神子を求めて三千里? 第一章<四>


 
 
「友雅殿、ご安心を。私も、神子殿には嫌われておりますから・・・」
 頼久は慰めにもならないような気休めを、至極真面目な顔で言った。
「頼久と私では、立場が違うだろう? 君は、神子殿に好意を持っていないのだから・・・」
 友雅のその言葉に、頼久は申し訳なさそうに頭を下げた。


「何が原因かはわかりませんが、ひとまず、神子様は猫になってしまわれたようなんです。見か
け的には、猫の耳が生えた程度のことなんですが、中身がどうやら猫になってしまっているよう
で・・・。私が話している内容も、十分に伝わっているのはわかりませんし・・・。天真殿は、奇声
を発しながら神子様を追いかけますし・・・。どうしていいものか・・・」
 藤姫はそう言って、永泉の元で、丸くなりながらゴロゴロ言っているあかねを見る。
「でも、こいつ、別に咬んだり引っかいたりってしないぜ?」
 イノリがあかねの喉を撫でながら楽しそうに笑う。
「だが、神子がこれでは鬼との戦いに行けるものかどうか・・・」
 泰明も、あかねの頭を撫でながら心配そうに呟く。
「て言うか、みんな何だかんだ言って、どさくさに紛れてあかねちゃんに触り過ぎだよっ!! ボク
のあかねちゃんなんだよっ!!」
「お前の神子ではない」
 詩紋の思い込みの激しい発言は、泰明のその一言に一蹴された。
「酷いよ、みんな・・・。僕が可愛いからって・・・」
「詩紋殿。申し訳ございませんが、少し静かにしていただけませんか?」
 藤姫は詩紋に冷たい視線で見る。
「もしかすると、鬼の仕業かも知れぬな・・・」
 先ほどからもずっとあかねの頭を撫でている泰明が呟いた。
「何か、良い方法は無いのでしょうか?」
「そうだよな・・・。オレ、コイツに、心のかけら、見つけてもらったし・・・。何か、礼がしたいって
思ってたんだ」
 イノリは照れくさそうに笑った。
「そうだね、私も心のかけらを見つけてもらったし・・・。何かお礼をしないといけないね・・・」
 友雅はそう言って、少し気恥ずかしそうに微笑む。
「みんな、心のかけらって、本当にあったの? ボク・・・、あかねちゃんと散策したこと無いから
わかんないんだけど、心のかけらって一体どんな形なの? それが手に入ったことで、何か変わ
るの? どんな気持ちになるの? ボク、何にも知らないんだ、教えてよ・・・」
 詩紋は、泣きながらそれを乞うが、誰も自分の心境の変化を詩紋に教えてやろうとはしなか
った。自分が神子に惚れていることだけは、隠さなければ・・・。皆、なぜか、そう感じていた。頼
久までも・・・。
「ねぇ、天真先輩ももらったのかな? 僕、現代から来た友達なのに、この扱いってどうなのか
な?」
「皆様、神子様を元に戻す方法はきっとどこかにあるはず・・・。申し訳ありませんが、その方法
を皆様の力で探していただけませんでしょうか?」
 藤姫は、詩紋の訴えを無視すると、みんなを見る。
「ええ・・・。皆で探せばきっと何か手がかりが見つかるでしょう」
 鷹通はそう言って微笑むが、その場に残っていたのは、ボロボロの詩紋だけだった。
「皆、行っちゃったみたいですよ。天真先輩も、縛られたまま、付いてったみたい・・・」
 詩紋のその言葉に鷹通は軽くめまいを感じたが、遅れを取ってはならぬ時を取り戻し、皆を
追いかけることにした。
「鷹通さん、待ってよぉ」
 必要とされているんだかいないんだかわからない二人は、必死で皆を追ったのだった。

第一章 終

 ええと、お友達にどんな話が読みたいって聞いたら、ネコ耳に萌えちゃう天真? と言われたんで書いちゃった一
品。とりあえず、藤姫の館編は終了です。相変わらず、ノープランですが、来月辺りには、続き書けたらなーと。そうい
えば、来月、クリスマスありますね・・・。クリスマス創作もやらねば・・・。こうして、どんどん自分の首を絞めて行く
私・・・。