第24章 山幸彦 海の国で暮らす
山幸彦は 海の神・大綿津見おおわたつみ の神の娘・豊玉毘売とよたまひめ と結婚し海の国で暮らしていた。
山幸彦の心には何かを忘れているような気持ちが、ず〜とあったが 楽しい日々にドップリと浸かっていた。
そのまま あれよ・あれよ・と三年の年月が過ぎていきました。
三年過ぎた頃のある日、急に ここへ来た目的を 思い出した。
山幸彦は、海に落とした兄の釣り針を探して 持って帰らねばならない使命を、思い起こしたのでした。
「そうだ!何か忘れていると 思っていたが 私は 釣り針を探しに この海の国まで来たのだった。
はあ〜! なんで 今まで 忘れていたんだ」と、おおきな ため息をついた。
まさか!そんな大事なことを 忘れるなんて と思うでしょうが 誰にでも忘れはあるものです……ボサツマン
そこで 山幸彦は 大綿津見の神 おおわたつみのかみ に協力を要請した。
「私は 海の国の宮殿に来る前 兄から借りた釣り針を 釣りの最中 誤って海に落としてしまいました。
途方に暮れていたとき 塩椎の神が 海の神のところへ行って相談しなさい と教えてくれました。
兄はその針でなきゃダメダと云うので その兄の釣り針を見つけて返さねばなりません。
私がこの国へ来た目的は 兄の釣り針を見つけることです。大綿津見の神 釣り針を見つけてください」。
願いを聞いた大綿津見の神は さっそく 海の大きな魚や小さい魚を すべて集め聞いた。
「お前たち 誰か 婿殿の釣り針を 知っているものはおらぬか?」
すると 一匹の魚が 言いました。
「友達の鯛が のどに骨が刺さって痛くて 物が食べられないと困っていました。きっと その針なのかも知れません」。
さっそく その鯛の喉のど を見ると、確かに 山幸彦の探している針が 刺さっていました。
海の神は その針を取って洗い清め 山幸彦に奉りました。
こうして ついに 山幸彦は、兄の大事な釣り針を 見つけることが できました。
めでたし!めでたし!といいたいところですが、地上の国へ戻り、兄に釣り針を返さねばなりません。
そこで 海の神は すべての鰐ワニ を集合させて 聞きました。
「我が最愛の婿・天つ御子が 地上の国へ お帰りになられることになった。
お前達の中で 御子を無事にお送りできるものはおるか? 名乗りでよ」。
一匹の一尋鰐ひとひろわに が 名乗りでた。
「神さま 身体が一番でかいオイラなら 安全に一日でお送りできる わに 何も難しくはないです わに」
「うむ! そうか それならば お前がお送り申せ くれぐれも 御子の身の安全を 護るのだぞ」
「ハハア かしこまりました わに」 山幸彦は鰐の首につかまり 無事地上へ 戻ることができました。
別れる時 御子は 腰に付けていた太刀をワニの首に掛けて お礼の言葉を 申しました。
「大変 御苦労であったわに そちに この太刀を授ける故、大切に扱え そして 海の神によろしく伝えよ」
ワニは 最高の送り物を貰いました、ワニの仲間に 自慢できるネックレスです。
ワニは 大変喜び・嬉しくて 何回も後ろを振り返り 頭を下げて 海の彼方に帰って行きました。
山幸彦は 別れを惜しみワニの姿が見えなくなっても 海の彼方へ手を振っていた。
う〜ん泣かせる別れだぜ!それ以来 一尋鰐ひとひろわに 【鮫】は 鋭い歯をもつことになりました……ボサツマン
穂々手見の命(弟・山幸彦)は 兄の釣り針を探して海の国へ行き 海の神の娘と結婚したが
三年後に、自分の目的を思いだし、探していた針を見つけ 無事に 自分の国に 戻ってきました。
そして 火照の命(兄・海幸彦)に 針を返す約束も実行できました。 メデタシメデタシ!
ところが 海の神・大綿津見の神の娘 豊玉毘売とよたまひめ のお腹には 山幸彦の子が宿っていました。
はたして 生まれてくる子の運命やいかに! 第25章へ 豊玉毘売の御子・誕生