神子を求めて三千里? 第一章<一>



「神子様。朝でございますが・・・」
 いつまで経ってもいっこうに起きる気配の無いあかねを、藤姫が覗き込んだ瞬間、土御門邸
に、藤姫の悲鳴が響き渡った・・・。
「神子様ーっ!?」
 そこには、あかねがいた・・・のだが、唯一つ、いつもと違うことが・・・。
「み、神子様・・・。あの、これは一体どうしたことでございましょう・・・」
 藤姫は慌てふためきながら、恐る恐るあかねの頭に触れる。
「ね、猫の耳・・・?」
 しかし、藤姫のその言葉にあかねは何も返事をしない。それどころか、四つん這いになり、体
を伸ばしている。
「おい、藤姫。一体どうしたんだよ、デカイ声出して・・・。って、ええっ!? ネコ耳じゃん!! 本気で
ネコ耳じゃん!! やべぇぐらいネコ耳じゃんっ!!」
 天真はそう言うと、寝ぼけ半分だった眼をカッと見開いて、先ほどから、手で顔を擦っている
あかねを見る。
「て、天真殿?」
 藤姫が怯えたように天真を見る。
「やばいよ、やばいぐらいに男の夢だよ。これで、天真にゃん☆なんて言ってくれたら、俺、死
んでも良い・・・。これこそ、萌えだね!! 萌えー!!」
 天真がそう言ってムフゥムフゥと鼻息も荒く、あかねににじり寄る。
「藤姫、どうしたの?」
 先ほどの藤姫の叫びに、今頃、詩紋が駆けつける。
「うわぁ。なんか、見ちゃいけないもの見ちゃった瞬間だよねぇ・・・」
 そう言う詩紋の視線の先には、四つん這いで逃げ回るネコ耳を生やしたあかねを、ものすご
い形相で追いかける天真の姿があった。
「天真先輩、彼女いないと思ったら、ネコ耳フェチだったんだねぇ・・・。なかなか難しいよね
ぇ・・・」
 詩紋が納得がいったように頷く
「詩紋殿、これでは、神子様が・・・」
 藤姫がオロオロしながら二人を見ている。
「天真殿、お止めになって下さい。神子様が可哀想ですわ・・・!!」
 しかし、藤姫のそんな言葉に、目の色を変えてあかねを追い掛け回してる天真に届くはずも
無く・・・。
「天真先輩、あかねちゃんが可哀想だよ・・・」
 そう言って、詩紋は天真を止めようとするが、天真は詩紋の制止を振り切り、逃げ惑うあか
ねを追い掛け回す。
「痛い・・・。痛いよっ、天真先輩・・・。ゴメン、藤姫・・・。僕の美をもってしても、天真先輩の暴走
は止められないみたい・・・」
 詩紋など、初めから頼りにしてなかった藤姫は、今か今かと、あの男が来るのを待っていた。
「天真、すまない!!」
 そう言うと、藤姫が心待ちにしていた男は、木刀で思いっきり天真を殴った。その衝撃で、天
真は一瞬で気を失った。
「良く仕留めました、頼久」
 そう言うと、藤姫は安心したようにあかねを見る。
                            
                           続く