美濃焼のふるさと

美濃ふるさと
岐阜県 土岐市
(2003/05/10)

いらしゃませ。
さわやかな季節になってまいりました。
たまには、バナナジュースでも如何ですか?
*上に、ココアパウダーをかけてみました。

 世は『大型連休』と銘打って、海外は今年の場合何か とありますので、国内のあちらこちら賑わっております が、Jinべぇは暦どおりの若干小型連休であります。

 どこにも行かぬ−というのもナニですので、妻と岐阜 県の土岐市を散策してまいりました。

 この界隈は多治見・瑞浪と並びまして、全国に知られ る焼き物の街であります。総称して『美濃焼』となってお りますが、織部・志野・黄瀬戸なんてぇ名前はどこかで お聞きになった事もあるかもしれませんね。

 今回、焼物の街を訪ねてみて、ちょいと感ずるところが ございましたので、そこいらあたりを少々。

 最初に尋ねましたのは「美濃焼伝統産業会館」と長い 名前ですが、これはJR土岐の駅からも、かなり離れて おりまして、道をもうちょっと進みますと可児(かに)市に 入ってしまうといった際どい所にございます。

 さすがに、坊ちゃん・嬢ちゃんを連れてきても不評を買 うだけのところと見えて、訪れる人もその道の愛好家(風 の年寄り(失礼))であるとか、どこにでも顔を出す、若い 女性の二人連れ(これまた失礼)程度のもので、閑散と しております。静かで焼物を見るには丁度よい感じでご ざいますね。

 それで、見学し始めて、妻も同じ事を申すのでござい ますが、
織部は、例の独特の緑はともかく「絵がなぁ」といった感 じ。
志野は「こんな表面デコデコで、抹茶は飲みたくない」と いった感じ。
黄瀬戸は「色と一緒に、絵までこんなに地味でエエン か」といった感じ。

 焼物の難しさを無視して、高みの見物と致しますとこ んな感想が出て参りました。

 もっとも抹茶碗に関しては展示点数も少なく、ま、美濃焼の本来の、主用途でございます、生活食器の作品には、 若い作家(なんだろうか?年齢書いてないし)デザイン・絵付けともに面白そうなものがちらほらございましたですが。

 即売もやっておりまして、何万円、十何万円などと表示してございますが買う気にもならなかった(買えないというこ ともありますが(汗))というのが本心です。

 ま、久々のよいお天気と閑静な山間の周辺の景色がせめてもの慰めでした。
が、これからが、衝撃的なことになるのでございます。
 
 次に訪れましたのは、これはJR土岐の駅から、歩い てでもいけるところにあります、「美濃陶磁歴史館」と申 しまして、文化会館の横っちょのところに(さほど大きく はないですが)ある建物です。

 丁度「美濃焼伝統産業会館」(長いなぁ)にポスターが ございまして、ただいま、『織部の流通圏を探る(東日 本)』という特別展をやっております由。

 これは要するに、産地のここから、あちらこちらに品物 が渡って、例えば各地のお城の発掘調査のときに出土 した物を特別展として展示しているということですね。

 お昼の時間をとうに過ぎて、妻も私もヘロヘロしてお りましたですが、頑張って行って参りました。

 Jinべぇに言わせれば、ささやかな展示でしたが、衝 撃の展示でありました。
 発掘品ですので、欠けたり、割れたりしたものを繋ぎ 合わせたり、そんなものばっかりなのですが、色も
『これが織部や!』
『志野の肌合いの真髄はこれでんがな!』
『これがほんまもんの黄瀬戸の色だっせ!』
と作品がそう申しておりますし(嘘つけ!)、絵も今のもの より数段新しく、斬新なもので驚きました。モダン(古い 表現だなぁ)なのであります。作者の『遊び』と『意欲』が 伝わってくるのであります。

 城址からの出土品のため、向付や抹茶茶碗などが多 いのですが、本当に素晴らしかった。
 Jinべぇは、空腹も忘れて、目頭が熱くなたのでござい ます。来てよかった。女房殿も「あっちのより、うんといい ねぇ」ですと。


 判ずるにだ。

 城からの出土品でありますからして、総じて良い物が 集まっております事を差し引いても、これだけ歴然と
「おぉ!!」
と思うのは、生活必需品としての陶磁器たちが、工場生 産でなく職人たちの手作りの中で君臨していた時代 の、底辺の広さにあるように思われてなりません。

 伝統を守る、或いは芸術まで高まった(と思われてい る)ものたちが売れていく時代、のような妙ちくりんなファ クターがない時代の、職人たちの作品はおおらかで、意 欲に溢れている―ということなのだろうと思います。

 むやみに求める『渋さ』であるとか、偶然の産物的に 焼きあがった際の地肌の面白さとか、そういうけったい な部分ではなく、『色のよさ』『形のよさ』『図柄の斬新 さ』は、よくよく考えて見ますと、これ、生活用品の必須 条件ですものね。
 長く、毎日使うものであって、年に1回箱から取り出し て眺めるものでもないし、『今いくらくらいか?』と値踏み するものでもありません。道具の美学と考えれば、当た り前といえば、当たり前の条件です。

 Jinべぇは、これからも新しい作家の、安いもんを探し 続けるぞ!

かくして、Jinべぇ夫妻は、美濃路を後にしたのでありました。
(了)