マブラヴ(age)の彩峰の誕生日です。 WFの候補キャラにも悩んだほど、私、実は 好きなキャラだったりします。 正面のアップ絵が一番可愛かったというのが 理由なんですけどね(^^ゞ つっけんどん、頑固、だけど実はすごい 甘えん坊でやきもち焼き。 彩峰ルートの最後なんて声からしてキャラ 変わってるし…。 せっかくの記念なのでフィギュア原型用に書いた 落書きにパソ色塗りしてみました。 実際に造るとしたらポーズとか表情とかはもっと 凝ったものになるのでしょうが。 下ハミ○○がうちの表現限界ですね('∇'*) 以前から各所で生誕記念SSというものを読ませて いただいていたので私も初挑戦してみました。 いや〜実際に書いてみると難しいこと! これも記念ということでご勘弁くださいまし。 彩峰ルートの幕間劇SSです。ではでは。 |
彩峰慧・聖誕祭記念SS〜けじめ〜
「タケル!?何言ってるの?」
「だ・だからさ…」
「どうしてそんな事するの?ねぇ!?」
「だ・だってなぁ…最後かもしれないんだぞ。」
「だって、気持ちの整理なんて出来ない…よ。」
「で・でもな…二人にとって大切なことなんだ。」
「タ・ケ・ル???」
(1)
人類の宇宙脱出計画が決定してから世界は混乱を極める一方だった。
何しろほんの一握りの人間しか「選ばれなかった」からだろう。
反対派のデモがエスカレートしてテロも多発した。
誰もがBETAの恐怖から逃げ出したかったに違いない。
打ち上げのスケジュールが確定した頃、俺の手元に1枚のカードが
届いた。宇宙船の搭乗者IDカードだった。
「誰かが」俺を選んでくれたらしい。
以前の俺なら「命が助かる」ことを優先させて喜んでいたかもしれない。
しかし、この世界で大切な仲間ができ、愛する女を見つけた今、
自分ひとりが生き残るという選択肢は逆に俺を苦しめただけだった。
皆を連れて行けないばかりか、慧一人でさえ連れて行けない。
その夜、眠れない状態のまま夢を見た。
久しぶりに見た「むこう」の夢だ。月詠さんに何か言われている。
「何かを成したいのであれば……たとえ準備が整っていなくても
決断しなければならない時があるのです。」
「この期を逸することは何も手に入らないことを意味します。」
曖昧な意識の中で月詠さんの言葉で胸がバクバク言っている。
「決断?選択か…。俺は慧を選んだんだ。慧の愛を手に入れたんだ。」
と。何でこんな簡単なことに気付かなかったんだろう。俺が誰かに選ばれたの
なら今度は俺が慧を選べばいいだけじゃないか。
そうは言っても俺も今では小隊長の立場にある。
そんな立場なので慧のみを特別扱いするような事は普段から
しないようにしていたが、皆も既に俺と慧の事は知っているので
あえて蒸し返したりはされていない。
だからこそ、一応は気にして他の誰かを選ぼうと一人ずつ持ちかけた
時には揃いも揃って皆に同じ事で怒られてしまった。
「私はどうやらそなたを買いかぶっていたようだ。」
「何言ってるのよ。大事なことじゃないの!」
「それはダメだと思います。」
「もっと気にしてあげなくちゃ。うん。」
そして最後に
『彩峰(慧ちゃん)(慧さん)にすべきよ』
俺は慧を地球から脱出させるつもりだった。
宇宙が絶対に安全という保証はどこにもない。
しかしこの地球でこいつを守りきる自信は俺にも無い。
例えばこいつのために命を投げ出すくらいは何でもない。
でも、もし俺が先に死んだら誰がこいつを守ってやるんだ?
その後を…。そんな事は耐えられない。
俺は決心した。
慧には、慧だけは生きていてもらいたいと。
俺はある人にそれを報告するつもりでいた。
津島…荻治。慧の父親だ。
以前、慧の部屋で封筒の宛名を見ていたし敵前逃亡の話も聞いている。
いつか家族の話をした事があったのだが、父親の話をする時の
寂しそうな慧の表情が印象に残っていた。
気にはなっていたが、こればかりは慧自身の問題でもあり本人が何か
言ってくるまでそっとしておいてやろうと考えていた。
そして、ひとつだけ俺は秘密のまま心に決めた。
無事に宇宙に脱出させてやった後で、慧の父親に全てを報告しようと。
慧が笑えるようになった事、仲間ができた事、そして無事に宇宙に
旅立った事を伝えて親父さんを安心させてあげるべきだと思った。
それが俺にできる最後の親孝行だろうから。
慧を得たお詫びというわけではないが。
月詠さんに事情を話して親父さんの所在をこっそり調べてもらった。
帝国軍関係の投獄者については一部を除き総攻撃に向けて多くの者が
原隊復帰となり慧の父親も後方任務で所在が確認できたとの事だった。
それも横浜基地から高機動車で1時間ほどの場所にある帝国軍の補給基地だ。
俺は自分が慧の上官である事、個人的な付き合いがある事を隠さず書いた手紙を
出した。一度だけでいいから面会できないかと最後に添えて。
通常ならとても届かないと思っていたが月詠さんの指示で特別便扱いされたお陰で
確かに速やかに処理された。
間もなく慧の父親から返事が届いた。
「お会いできる日をお待ちしています。」と。
(2)
「なぁ慧。」
「なに?」
「明日一緒に行って貰いたいところがある。」
「いいよ。どこなの?」
「帝国軍の補給基地。」
「任務?一緒でもいいの?」
「あぁ。随伴が必要なんだ。」
「そうなんだ。」
「一緒に行ければ明日一日寂しくないだろう?」
「そっだね。でも帝国軍基地なんて初めて。」
「高機動車を抑えてあるからドライブみたいなものだな。」
「どれくらいかかるの?」
「ん〜片道1時間くらいかな。景色は楽しめそうもないけど。」
「贅沢は言えないよ。一人で留守番してるよりマシ。」
「慧」
「一緒にいられる時間って大事なんだよ?」
「分かってるさ。だから一緒に行くんだ。おまえがいないと意味がない。」
「…」
「な・なんだよ。」
「それ、任務なんだよね?」
(慧はカンの鋭いやつだからちょっとまずいかもしれない)
「私は何をするの?」
「…」
「タケル!?何か隠してる?なんかイヤな感じがする。」
(もう隠せないだろうな…俺)
「慧。」
「何?」
「明日はある人に会いに行く。」
「………。」
「その人は俺にとってとても大事な人だ。」
「えっ?」
「その人にお前の事を報告しなくてはならない。」
慧は意外そうな顔をした。一応俺の両親は死んだことになったままにしていた
し、身内、知り合いの話をした事もなかったので想像できなかったのだろう。
「そして…むしろ俺よりも…おまえにとって大事な人だ。」
「…?」
慧の表情が固くなった。
「何?…え?」
「おまえの父さんに会いに行く。」
「…!」
俺を見つめる視線が途端に鋭くなる。
憎しみ、疑い、そんな色の中に戸惑いの色は隠しきれていない。
「タケル!?何言ってるの?」
「だ・だからさ…」
「どうしてそんな事するの?ねぇ!?」
「だ・だってなぁ…最後かもしれないんだぞ。」
「だって、気持ちの整理なんて出来ない…よ。」
「で・でもな…二人にとって大切なことなんだ。」
「タ・ケ・ル???」
まずい…慧の目は本気で怒ってる。
さっきまでの甘えた目に突然焦点が戻った感じだ。
おまけに声も震えてるし。
こんな慧を見るのも久しぶりかもしれない。
まぁ予想してた反応だったけど。
甘いムードからの落差が激しいだけに少しだけ後悔したかな。
話し出すタイミングを。
「慧。まず俺の話を聞いてくれ。殴るのはそれからにしてくれよ。」
「殴ったりはしない。でもちゃんと話してくれないと分からない。」
「本当なら俺は慧を選んだ時点でちゃんと挨拶をすべきだったんだ。
慧を俺に下さいって。でも慧は親父さんの話をするのを嫌がっていたし
帝国軍の獄中では面会の方法もない。ずっと気にはしてたんだ。」
「そんな事いいのに。私は私だけで生きてきたんだから。」
「いや、おまえ達は、ある事件がきっかけで違う人生に引き裂かれただけなんだ。
親父さんがおまえの事を憎んだり、忘れたりしている筈がない。」
「……。」
「おまえは俺と付き合ってから変わった。皆もそう言ってる。」
「皆が?」
「ああ。おまえは小隊のみんなの前では昔と同じようにしているつもり
なんだろうけどな。たまなんか『慧ちゃん優しくなったよね〜』って
言ってるし、あの天敵の委員長でさえ『そうね。丸くなったっていうか、そう
女らしくなったわよね。悔しいけど。』なんて言ってるんだぞ。」
「榊が…。」
戸惑いか恥じらいか、そんな感情があるんだと思う。
俺を睨んでいた目が下に伏せられた。
「でも俺は思うんだよ。慧は変わったんじゃない、元に戻ったんだろうってな。」
「…?」
「おまえ言ってたろう?親父さんが投獄されて何もかも無くなってしまう前は
家族みんなが笑って暮らしてたって。
だから今の慧の笑顔ってその頃のままなんだろうなって思うんだよ。
そんな優しい笑顔を見せる娘を父親が忘れられるわけないじゃないか?」
「だからこそ俺は親父さんにちゃんと挨拶したいんだよ。
慧は今、幸せですってな。」
「タケル…。」
「もう心配はいりません。俺がついている限り慧を守り抜きます。
だから安心して慧を俺に下さいって言わなくちゃいけないんだ。」
「う…う…タ…ケル…」
慧は涙が溢れそうな目で俺を見上げるといきなりしがみついて泣き出した。
「でも…な。」
「うん。」
「本当はちょっと違ってたんだ。」
「え?」
「俺は慧を宇宙に脱出させるつもりだったから、
親父さんへの報告も『慧は無事に宇宙に脱出しましたから安心してください』
ってなる筈だったんだ。」
「そんな事もう言わないで。」
「いや、その運命を決めたのは俺の責任だ。おまえがどう言おうともな。
だから俺はその決心で親父さんに誓わなくては安心してもらえない。」
「私だって…」
「それに一番大事な事だけど『会える最後のチャンス』かもしれないんだぞ。」
「…。」
「幸せになったおまえを見てもらいたいし、このまま感情の行き違いがあったまま
2度とそのチャンスがないなんてどっちも不幸だと思うんだよ。」
「…。」
「だから一緒に会いに行こう。
そして『今、幸せです。安心してください』って報告しようぜ。」
「…うん。わかった。タケルを見てもらいたい気持ちはあるから。」
(3)
翌日、俺達は目的地に向かっていた。
多少のガレキには怯まない高機動車だったが、何箇所か道路そのものが
封鎖されていたりと思ったより時間がかかってしまった。
慧は、昔のように口数が少なくなり、空を見上げている。
予定の倍近い時間をかけて俺達は帝国軍の補給基地に着いた。
「ふぅ。やっと着いたぞ。BETA注意報も出なかったしな。」
「…。」
慧はまだ何かに迷っている様子だ。
「さぁ行こうぜ。」
国連軍の制服を着ている俺達に最初は何事かと思ったらしい守衛も
俺達2人が少尉であることから丁寧な口調で尋ねてきた。
「本日のご用向きは何でありましょうか?」
「国連軍の白銀中尉だが…。」
すると名前を聞いただけで、
「はっ。近衛軍より特別連絡が入っております。
そちらは彩峰少尉でいらっしゃいますか?」
「そうだけど。近衛軍からの連絡って?」
「はい。ご面会には全てに抜かりないようにご案内せよとの命令であります。」
月詠さん。ちょっと大げさなんじゃないかなぁ。
「さっこちらへ。」
俺達は広々とした応接室に通された。
ここってお偉いさんが使う部屋なんじゃないか?壁に何人もの肖像画かなんかが
かかってる。月詠さん。徹底してるな。
「タケル?」
慧が俺の手を引いた。
「ん?どうした?何も喋らないからそっとしといたんだけど。怒ってる?」
「ううん。そんなんじゃない。」
「心配なのか?」
「私、ちゃんと笑えるかな?幸せですって言えるかな?」
「大丈夫。不安になったら二人の初めての夜を思い出せよ。」
「馬鹿…。」
「コン・コン」
「失礼致します。お呼びの者をお連れしました。」
「カチャ」
部屋に一人の男性が入ってきた。筋肉質で見るからに精悍な体つきだ。
「慧…?あ…失礼しました。
津島です。白銀少尉殿。」
「そんな言葉遣いはやめてください。
今日は慧さんのお父さんに会いにきたのですから。」
「はは…。原隊復帰になって軍籍は復活したものの階級はヒラ同然ですから。
近衛軍の中尉から直接呼び出された時は心底不安になりましたよ。」
「ともかくそれでは話が進まないので普通に行きましょうよ。普通に。」
軍って厄介なところだな。本当に。
慧は親父さんを見ているのだが、目が合いそうになると俯いてしまう。
「慧。」
親父さんは慧の目の前に立つと呼びかけた。
「父…さん。」
そう言うやいなや二人は抱き合って泣き出した。
抑えていたものが全て溢れ出したんだろう。
「慧、慧なんだな。」
「うん、父さん、父さんなんだね。」
「あぁ大きくなって、どんなに会いたかったか。」
「うん。私も。でもどうしても会えなかった。」
「いや、いいんだ。今、こうして会えたから。これでいいんだ。」
「父さん、父さん。ごめんね。ごめんね。」
慧が子供に戻ったように泣きじゃくっている。
それを泣きながら優しい笑みでなだめてる親父さんがいる。
自分の慧を愛する気持ちには自信があっても二人を見ていると
「父親の愛」というものの広さ、深さに圧倒されてしまう。
俺もこみあげてくるものに我慢できなかった。
「慧は今、幸せなんだな。」
慧の頭をなぜながら親父さんが言う。
「えっ?」
「昔と同じ素直な目で真っ直ぐ父さんを見てくれてるからな。」
「あの事件の後、1度だけあった時は父さんの目を見てくれなかったし
刺すような視線を感じたものさ。」
「…。」
「この人、白銀くんのお陰なのかな?」
「父…さん。ごめんね。ごめんね。」
慧はまたぐずってしまった。
「お父さん。白銀武です。衛士として同じ部隊にいます。
そして慧さんとお付き合いさせてもらってます。時勢のために何もしてあげられて
いませんが、慧さんとは生涯共に歩むつもりでおります。」
「白銀君。」
「タケル。」
「順番が逆になりましたが、これだけはちゃんとしておきたいと思いました。
お父さん。慧さんを自分に下さい。」
親父さんは慧の型に手をかけるとその目を見つめて問い掛けた。
「慧は今、幸せなんだね?」
しゃくっていた慧も親父さんの目を見つめ、そして答えた。
「…はい。そばにいられる事が一番の幸せです。」
「そうか。では反対する理由は何もないな。」
「あっ、ありがとうございます。」
俺は親父さんに改めて礼をした。
「白銀君、慧の事、色々ありがとう。
何も言われなくてもこの子が君にどれだけ心を任せているか父親の私には分かるよ。
私は思ったより早く娘の手を離してしまっていたのでね。
慧が幸せになっているかどうかだけがいつも心配だった。
これからも慧の事をよろしく頼む…よ。」
親父さんは俺の目を見つめたまま涙を溢れさせていた。
「ありが…とうござ…」俺も同じだ。言葉にならない。
「お父さん。実はお詫びしなければならない事があります。
慧を宇宙に脱出させて安心させてあげたかったのですが…。」
「待って!タケル。それは…。」
「いいんです。白銀君。
今日の時点でここにいるという事だけで。
娘の命が大切なのは勿論ですが、大切な人と離れてしまってまで
大切にできるかということは私には言えません。
何より2人が同じ部隊であればいつでも助け合えるじゃないですか。
この時勢、これ程近くで娘を守ってもらえるなんて贅沢な願いです。
何があっても慧はあなたから離れようとはしないでしょう。
この子は気に入ると頑固ですから。」
「お父さん。」
「お父さん…。」
「本当にありがとうございます。」
親父さんはまた慧の事を見つめている。
少しの間、二人にしてやろうと思った。
積もる話もあるかもしれない。親父さんも俺に遠慮するかもしれない。
「ちょっと失礼します。」
「タケル?」
「何。少しだけ…トイレだよ。」
慧にも親父さんにもそれで通じたようだ。
「うん。ありがとう。」
俺は部屋の外に出た。
(4)
俺は一息ついて部屋に戻った。
そして頃合を告げる。
「ではお父さん。慧の事はお任せください。
これから戦局は予測できませんがくれぐれもご無事で。」
「ありがとう。白銀くん。」
「慧。お前に会う願いもかなった。そして言いたかったことも言えた。
もう迷うことなく彼についていくんだよ。いいね。」
「わかってる。もう一人じゃない。」
「ではこれで失礼致します。本当にお元気で。いつか会える日まで。」
そして俺は親父さんに敬礼をした。
階級なんて関係ない。慧に責任を持つ意思を込めて。全ての思いが通じるように。
「白銀少尉。彩峰少尉。ご武運を祈ります。」
帰り道。慧は親父さんと話した事を教えてくれた。
「タケル。」
「ん?」
「父さんと話せたよ。」
「そうだな。」
「敵前逃亡のこと。」
「…。」
「どう考えてもうまくない作戦だった。
それなのに命令は前進あるのみで勝ち目がないどころか全滅の危険もあった。
父さんは仲間を死なせることがどうしてもできなかった。
例え自分が罪に問われたとしても無駄死にだけはさせられない。
その死は誰の為にもならないから。そんな死に様はみじめすぎる。
そう話してくれた。」
「そうか。」
「今なら父さんの気持ち分る気がする。私にも仲間ができたから。
その仲間が無駄死にするのはきっと耐えられない。
一切の言い訳をしなかった父さんの覚悟もよく分る。」
「大丈夫だ。俺はそんな事は絶対にしないから安心しろよ。」
「うん。分ってる。」
「親父さんときちんと話ができてよかったな。」
「うん。タケル。本当にありがとう…ね。」
「いや、もう泣くなよ。皆に俺が何言われるか分ったもんじゃねぇ。」
「ふふ。それもそうだね。」
「だろう?委員長もあれでいてお前の事心配してるしな。
冥夜に至っては問答無用だし。たまは模擬弾で狙撃しやがる。美琴は…いいや。」
「タケルにいじめられた…そして無理やり…。」
「本当にやめてくれよ?」
「分ってるよ。タケル、死ぬまで一緒だよ。」
「あぁ」
「大好き…。」