第45章  倭建の命 東征記

  尾張の国へ入った倭建の命やまとたける 天皇家の傘下さんか 土地の豪族の頭かしら 家に泊まった。
  
この豪族の頭領
かしら 家を拠点として 
東征の出発
準備を万端整えた。
  また この家には
 美夜受比売みやずひめ という美人の娘がおりました。
  天皇家の
次男倭建の命 我が土地に宿してくれることは この村にとっても 大変名誉なことです。
  豪族の家では 貢物を沢山用意し美夜受比売倭建の命のお側につけて 歓待の宴を盛大に行いました。
  倭建の命美夜受比売が好みのタイプらしく 注られた酒を 美味うま そうにぐいぐい飲みほしていた。
  首領の父は
 娘が倭建の命の嫁になることを 望んでいたので 満身の笑顔で酒を飲んでいた。
  娘が倭建の命の嫁になれば 豪族の家は 出世街道まっしぐら
家門繁栄
一族発展となるのです……
  もっと上を狙う気持ち もっと
デッカクなりたいと思うのは いつの世も 誰でも同じなのです。

  倭建は 豪族の部下を集め 東国の地理や情報を詳しく調べ いくさ の作戦を完成させました。
  明日は いよいよ 東国征伐へ出発しなければなりません。
  東征の出発前夜
倭建の命寝物語ねものがたり 美夜受比売の身体をやさしく抱いて
  
東国を制圧し凱旋した暁には 結婚して妃にする
ことを固く約束しました。
  朝
ケタタマシイ 雄叫びと共に 倭建やまとたける 軍団は 尾張の国を出発していきました。
  
美夜受比売倭建が無事に 尾張の国に帰って来ることを 祈っています。
  さて
東国の戦いは絶好調です。 倭建軍団反抗組織を ことごとく 言向けで平定していきます。
 
 だが 相模の国
さがみのくに 
国の造
みやっこ (豪族の頭領)
  強い倭建と真っ向勝負では とうてい敵わないと考え
騙し討つ計画を立てていました。
  その国の造みやっこ  倭建の命
 お願いしました。
  -山の奥の大きな沼に住む
山賊たちは とても
ちはやぶる神ども(乱暴な輩)で 村人たちが困っております。
   我々の力では 敵いません。どうか 征伐してください-
                    
ちはやぶる 「霊 ち」:「速 はや」の意味で 強い霊力をもつ 」の枕詞まくらことば 
  
相模の野火
  豪族の頭領に頼まれた倭建 野の中に入っていった その時 国の造は 野の周りにを放った。
  大変です!
危険です。すぐ 逃げ出してください。
  
しまった騙された 気づいた倭建は 伊勢の叔母倭比売やまとひめ 言葉
  万が一の時には この袋の口を開けてごらん 必ず ご加護があるよ 思い出した。
 叔母から貰った「袋」を開けてみると 「火打ち石と道具」が入っていた。 
  そこで倭建は まづ風の向きを確認して 腰に帯びた「
草薙の剣」で 周りの草を刈り払い
  その
を積み重ねて 火打ち石で草にをつけ 向かい火を焚きました。
  倭建が放ったは 追い風をうけて どんどん 外側に燃えていきます。
  倭建は その
を追いかけて走り進む まだ残り火がくすぶるなかを 一目散に 懸け走り抜けた。
  あっというまに 燃え盛る
火の中を抜け出し外へ出た。         
助かった!良かった!
……ボサツマン
  こうして
 倭建の命は 
天照大御神のご加護に助けられたのでした。
 
     
以前 (第13章)では 大国主神が 野原で火に巻かれたが その時は 野ねずみが出てきて
       
-「外は ブスブス 内は ほらほら」と教えてくれたので 危機一発で助かったのでした。

  火の海を脱出した倭建は 騙した国の造に猛然もうぜん と襲いかかり 切り殺してしまった。
  そして
国の造の遺骸に 火をつけて焼き捨てた。 その所以ゆえん から この地を「焼津やいづ」と呼ぶ。

  尾張の国相模の国を平定した倭建は 勢いついて さらに進み行きます。
   
第46章へ        倭建の命 東征記つづく