株価と金利            99.11.25 木下秀人

       日本経済はバブル崩壊からの再生  00.4.19,8.20 補筆

       米国経済は空前の長期成長のソフトランディング

指票の推移

年月 日経225 TOPIX 公定歩合 円・ドルNYダウ・公定歩合   摘 要

86.01 13024  1025 ‐0.54.5% 192  1502   7.5

86.03 15859     ‐0.54.0  179  ―  ‐0.57.0

86.04 15825     ‐0.53.5  168  ―  ‐0.56.5,‐0.56.0

86.11 18325  1556 ‐0.53.0  162  1955 ‐0.55.5

87.02 18544  1557 ‐0.52.5% 153  ―  +0.56.0 グリーンスパン就任 

88.06 28342            132  −

88.08 28366            127  2079 +0.56.5% 

89.02 32452  2487        126  2289  +0.57.0

89.05 34266  2537 +0.753.25 142  2502  

89.10 35678  2697 +0.503.75 140  2791 

89.12 38915  2881 +0.504.25 143  2753 

90.03 29843  2173 +1.005.25 154  2695 

90.08 25978  1973 +0.756.00 143  2614 

90.12 23848  1733        135  2633  ‐0.56.5%  

91.01 23156  1704        131  2730  −0.56.0

91.04 26111  1963        137  2887  −0.55.5

91.07 24108  1868 ‐0505.50 137  2958

91.09 24001  1832        133  3015  −0.55.0

91.11 24416  1837 ‐0.505.00 129  3056  −0.54.5

91.12 22983  1714 ‐0.504.50 125  3169  −1.03.5%=実質0金利

92.04 18581  1359 ‐0.753.75 134  3249         緊急経済対策

92.07 15353  1143 ‐0.503.25 128  3330  −0.53.0%=実質0金利

93.02 17190  1300 ‐0.752.50 124  3416

93.09 20466  1649 ‐0.751.75 105  3575

94.04 20133  1636        104  3720  +0.53.5

94.08 20824  1663        100  3776  +0.54.0

94.11 19391  1528        098  3826  +0.754.75

95.02 18739  1464        099  3847  +0.55.25

95.04 16047  1288 ‐0.751.00 083  4208         円高対策

95.08 17983  1422        087  4604    コスモ・木津破綻,兵銀清算   

95.09 18486  1455 ‐0.50.5  099  4747    大和銀行NY事件

96.01 20812  1613        106  5395  −0.255.0

96.12 20276  1517        112  6381    グリーンスパン,根拠なき熱狂

97.04 18612  1411        125  6738    日産生命業務停止清算

97.05 20312  1503        116  7330    野村坂巻社長逮捕  

97.11 16500  1282        121  7689    拓銀・山一証券破綻

98.03 17131  1287        127  8569    大蔵キャリヤ逮捕

98.04 16241  1231        138  8868   改正日銀法施行,為替完全

自由化、銀行破綻に早期是正措置導入

98.08 13915  1086        143  8051  長銀43,銀行株下落,ルーブル 

                          下落・取引停止・世界株安誘発

98.09 14755  1116 誘導目標0.25 133  7865   金融再生法案合意成立、米国LTCMを追加融資で救済

98.10 12879  0982        117  8299  −0.254.75% 補正予算60兆円,銀行,公的資金申請始まる

98.11 14428  1105        122  9011  −0.254.5% 緊急対策23.9兆円                     

98.12 13842  1086        115  09181  企画庁,変化の胎動,銀行投信窓販ファンド情報開示,公認会計士監査義務付加,日債銀一時国有化

99.02 13973  1089 誘導目標0.15  114  09274  日銀、ゼロ金利政策導入

99.03 14221  1107         119  09324  拓銀元頭取逮捕,日産ルノー提携、都銀15行・公的資金申請

99.06 16300  1316        121  10799 東邦生命業務停止,山一破産申請

99.07 17534  1436        116  10910  日債銀前会長・社長逮捕

99.08 18233  1518        110  11299  +0.254.75% 興銀・富士

DKB統合合意

99.09 17342  1501        106  10803 あおば生命仏アルテミスに売却

99.11 18258  1592        104  10769 +0.255.0%経済対策18兆円

                        仏アクサ・日本団体生命を子会社化

99.12 18934  1722        102  11497  ペイオフ1年延期に自自公同意,

                    東邦生命・GEエジソン生命に包括移転合意

00.02 19578  1711        108  11003  +0.255.25%

00.03 19602  1672        106  10907  +0.255.50

00.04 19008  1552        103  10305  NY株大幅下落、世界に波及

                         しかし翌日少し戻す。小幅調整

目次

1 根拠なき熱狂

2 百年に1−2度の事態―アジア・ロシア・LTCM危機

3 平和の配当とIT革命

4 過剰流動性バブルの発生

5 先行した日本、追いついた米国

6 米国景気への懸念

7 危機の金融政策―量的緩和と「インフレ目標」

8 構造改革か財政支出か

9 金融再生に「変化の胎動」

10       日米社会の文化差

11       小泉内閣成立前夜

12       遺産を使い果たした日本の金融機関

13       日銀ゼロ金利を解除

 

1 根拠なき熱狂

96.125 米国FRB議長グリーンスパンは、株価の急上昇を“根拠なき熱狂ではないか”と発言、疑問符をつけた。しかし断定はせず、動向を見守る姿勢。株価は−556381ドルとなったが翌日+82ドルと戻す。そのときS&P500によるPER20倍、利回りは2.0%、30年国債は6.36.5%、TB3月は5.04.9%という指数で、それまで78倍が普通、高くて156倍であったPERが,株価上昇につれて20倍に達していることが注目された。

82年からようやく、20年に及ぼうという長いボックス相場を脱し、上昇し始めた株価は、872000ドル台、91年3000ドル台、95年には4000ドル台、965000ドル台とかつての日本を思わせる右肩上がりの急上昇で10月には6000ドル台に乗り、なお勢いはとまらなかった。グリーンスパン発言は、そのような時になされた。しかし景気は好調を持続し、失業率は下がり、インフレは起こらず、財政赤字は劇的に減少した。この間、経常収支の赤字継続が唯一の懸念であったが、外国資金流入で問題なくファイナンスされて、株価は上昇を止めなかった。

 

2 百年に12度の事態―アジア・ロシア・LTCM危機 

その後グリーンスパンは「現在の現象は、百年に一度か二度の事態かもしれない」97.7と現状肯定に姿勢を転換したが、国際短期資金の急速な引き上げから発生したアジア金融危機、そのロシアへの波及、それが招いた米国ヘッジファンドLTCMの金融危機などに賢明に対処しつつ、IT革命がもたらした生産性効果、需給関係の変化、労働市場の状況などを包含するわかりやすい状況判断と、市場を過度に刺激しない緩やかな金利操作で、経済を過熱や混乱に陥れることなく、米国史上最長最大の経済成長を実現し、いまやそのソフトランディングを目指している。株価は既に11000ドル台に達し、グリーンスパンが懸念を最初に言葉にしたときからすると70%上昇、問題のPER324倍と未踏の高水準となり、つれて利回りは1.2%と低下、30年債の利回りは6.23%と変わらない。日本のバブル期のPER60倍水準、そして今=9912月は80倍レベル。日本の企業利益はこれから増えてPERは下がる、米国は今が絶頂期という見方の差はあるが、日本企業の利益が増えてもPER30−40倍程度とすると、昔日と打って変わった米国の高成長を背景とする今の30倍水準は、バブルと断定はできないであろう。(00418日東京PER予想225305,一部=128。米S&P=30。日米格差はさらに拡大した。)

 

3 平和の配当とIT革命

かつて日本が、米国の傘の下で享受した高度成長を、今や米国が享受している。冷戦負担は解消した。戦後間もなくから試行錯誤を重ね育成した自由な金融市場が、冷戦終了の配当でもあるIT革命がもたらした巨大な生産性効果と一つになって、自由に瞬時に大量に市場を移動できる金融資本に有利なシステムの中で、財政は今や黒字、貿易赤字・経常赤字は未だ大きいが、基軸通貨国の特権を最大限に行使しつつ、戦後初めて、そして今世紀最長の高度成長を享受しつつある。めでたいことである。戦後半世紀を経過して、自由世界の復興と東西対立で、蓄積した正貨=金に連結したドルを使い尽くし、金との連結を断ってからも財政赤字と貿易赤字でドルを垂れ流し、債権国から債務国に資金事情を悪化させ、その間他国の成長に手を貸しつづけた米国であった。

 

4 過剰流動性バブル発生

日本は米国の傘の下で、官僚主導の開発主義といわれる体制のもと、史上稀に見る高度経済成長を続けた。55年から98年までにGDP50倍、米国は19倍、為替の変化=3.6倍を加味すると、日本のドル換算GDP増加は180倍という驚くべき数字になる。だからこそ敗戦国日本が、一人当たりの所得で戦勝国米国を抜いたという、米国にとって不愉快な数字さえでてくる。しかし85年のプラザ合意、872月のルーブル合意、10月のブラックマンデーなどの通貨危機において、米国への協力を惜しまなかった。そしてドル暴落阻止の為国内金利引上げ(=金利差縮小=ドル売り要因)を遅らせた結果発生した過剰流動性が資産バブルを引き起こし10年経過した。米国からいろいろアドバイスがあるが賛否両論、市場のルールがちがう、参加者の行動パターンも異なる。公共投資と減税による刺激はついに受け入れたが、果たして効いたのかどうか。日銀は未曾有のゼロ金利政策で金融危機は何とか切りぬけたが、金融政策には未だに注文が絶えない。米国と日本の成長を、株価と金利の面から考察してみた。

 

5 先行した日本、追いついた米国

前項で55年から98年までのGDPの伸び方を見たが、株価で見ると興味深い姿が見えてくる。日経22555345425円、99.320337円で48倍。ダウ工業3055500ドルで今10921ドル、22倍。これを中間点として75年を取ると、日本はそれまでに10,その後が4.8倍。米国は75年まで1.3倍と低迷続きなのに、以後は15倍と前後の伸び率が逆になっている。75年とは73年のニクソンによる変動為替制移行とオイルショックの調整中。米国はこれを境にして通貨先物を導入、グローバル金融市場に向かって体制整備を急ぎ、その結果が日本を3倍上回る株価成長につながった。残念ながら日本は、戦後経済体制に過剰な自信を持ちすぎ、米国からの自由化要求、とくに金融面のそれに抵抗し続け、市場とその周辺の制度改革を怠った。その咎めがバブルであり、だから改革は構造改革であらねばならない。

 

6 米国景気への懸念

米国と米国民は、戦後冷戦の負担に耐え、グローバル市場を建設し、冷戦体制崩壊の今ようやく平和の配当を享受している。しかし享受しているのはいったい誰か、国か企業か、はたまた個人か。成長にもかかわらず分配が不公平で、中間層以下の個人実質所得の低下が一時心配されたが、その懸念は機会の平等によって納得さるべきものとの主張。経常赤字、貯蓄のマイナス、それから株価の過大評価など懸念材料はあるが、グリーンスパンFRB議長とサマーズ財務長官のコンビで何とか軟着陸してもらいたいものである。

 

7 危機の金融政策―量的緩和と「インフレ目標」

米国のアドバイスないし批判は、日銀の政策に絡んでいくつかあった。その中でクルーグマンが主張した「インフレ目標」あるいは「調整インフレ」論、それと関連しての「量的緩和」論と「実質ゼロ金利」論を要約検討する。

 「インフレ目標」論とは、日本経済はデフレスパイラルの瀬戸際、「流動性のわな」に陥っているから、日銀は思いきって3‐4%のインフレを目標に金融の量的緩和を行うべしという意見で、大先生の意見だけに注目された。これに対し日銀は、経済の現状はそもそもデフレではない、インフレは一旦起きると制御できなくなる危険がある。そもそもインフレ目標を設定している国は、すでにあるインフレを下げるためであり日本のようなケースはない。という理屈で退けた。宮沢氏も同意見であった。小生も、クルーグマンの見方はあまりにも悲観的過ぎると思う。

 量的緩和論は、インフレ目標とは言わぬが、もっと市場へ資金供給を増やせ。為替介入でドルを買って民間に流れた円資金は回収しないで「不胎化」しろ。とにかく資金を景気回復に向けるべしという。日銀は、今やゼロ金利政策で資金は民間にあふれ、通常の資金調節である供給オペの入札において、応募が予定額に達しないケースが増えている。これはゼロ金利で資金が市場にあふれているからだ。必要なのは企業における不良資産の償却・リストラなどの構造改革であるという。日銀の意見が正しいであろう。

 実質ゼロ金利論とは、現在実施中の公定歩合0.5%に対し、消費者物価指数は98年+0.2%で、実質金利は0.3%、これでは消費刺激はできない。米国で91年から94年までのゼロ金利政策は、金利3.5に対しCPI+4.2%で実質金利はマイナス0.7%。だから消費が刺激され景気回復に役立った。日銀は思いきってマイナス金利を導入すべしと言う意見も出た。日銀は否定的であった。資金はあまっている、銀行間のコール資金の誘導金利も0.15%まで下げ、手数料を除けば実質ゼロである。それに金利が下がったとき国民の消費がどうなるかを実証研究し、米国・英国ではカード・ローンの普及もあり、金利低下と消費拡大に正の関係があるが、日本ではそもそも借金して消費する習慣がないので、金利低下は消費拡大に有意の関係がないという結論を出した。米国・英国は所得格差の大きい社会であるが、格差の少ない日本で、衣食住の消費水準をこれ以上高くして、ごみをどうするのであろうかと心配になる。それを高めるには景気回復による所得そのものの上昇、資源再循環などの新しい施策が必要であろう。必要なのは構造改革で、金利政策ではない。

 

8 構造改革か財政支出か

日本の90年代の低迷を、「第二の敗戦」といって責任を糾弾する説がある。小生はこの説には組しない。日本経済の現状は史上最高水準での足踏みであり、「敗戦」というべきではなかろう。改革のための足踏みが長いのは、問題が構造=社会構造・精神構造に関わり、簡単に短期で処理できないのである。関係者が問題意識を共有し、利害関係を調整し、解決案を具体化するまでに時間がかかる。事柄は戦後経済を主導してきた社会システムの改革に関わる。したがって改革すべき構造とは、官僚主導の経済運営であり、貿易黒字が定着したにもかかわらず規制を残す業種の護送船団構造・官民癒着構造であった。金融・流通・建設など問題の所在は明らかであり、前川委員会の改革指針は早く存在していた。しかし経済構造の改革にはその基礎を成すソフト構造の改革が必要である。日銀の大蔵省からの独立すら98年ようやく達成され、円の国際化の前提となる国債市場の整備すらまだこれからである。その他わかっていて遅れた問題に、企業会計における時価会計、不動産市場の整備、証券会社における顧客資産の分別管理、金融取引における説明責任などがあり、権利・人権擁護の為の司法制度改革も長くたなざらしの問題であった。ジャーナリズムで金融業界や公務員の仕事に対する姿勢が厳しく問われる事になったのは、問題が意識改革であったからである。時間がかかったのは問題先送り体質もあるが、共通認識醸成=機が熟す必要があった。米国でも金融自由化はそれほど短期間にできたのではない。戦後間もなくの国債金利の市場化にはじまり、ニクソンショックや金利自由化に向かっての民間サイドの努力の積み重ね、当局者の法制化など長い時間と努力の積み重ねがあった。日本はたまたま米国からの要求で自由化推進中にバブルとなったが、そのバブルも米国への義理立てで起きた側面があるし、10年はこの大改革の雰囲気醸成に長くはなかったであろう。

 

9 金融再生に「変化の胎動」

この間、内閣は8711月までの中曽根から始まって、竹下、宇野、海部、宮沢で自民党単独内閣が終わり、細川・非自民6党連立、羽田、村山・社会、橋本・自社さ、小渕・自民、森・自公保とめまぐるしく替わり、政治家の意識も官僚との関係も、国民の政治意識も変わり、この間景気対策の財政支出は100兆円に達し、財政赤字が大きな問題に浮上した。橋本時代、何もしない金融界に大蔵省が痺れを切らして、984月にビッグバンを設定してリストラを促したのは良かったが、財政赤字削減を増税でまかなおうと二兎を追ったのが、折角立ちあがりかけた景気の芽を摘んだといわれる。これはしかし検証されていない。小渕内閣で金融再生法案をようやく成立させ、公的資金の注入が行われ金融不安が沈静化した。日銀は95.9公定歩合を0.5%に引き下げたが、97年三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券の相次ぐ破綻、98年日債銀・長銀問題の表面化で、9月短期金利誘導目標を0.25%に下げ、さらに99.2実質ゼロというべき0.15%まで引き下げた。小渕内閣で企画庁長官になった堺屋氏が、景気に「変化の胎動」を認めたのは99.2である。9945月が景気の底ではないかという説があるが、このまま順調に成長してもらいたいものである。

 

10 日米社会の文化差

「ことば」が民族や歴史によって異なるように、社会システムや経済構造も一見同じに見えてもその働きは同じではない。アジア金融危機でのMFのプログラムが批判されたのはまさにそれであった。日米でも似たような話がありうる。平和の配当で軍事費が削減できた米国に対し、膨らまさざるを得なかった日本。ボトムアップとグループ活動で米国より情報の流通の良さを誇っていた日本が、パソコンとネットによるIT革命であっという間に米国に生産性で差をつけられた。その背景には良いものを良いとし、人を信頼する米国文化と、安心して任せるまで時間のかかる日本文化の差がある。米国では簡単に人員整理などのリストラを行って回復も早かったが、日本では米国側の先例があるにもかかわらず、改革はドラスチックでなくしたがって回復にも時間がかかった。しかしそれだけ衝撃は弱められ、社会的安定は維持されたであろう。

 

11 小泉内閣成立前夜

これで政府が言うように、景気は回復していくであろうか。小生はもう十分に機が熟したと思う。そして日本は幸いにも先進国水準の経済生活に到達できたが、国内だけでも年金問題、福祉問題、資源リサイクルなど難問が目前にある。資源問題などようやく真剣に取り組む姿勢が官民に見られるようになった。政治で地方分権にからんで官僚支配の中央集権システム改革なども「戦後システム改革」の重要なテーマである。おおいに「ことあげ」を行って、この十年の醸成を無駄にしないようにしたい。4月突然、小渕首相から森首相に代わり、衆議院選挙が近づいているようである。きちんとした議論のできる立派な人を選びたいものである。そしてアジア諸国との関係を強化しつつ、世界に向かって発言してもらいたい。                 2000.4.15補筆

 

12 遺産を使い果たした日本の金融機関

414日NY株式が大きく下落した。グリーンスパンの警告がようやく効いてきた。

翌土曜日のG7は、米国経済の健全さを強調するのみで株価には触れなかった。17日東京株式も大幅下落し、韓国・シンガポール・香港などアジアは勿論、ヨーロッパへも波及した。  87年のブラックマンデーとの違いは、下落率22%6%のほか、インフレは克服されている、財政は黒字化した、景気は堅調の3点。ただ貿易赤字は依然巨額で、それがインフレ懸念・金利引上げ・景気転換に神経質にし、3月CPIが、予想の+0.4%0.7%とわずか0.3%上回ったのが暴落の引金になった。

日本市場下落の夜、NY市場は+276ドルと45%戻して、関係者をほっとさせた。ブラックマンデーの時、日本市場では個人投資家が右肩上がり神話と共に健在で、早速買いに入って外国人投資家の売りを吸収し、米国市場の絶好のクッションとなった。今回日本市場にその力はない。早くあの姿に戻ってくれというのが米国の本音であろう。

バブル崩壊と翌90年の失敗で個人投資家もすっかり用心深くなり、91年から99年まで売越しばかり、その間東京市場の主役は、98年を除いて一貫して買越しを続けた外国人であった。日本の機関投資家は、投信が暴落の傷と解約で辛うじて99年買越し。PKOで買わされた生保は高い約束金利と低い実現利回りの差に泣き、銀行と共に、先輩が戦後営々と蓄積した含み資産を使い果してしまった。00年となって景気回復・株価上昇・未曾有の低金利で、さすがの個人資産も株式市場に向かってきつつあるように見える。しかし市場の動きを見ると細かい利食いを繰り返しつつの慎重な姿勢が目立つ。外国人が主導したにしてはあまりにも高いPERであるが、投機=リスク挑戦とはそう言うものであろう。早く企業側が収益力を回復して、株価を妥当な水準に落ち着かせてもらいたいものである。

2000.4.19

13 日銀ゼロ金利解除

811日,日銀はゼロ金利を解除して市場金利に戻し,当分0.25%水準で誘導する事を決定した。自民党も政府も経団連・商工会議所も時期尚早と解除に反対の大合唱,政府は延期提案までしたのを押し切った。賛成派は市場に理解のある専門家筋が主体で、専門家でも臆病者は尚早論であった。大統領選を秋に控え日本経済の動揺を好まず、財政赤字などかまわず公共投資で刺激を求める米国は、早くから解除反対であった。さすがにこれに追随には警戒の声があった。同友会が体制に同じないで、日銀支持だったのは見識であった。

解除後の市場は混乱なく運営されている。ただ4月からの外国人の売り越し続きで,株価が冴えないが,日経の87日の発表によれば、PERを連結ベースで計算すると東証一部全銘柄の前期基準は,162倍からから94倍へ、予想PERは52倍から40倍に改善するという。米国S&P500が28倍であるから、これ以上の下値は限られるであろう。日銀短観も企画庁の景気動向調査もこのところ改善が著しい。

かつて政府・民間は円高に反応して金利引下げを求め、それがことごとく過剰反応でインフレ要因となった歴史がある。日銀が政府から独立して初めてのしかも政府意向に逆らっての決定である。成功して欲しいものである。          00.8.20