「志村ふくみ」さんをご存知ですか?

志村ふくみさんをご存知ですか
(2003/04/05)

いらっしゃいませ。久しぶりに自家製のコーヒーでもどうぞ。

ちょっと遅れ気味の
お便りですが・・・

今年も杏の花が咲きました。
 
 最近、夢中になってこの方の関連書籍を集めております。
 志村さんは、紹介されます時は「染織家」となりますが、要するに 草木を中心に天然の材料から糸を染め上げまして、織物を作り、着 物や近年ではタペストリーのなどの作品にされている方で、国の重 要無形文化財(つまり人間国宝のことですね)になられておみえで す。

 人間国宝であるからすごいとか、そういうことではなくて、何もか もすごいのであります。乱暴にまとめて物申せば、「好きな事に打 ち込む」姿勢なのですが、それは狭義の世界(染め・織)を意味する のではなく「自然が織り成す色」の世界すべてにその姿勢がありま して、「染めと・織」で、その「のめり込み」を具現化していらっしゃる  ― てな感じなんでしょうか。

 志村さんの作品は「色」がすべてであります。柄は「色」を表現す る為にあるようですし、「色」は心を表現する為にあるのです。
 まだまとめきれずに、加えて何がすごいのかと申しますと、代々 そういうことを生業にされている家に育って云々のパターンではなく て、本格的に取り組み始めたのが29歳くらいからであることも「すご い」と思いました。

 ですから、話が元に戻ってしまいますが、きっと、自然の風景や、 長い年月を過ぎた建物、仏像などなどですね、何色といったらよい のか判らないけれども気持ちが抱かれていくような「色」には人一 倍惹かれるものが元々おありになって、表現の手立てとして「染 め・織」を得た ― と、これはJinべぇが勝手に思っております。

 では、何がきっかけで志村さんの作品の写真集や文章を見たり 読んだりして「うぅ〜ん」と、唸っておるかと申しますと(Jinべぇの場 合は、一気に濁世に戻ってしまいますが・・)ホームページの背景 がきっかけであります。

 何の事かと申しますと、各カテゴリーごとに決めた背景の色があ ります。そこに文章や写真、或いはイラスト、はたまたリンクボタン などが載りまして皆さんのところへ届きます。

 スタート間近の頃はともかく、アクセスの件数も増えて参りました し、背景の色を何とかしようと思うに至ったわけです。
 色はパソコンの場合、カラーパレットもございます。ホームページ の作成ソフトはいろんな模様の入った背景のサンプルを持っており ます。とっかえひっかえやっておりましたですが、どうも面白くない のですヮ―これが。気持ちが乗ってこないのですね。

 「なんでだろー」と、流行り歌よろしく、大変困っておりました。

 そのときにふっと思いましたのが、自分がデジカメで撮りました風 景写真の中で、空とか池とか生い茂った葉っぱとかそういう部分を 小さく切り取って連続の背景にしてみたらどうかしらん―ということ です。

 やってみますと、これが中々よろしいのです。葉っぱの緑はカラー パレットにある「グリーン」ではないのですね。光を受けているとこ ろ、陰になっているところ、葉脈のところ―全部違います。全部違う 色が集まって葉っぱの色を作っております。

 池の水面もそうです。「水色」ではありません。空や周りの景色の 色を受けて、それと風から漣の陰影をもらってそれで池の色になっ ている。

 面白いですねこれ。今ごろ気が付いてアホみたいな話ですが、本 当に面白い。それからはもうサンプル集を作る為にあちこちの写真 から石畳、板塀、緑青のかかった神社の屋根、何でもかんでも小さ くカットして集めました。

 これを連続で貼り付けていくと、元々何であったか、判らないよう な背景が出来上がるのです。失敗もありましたけれど、奥深い色を 自然からもらう事が出来たのです。


 で、ですねこの時点では、「志村ふくみ」さんの「し」の字も知らな
い状態なのです。

 この方法でホームページの背景を構成しようと決めましてから、
丁度、居間に出てきてテレビのスウィッチを入れた途端、作品と製
作過程を取り扱った志村さんの番組が始まったのです。
 まず、「緑」のふかさ。それから「赤」。終盤の「藍」へ。(すみませ
ん「色」の語彙不足でJinべぇが文字で書くとこうなります)

 明確な花とか鳥とかの図柄を織り込んでいくとどうしても人間の
「意図」や「努力」や「技」が表にでてきてしまう。志村さんの場合
は、なんだか自然へのガイド役のような位置にいらしゃって自然か
ら与えられるものの奥深さを作品を見る者は一緒に体感することに
なる。
 テレビを見終わって絶句。こちらもホームページの背景ですったも
んだ騒動直後での、レベルのかなり違う共感。それやこれやで今
日に至っております。

 書籍の紹介を兼ねて表紙の写真は紹介致しますが、織の作品に
ついては著作権はともかく、恐れ多くて紹介できません。ご自分
で、お探しくださいませ。
                                     (了)
 
『色を奏でる』(ちくま文庫)
『心葉』-平安の美を語る-
       (人文書院)