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減る利用客 タクシー運転手、低収入に悲鳴 宮城

タクシープールにはいつも車両が満杯。運転手は乗り場まで長い時間待つ=JR仙台駅のタクシー乗り場
 長引く不況がタクシー業界を直撃し、タクシー運転手が低収入に悲鳴を上げている。規制緩和でタクシー台数は増えたが、利用客は逆に低迷。手にする年収は宮城県で平均280万円(2001年)と、20年前の水準まで落ち込んでいる。生活保護を受ける運転手も後を絶たず、転職する人も多いという。(報道部・藤本貴裕)

 「ひどいときは手取りが月5万―6万円だった」。名取市のタクシー運転手(47)は以前、半年間ほど生活保護を受けた。家族3人。バブル期には月25万円前後の収入があったが、その後客足が極端に落ちた。妻もパートで働いたが、生活費を賄えず借金もした。

 現在は労働組合専従となり、生活は安定しているが、「自己破産する同僚もいる」と顔を曇らせる。
 運転手の収入減が顕著になったのは1998年ごろ。不況が一段と厳しさを増したことに加え、タクシー会社が人件費の抑制を目的に新しい賃金体系を採用し始めたためという。

 固定給プラス歩合給だった賃金体系に代わって、歩合給一本の賃金制度が主流に。固定給は運転手が年を取ればその分給与が上がる。しかし、売り上げを会社と運転手が一定割合で分け合う歩合給一本の制度では、年齢上昇による賃金アップはなくなる。歩合給はタクシーの利用が多ければ収入も増えるが、客が少ない今はそうはいかない。

 東北運輸局によると、東北のタクシーは今年3月末で約1万7600台。昨年2月の規制緩和から約400台増えた。これに対し、利用客は01年で1億3547万人と、78年の半分以下に減っている。
 運転手の平均年収も、宮城県はピークの92年より95万円少ない280万円。81年当時とほぼ同じだ。一番高い山形でも310万円だ。

 タクシー業界の労働組合、自交総連東北ブロック協議会は「少しでも収入を増やそうと、午前8時から翌朝8時まで24時間働く運転手もいる」と話す。
 低賃金と長時間労働で運転手の定着率は低い。仙台市内のある会社ではこの5年で、全社員の3分の2が入れ替わったという。
 宮城県では28日から、名取市のミナトタクシーが規制緩和後としては東北で初めて、仙台と名取両市で初乗り料金を340円(小型)に値下げし、運行を始める。

 乗客にとっては歓迎すべき値下げだが、少ない客を取り合うタクシー運転手にとっては「大変な事態」だ。仙台市内の運転手は「価格競争となれば、乗客の争奪戦はさらに厳しくなるだろう」「値下げは運転手の長時間労働を招く。引いては安全運転に影響が出る可能性もある」と話している。

2003年08月19日火曜日


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