ねぎの植え付け


ねぎを植え替えました。

普通ねぎは、種を撒いて苗を作ってその苗を植え替えて育てるのですが、私が作っているのは「子持ちねぎ」といって、種(葱坊主)をつけずに株別れで増えていくものです。

「坊主知らず」とか「わけぎ」という類のものと思いますが、とにかく細胞分裂のように1本のねぎが2本になり、2本のねぎが4本になるというように増えていくものです。

この地方では一般的に今頃、増えたねぎの株を掘って、それを2本くらいに分けて植え替えをして増やして使います。

今植え替えたものは数ヶ月して株が増えてから収穫して使うのですが、その苗に使うのは昨年植えたものの一部で、次のねぎができるまでは去年のものをとって使います。
つまり、うまく畑を回していけば、このねぎを一年中食べ続けることができるという非常に便利なねぎです。

例えばこの地域で作られている有名な「下仁田ネギ」などは、種を撒いて苗を育てて、食べる時期というのはほんの数ヶ月と限られています。

確かに、下仁田ネギは独特のうまさがあり、また商品価値もあるので出荷する農家も多いのですが、種を蒔いてから収穫するまで一年以上かかり、病気になりやすく手間がかかります。

鍋物などには確かにや甘くてわらかくてうまいのですが、作農料理人として下仁田ネギを作るということにはどうしても抵抗があり、また面倒くさいということもあり、一度も作ってきませんでした。

ここで生意気にも、料理人から見たねぎのうんちくを述べさせてもらいます。

石川の研修時代に出会った人で、海のもの山のものを自分でとりにいっては贅沢な食生活をしている人がいました。

夏には海に潜って岩牡蠣をとってきたり、秋には山で自然薯を掘ってきたり、私もこの人から熊の肉の刺身やら色々自然でおいしいものを分けてもらい、非常に勉強になりました。

これだけの人が、ねぎだけは「おめーとこのねぎはやわらこうてうめー」と言って、私がいた自然農場のねぎを欲しがったのでした。

私が群馬に帰ってきてから6年になりますが、その間土作りをしっかりした畑で、毎年この「子持ちねぎ」を作り続け、それを自分で食べてまた自給屋でも使うようになって、この人の言っていたねぎのうまさというのがようやくわかってきました。

それはねぎの柔らかさと甘さです。
そして、一般に売られているねぎにはそれが欠けているのでした。

だいたい料理人にとって、ねぎというものはほとんどが香り付けなどの脇役です。
しかし、例えばこの地域で評判の中華料理屋に行っても、チャーハンやラーメンに入っているねぎが硬くて味がなくて料理がしらけてしまう経験をしました。
和食でもほとんどそうでした。

ねぎに限ったことでなく、一般の料理人は「野菜」というものの価値を意識していないと思います、というか野菜をなめていると私には映ります。

おそらく出入りの八百屋が持ってくるものを何の疑いもなく使っているということでしょうし、添え物のねぎに味の違いがあるということ自体わかっていないのでしょう。

私は、自分で毎年株分けで作り続けているねぎが、とても頼もしいものに思えます。
確かに下仁田ネギのような独特の食感はありませんが、薬も使わず病気にもならず、年に一回植え替えするだけで(夏の草取りは大変ですが、それは下仁田ネギも一緒)やわらかく香りのある味を届けてくれるこのねぎは、鍋物にも十分ですし、一年中おいしく使えて申し分ありません。

以下、今日のねぎの植え替えの写真を掲載します。


 去年植えて株が増えたねぎを掘り起こしたところ



  そのねぎを2本ずつにばらして植え替える


植え替え終わったところ これが増えて来年また苗になる

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