眠れる王子には姫の口付けを

 夕方から降り始めていた雨が、いつの間にか雪へと変わり、静寂な闇の中、雪が降り積もる
音だけがしている。
 不意に、目を覚ましたあかねは外を眺める。
「雪だ・・・」
 初めて見る京の雪に、あかねは嬉しそうに微笑む。
「キレイ・・・」
 しばらく、真っ白な雪を眺めていたあかねは、眠っている永泉が起きてしまわないよう、静か
に寝室へと入っていった。
 寝室では、永泉が静かに寝息を立てている。あかねは、そんな永泉を気遣うように、永泉の
隣に体を寄せた。いつもなら、永泉がこんなに熟睡していることは無いのだが、最近は色々と
忙しかったため、だいぶ疲れていたのだろう。
「頑張ってたもんね」
 あかねは永泉の寝顔を見つめながら、そう呟いた。
 思えば、あかねがこうして永泉の顔をじっくり見るのも、初めてのことだった。普段は、何だか
恥ずかしくて、あんまりじっくり見ることが出来なった。
「凄い、まつげ長い・・・」
 あかねは永泉の目元を見ながら自分の睫に触れる。
「私より、長い・・・。いいなぁ」
 そう呟きながら、しみじみとなぜ永泉が自分の事を選んでくれたのか不思議になってしまっ
た。永泉の周りには、自分なんかより、もっとキレイで素敵な人がいるのに・・・。 あかねがそ
んな思いで永泉を眺めていると、永泉が何かを呟いた。
「・・・」
「・・・? えっ?」
 あかねが、永泉が何を呟いたのか聞こうと耳を寄せる。
「・・・」
 永泉は呟くと、とても嬉しそうにに微笑んだ。
 あかねは、永泉のその言葉に少しだけ恥ずかしそうに顔を赤らめるが、すぐに嬉しそうに微
笑んだ。
「私も・・・」
 そう言うと、周囲を少し気にしながら、永泉が眠っていることを確認すると、眠っている永泉に
そっと、あかねからは初めての口付けをした。
 しばらく経ってから急に恥ずかしさがこみ上げてきたあかねは、小さな声で「おやすみ」と言う
と、永泉に背を向けて目を閉じる。
 永泉は、そんなあかねの鼓動を背で感じながら、あかねからの初めての口付けに、あかね
以上に顔を真っ赤に染め、この鼓動があかねに気付かれないよう、願うばかりだった。 


                      終 
 新年一番最初の更新なんで、頑張って永泉様の甘々にしてみました。いかがでしょうか? 最近ギャグだったり、シ
リアスだったりが続いていたので、そろそろ甘が欲しいかなと・・・。でも、何だか、自分の願望書いてるみたいで恥ず
かしいですね。
 遅くなってしまいましたが、新年明けましておめでとうございますのフリー創作でございます。よろしかったらご自由
にお持ち帰り下さい。