつけてお帰り」
「色々、ありがとうございました。また、全てが終わったら、ここに来ますね」
「・・・」
 老人が何かを呟き、微笑んだ。
「神子。どうした?」
 昨日までのあかねとは様子が違うのに気付いた泰明があかねに不思議そうに尋ねる。
「私、帰ります。みんなのところに」
 あかねは、真っ直ぐに泰明を見つめる。
「そうか・・・」
 泰明は、優しく微笑んだ。
「では、帰ろう・・・」
 泰明は、あかねの肩を抱き、二人は、山を下っていった。


「神子様!! お帰りなさいませ」
 屋敷に帰った二人を待っていたのは、藤姫の笑顔だった。
「ごめんね、心配かけて。でも、私、今日からまた頑張るから」
 あかねのその言葉に藤姫は微笑む。
「他の皆様には、神子様は少し具合を悪くなされているとお伝えしていましたの。
 神子様は、きっと帰ってくると、私、信じていましたもの」
「藤姫、心配かけてゴメンね」
 あかねは、もう一度藤姫に頭を下げる。
 藤姫は、そんなあかねに微笑みかけた。

 全ての戦いが終わり、あかねは、泰明と京に残ることを決意した。
「泰明さん、私、あのおじいさんに会いに行きたいの」
 あかねのその言葉に、泰明は一瞬、困ったような顔をしたが、結局、あかねに連れられて、
あの山に行くこととなった。
 しかし、あの日小屋があったはずの場所には、酷くボロボロになった小屋しか残っていなかっ
た。
「おじいさん・・・、どこに行っちゃったんだろう・・・?」
 あかねは不思議そうに周囲を見回す。
「成仏できたのだな・・・」
 泰明は、ホッとしたように呟いた。
「えっ? 成仏? どういうことですか?」
 あかねは、泰明のその言葉に驚いて聞き返す。
「私たちが会ったあの男は、本来ならば人間としての器を無くした者だった。お前と出会って、
あの者も、何かを見つけることが出来たのだろう・・・」
 泰明のその言葉を聞いても、あかねは不思議と怖いという感情は芽生えなかった。
「そうだったんですか、あのおじいちゃん・・・。天国で、彼女と会えたかな・・・?」
 あかねはポツリと呟いた。
「大丈夫だろう」
「長い間会ってなかったから話さなくちゃいけないことがたくさんあるんでしょうね・・・」
「私たちも、後悔の無いよう、生きている間に話したいことは全て話さなくてはならないな・・・」
「泰明さん・・・」
「神子。私はいつ消え行く存在かわからぬ。しかし、いつか消えてしまったとしても、私はお前の
中にずっと生き続ける。そして、お前が、私より先に死ぬことがあっても、お前は、私の中でず
っと生き続ける。永遠は存在しないものかもしれない。しかし、私は、敢えて言いたい。お前を
ずっと永遠に愛している・・・」
「私も、泰明さんを永遠に・・・」
 二人の影が重なる。空はどこまでも澄み渡り、永遠の誓いを見守っていた・・・。

                            終

 もう、何が何だかわかんない話でごめんなさい。久しぶりに頭ん中がいっぱいになってしまいました(汗)。 ノープラ
ンで事を始めることの危険性を知りました(苦笑)。元々、ギャグの話を無理やりシリアスに持ってったからですね、は
い。これからは、計画練って書きます。