第10章 因幡の白うさぎ
大国主の命は少年時代 大穴牟遅 おおあなむじ という名で、意地の悪い兄弟神がたくさんいました。
やさしい・素直な性格の大穴牟遅は、嫌味いやみ な兄神のイジメ・無理難題にも、逆らわず従っていました。
この少年時代の忍耐する経験が、大穴牟遅を大きく成長させました。
彼はやがて あらゆる苦難を克服し国津神くにつかみ の王・大国主の神となる基礎が 少年時代の忍耐でした。
兄神たちは全員 因幡いなば の八上(鳥取)に住む たいそう美しい八上比売やかみひめ に恋心を抱いていました。
そこで 八上比売へ求婚するため 兄神たち一行は 八上の地へ旅立つことになりました。
大穴牟遅は 兄神達全員の大きな荷物袋を 背に担がされて 兄神のお伴を命じられました。
途中 気多の岬けたのみさき まで来ると 毛をむしられた赤裸のうさぎが 大粒の涙を流し泣いていました。
兄神たちは、兎にウソをいってからかいました。
「アラアラ! ウサギさんよどうしたのだ 赤裸になってしまって 兎は毛がなくては 困るだろう。
海水を全身に浴びて 高い山に登り 日の当たる風通しの 良い峰に伏してジッとしておれば すぐに治るぞ」
赤裸のウサギは その話を信じ 云われた通りにしました。しかし、海水が 乾きはじめると
身体中の皮膚が ただれてヒビワレてきました。 痛くて・痛くて涙も枯れ果ててしまいました。
痛くて動くこともできず 伏しうめくのみでした。 そこへ少し遅れて 大穴牟遅の命がやってきました。
心やさしい大穴牟遅の命が、ウサギの話を聞きます
「私は 隠岐おき の島に住んでいた兎です 本土に行きたいと思いましたが 私は泳げません。 そこで
鰐ワニ をだまして海を渡ろうと考え ワニ族とウサギ族とでは どっちの数が多いか数えてみようと ワニに提案しました。
ワニさんの一族が全員 隠岐おき の島から気多の岬けたのみさき まで 一直線に並んでもらう。
その上を 私が渡って数を数えることにしよう 良い案だろう ワニさん!
正直なワニは 一族全員が 隠岐の島から気多の岬 まで ずら〜りと 並びました。
私は その上を 数を数えながら 渡りはじめ 気多の岬に 渡り終わる前に ワーイ!やったぞ!
ハハハ ワニさんは お馬鹿さんだな〜 オイラに騙されたんだと 言ってしまったのです
そしたら 一番最後のワニが 大きな口をガバッと開けて 私の毛はスッカリ剥ぎとられてしまいました。
悲しくて 泣いていたら さっき通った神たちが、海水を浴びて 風に吹かれていると治ると 言ったので
その通りにしたら よけいに ひどくなりました エ〜ン・グスン・痛いよう」
大穴牟遅の命は その姿を見て 可哀そうになり
「騙した”兎さん”さんが悪いけど そのままでは よけいにヒドクなるから 早く処置しないとならないよ。
まづ 身体の塩水を川の水で すっかり洗い流すことだよ。
それから 川の岸辺に生えている柔らかい穂ほ を いっぱい敷いて その上でゴロゴロと転がりなさい。
きっと 元のように 毛も生えてくるだろう 試してごらんなさい」と 教えました。
兎は 大穴牟遅の言う通りにしました。すると たちまち 毛が生えてきて元の身体に戻りました。
喜んだウサギは 言いました。
八上比売は 兄神たちには 心向きません。比売はあなたを選びます。実は、私は八上比売の”神の使い”なのです
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第11章 大国主の命危うし!大穴牟遅の死 復活
ー私は大穴牟遅の神と 結婚します。あなたがたは 好きになれませんーと 八上比売は 兄弟神に向い ハッキリと言いました。
あ〜良かった!ボサツマンも安心 はたして!八上比売やかみひめ は誰と結婚するのでしょう?
(1) 八上比売にふられ腹立った兄弟の神たちは 大穴牟遅を殺す計画をたてました。
山のふもとに着いたとき 兄弟神は大穴牟遅に命令し 山へ登っていった。
「この山には真っ赤なでっかい猪いのしし がいるのだ。俺たちが山の上頂からその猪を追い下すから
お前は山の下で その猪いのしし を捕えろ・いいな。失敗したら お前の生命は 無いからな」。
兄弟神は山の上から イノシシに視たてた真っ赤に焼けた大きな岩を、大穴牟遅めがけ転がし落とした。
大穴牟遅は 真っ赤な大岩をイノシシと思い 身体全体で受け止めようとした が所詮、無理でした。
大穴牟遅は 真っ赤に焼けた巨大な岩に押しつぶされ 黒こげになり 死んでしまいました。
悲しんだ母・刺国若比売 さしくにわかひめ は
高天の原に昇り 「神産巣日神」 かむむすひのかみ に助けを懇願しました。
神産巣日の神の命を受け 刮貝比売キサカイヒメ と 蛤貝比売ウムカイヒメ がすっ飛んできました。
真っ黒に焼けこげた 石にコビリ付いている大穴牟遅の身体を全部 丁寧にはぎとり集めて
母の母乳ぼにゅう を塗ると アレヤ・アレヤ 前より一層、麗しい立派な男神となって生き還りました。
★ 蛤貝比売ウムカイヒメ はハマグリの貝で 昭和の初期まで 火傷の薬として販売されていた。
こうして 母の愛と神産巣日の神の神力で 大穴牟遅は 生き返ることが出来ました。
メデタシ・メデタシ!となるはずが、兄弟神たちはあきらめません。新たなる計画が‥‥‥‥。
(2) 次に 兄弟神たちは、大穴牟遅を無理やり拉致して、山の中に引きずり込んだ。
大きな木の割れ目に大穴牟遅を押し込み、大穴牟遅めがけ鋭いくさびを 勢いよく打ちこんだのです。
大穴牟遅おおあなむじ は またもや 殺されて しまいました。
これを知った母は 泣きながら 神産巣日の神に 再び懇願しました。
今度は 神産巣日の神自らが 鋭いくさびを抜いて 神の力をもって 大穴牟遅を蘇生させました。
母は このままでは 大穴牟遅の命が幾つ有っても足りない と思って、
大屋毘古の神 おおやびこのかみ(家屋の神)のもとへ 大穴牟遅を そっと逃がしました。
ところが 兄弟神は すぐさま居所をかぎつけ やって来て 乱暴な態度と言葉で