ひとり<三>


 あかねがいない毎日は、特別なものではなく……、ごく当たり前の平凡な日常として存在し、
過ぎていく。
 それは、泰明にとって耐え難いことであった。
 あかねに会いたい。
 しかし、あかねの居場所も知らなければ、ここがあかねの住む国であるのかさえ、わからな
い。
 こうして、あかねに会うことが叶わない今、泰明は改めて自分があかねの事を全くと言って良
いぐらい知らないのだということを痛感していた。
 ずっと一緒にいようと言ったあの約束は、もう一生果たされることはないのだろうか? あか
ねに会うことは二度と出来ないのだろうか?
 ずっと一緒にいよう。
 あの日の約束は、もう二度と叶えられることはないのだろうか?
 自分が傍にいることが叶わなくとも、神子が幸せなら良い。
 そう思っていたあの頃の自分が嘘のようだ。
 心の通じ合ったはずの今、あかねの隣にいるのはやはり自分でありたい。他の誰でもなく―
―。
 しかし、あかねと別れてから二年が経った今、あかねの隣には誰かがいても仕方のないこ
と。
 あかねがいなくとも季節が当たり前のように変わっていくのと同じ。
 春になれば木々が芽吹き、花は美しく咲き誇る。
 夏の訪れは、当たり前のようにやって来た。
強い日射しが自分を照らし、夜になれば近くの川で蛍が飛び交う。
 そして、夏が去ると同時に秋が訪れ――。
 山の木々は赤く黄色く衣を変える。
 そして、全てのものを静かな眠りへと誘うように冬が訪れる。
 しんしんと降り積もる真っ白な雪は、この世界でも同じように白い。
 そして、再び春がくる。
 それは、前の春とはまた違う色を見せるもので――。
 変わらないものは無いのだということを泰明に知らしめた。



                          続く
  
 
 久しぶりの更新です。この話の存在自体覚えていらっしゃる方、いないんじゃないかしら? ってぐらいです。すみま
せん。それぐらい久しぶりすぎ……。最近、何だかいろいろ手を付けてしまって、手広くやりすぎて手が足りない感じ
です。頑張って更新しますんで、心の片隅にでも覚えてやっていていただけるとありがたいです。