分別功徳品 (5)
仏(世尊)の説法に 深く感銘を受けた弥勒菩薩みろくぼさつ は 自分の座を立ちあがり 世尊の前に出でて
右の肩の衣を脱ぎ・肌を顕わし拝礼・合掌し 偈げ を述べました。
弥勒菩薩 偈を申す
「世尊は今 仏の寿命は永遠不滅である そして その仏は常にいたるところにおられて
いつも 我々衆生に 無限の生命を与えていてくださることを 説いて教えてくださいました。
しかし私は この教えは 昔からこのかた 1度も聞いたことがございませんでした。
今 仏の寿命は無限であることを 初めて知り喜びを感じております。 ありがたいことでございます。
諸仏は一切の衆生を済度さいど する力があることを 今 私たち・菩薩衆は悟ることができました。
私たち・菩薩衆及び弟子たちは 先ほど 世尊が分別ふんべつ して説いてくださった法の利益りやく を
自分の立場 立場において 理解することができました。
おかげで いつかは自分も必ず、仏の境界きょうがい に達することができるという 自覚が出てきました。
私は今 とてもうれしく思い 身に溢れる喜びを感じております」。
世尊
「では 弥勒菩薩が説いた この偈の経文の説明をします。
経文: 不退の地に住し……とは
何があっても退転しない境地に住していることで 「無生法忍を得る」と同じ意味です。
経文: 一切智を得る……とは 仏の境界に達するということです。
経文: 無上の心を発しつ……とは 仏の悟り(無上の心)へ達する 「阿耨多羅三藐三菩提」の心を発すること。
経文: 釈・梵恒沙ぼんごうしゃ の如く 無数むしゅ の仏土より来れり……とは
諸天・善神は、仏の供養のため 宇宙のあらゆる国土から来集されたという意味。
諸天・善神→帝釈天や梵天のこと。 「梵天/釈尊に懇願」:「仏の仲間/菩薩/天」
経文: 11の諸仏の前みまえ にて 宝幢ほうどう に勝旙しょうばん を懸けたり……とは
バラモン教の僧たちが 宗論をたたかわして勝った時、門に立てる旙を勝旙という。
仏の無量寿の教えは あらゆる教えの最上位に立つものだから、世尊の説くこの教えは
最高・最勝の教えであることを示す為 説法会に参集した諸仏の前に 勝旙を立てたという意味」。
弥勒菩薩 つづけて偈を申す
「仏・寿じゅ の無量むりょう なることを聞いて 一切皆歓喜かんぎ す。仏の御名みな 十方に聞こえて、
広く衆生を饒益にょうやく したもう。一切善根ぜんこん を具そな えて 以って無上の心を助く」。
世尊
「では 弥勒菩薩が説いた この偈の意味を説明をします。
仏の寿命が永遠不滅であることを聞いたので 一切の衆生は皆 歓喜いたしております。
仏の名は 十方に響き知れ渡り 広くおおぜいの衆生に 功徳を与えております。
その功徳を得た衆生たちは 皆 心に善根ぜんこん を具そな えることができました。
その善根が 無上道を目指す衆生の無上の心(願い)を 遂げさせるのです」。 つづく