分別功徳品 (9)
世尊 広為他説 こういたせつ を説く
「阿逸多あいった よ 次に 略解言趣りゃくげごんしゅよりもう一つ上・第三段階の広為他説の教えを説きましょう。
衆生が 仏の教えを広く聞き 同時に人にも聞くことをすすめ 自分の心に教えをしっかり保ち、
人にも教えをしっかり保たせて 自分も書写し人にも書写させる行為や、経巻の供養を行なったり
花・香・瓔珞ようらく 幢旛とうばん 天蓋てんがい や 香油・燈明とうみょう などを施ほどこ す行為など
つまり 感謝の念を現わす行為を行うならば その衆生は、ついには、仏の智慧を具えることができます。
これは、仏の教えを聞き心から感謝の念を生じて、衆生自ずから進み、現象界の形を現わす行為なのです。
その結果、その衆生は 無量無辺の功徳を 受けるでありましょう。
この教えが 天台大師てんだいだいし が説いた広為他説こういたせつ の教えです。
では次に 深信観成 じんしんかんじょう の教えを説きましょう。 「光明如来の仏国土」:「弥勒菩薩とは」
この教えは 広為他説の教えをさらに進めた、第四段階の教えです。
阿逸多あいった よ、善男・善女が、仏の寿命は無限であるを聞いて、心奥深く信解するならば、
その善男・善女は、仏の説法の様子を 見ることができます。
大菩薩衆や声聞衆たちへの説法の場である 霊鷲山りょうじゅせん の様子を見るでしょう。
又、未来の娑婆世界の土地は 瑠璃るり で完成された平坦へいたん な地であることを知るでしょう。
”未来の仏の国”は、境界きょうかい で区切られた黄金おうごん の道が、面々 どこまでもつづいて走っています。
その道の脇には 美しい緑の樹木が美しく並び、秩序ある景観をなしています。
建築物はすべて宝石で造られていて、その建物には 諸々の菩薩衆が住んでいます。
仏の寿命の無限を心奥深く信解した善男・善女は、この浄土の如くの世界を、見ることができましょう。
仏の教えを信じ高い信仰を得た衆生は、普通ではありえない素晴らしい世界の光景が 見えてくるのです。
衆生が心の底から 仏の無量寿を信解できたときに この境地に達することができるのです。
仏の無量寿を信解できた衆生の信仰の姿を、深信解の相じんしんげのそう といいます。
仏が 霊鷲山りょうじゅせん で説法している姿が見える衆生は
いつも自分は、仏と一緒であると感じる心が 如実に確信していて、最高の境地へ到達した衆生です。
仏の無量寿むりょうじゅ を信解しんげ し 最高の境地へ到達した衆生は 浄土世界じょうどせかい が見えるのです。
この教えが、天台大師てんだいだいし の説いた深信観成じんしんかんじょう の教えです。
深信観成の観かん とは、世界観・人生観という意味です。
天台大師てんだいだいし の教えをまとめると
仏の生命の無限を心に深く信解する衆生は、寂光土じゃっこうど (浄土)に住むということです。
以上で 在家の四信を終えて 次は 滅後の五品めつごのごほん を説きましょう」 つづく 滅後の五品 めつごのごほん