随喜功徳品 (2)
世尊
「この宇宙に存在の六趣・ろくしゅ の生命 所謂いわゆる 天上界・人間界・修羅界・畜生界・餓鬼界・地獄界の生命
さらに 四生ししょう の生命 所謂いわゆる 鳥・獣・虫けら・微生物・などの世界を含め すべての生命
又 有想うそう 無想むそう 非有想ひうそう 非無想ひむそう の生命は皆、幸せに生きることを望んでいます。
この宇宙のすべての生命は、自分の人生が苦労無く、煩わしく無く、幸せに生きれることを 願っております。
そこで、ある大施主だいせしゅ (施す人)が
宇宙のすべての生命が、生活を楽しむためのもの・幸せに生きるのに欲するもの・すべて与えたのです。
それらの生命が満足するほどの金・銀・瑠璃るり 硨磲しゃこ 瑪瑙めのう 珊瑚・琥珀・の七宝しっぽう
さらに、日常に必要な、象・馬・車や 七宝しっぽう で飾った建物など、とにかく何でも、どんな物でも、
それぞれの生き物が欲するあらゆる物質を すべて与えたのです。
「天上界」:「人間界」:「修羅界」:「畜生界」:「餓鬼界」:「地獄界」
このように、その大施主は 80年間も長く 財施ざいせ しつづけておりました。
80年間を過ぎたある時、大施主は、ふと考えました。
今まで私は 衆生が欲していたので、生活を楽しむための物や、欲するものすべて、彼らに与えてきた。
しかし、この衆生たちはだんだんと年をとって、もう80歳という年齢をも すぎてしまった。
彼らは、髪は白く、顔はしわだらけに、死期も確実に、静かに近づいてきている。
だから今、私はこの人たちのために、仏法ぶっぽう を教え 涅槃の境地へ導いてやる必要があるだろう。
そこで大施主は すべての生命を集め、法を説き教化きょうか しました。
大施主の教えを聞いた生命は 皆 法を学び心が喜び、法も行も実行しようという気持ちが起きました。
その結果 それらの生命は、一足飛びに(またたくまに)
須陀洹道しゅだおんどう 斯陀含道しだごんどう 阿那含道あなごんどう 阿羅漢道あらかんどう の境地を得て、
有漏うろ (すべての迷い)から離れ どんなことがあっても 心が乱れない深い禅定の境地まで達しました。
又 どんな境遇であっても その境遇に動かされない 自由自在な心境を得たのです。
つまり あらゆる物質に心がとらわれない八解脱げだつ の境地を得たのでした」。 「世尊阿羅漢を説く」
つづいて 言葉の意味を説きましょう 「小乗仏教の修行四段階」
声聞しょうもんの修行四段階 (声聞の四修行)
須陀洹道しゅだおんどう 基本的な煩悩を断ち、仏弟子・ぶつでし・の仲間になった段階。
斯陀含道しだごんどう 貪瞋癡とんじんち の迷いは離れたが、まだ僅かに残る煩悩の故 迷う可能性がある段階。
阿那含道あなごんどう 迷う可能性が消え去った段階。
阿羅漢道あらかんどう 1切の迷いを捨て去り 心が清浄になった段階。
あらゆる生命を表わす言葉 「六道の世界」:「説法品第2」
六趣 ろくしゅ 六道と同意語で、説法品第2でも説いています。
四生ししょう 胎生たいしょう (母体から姿のまま生まれる生命) 卵生らんしょう (卵から生じる生命)
湿生しつしょう (湿った処から生まれる生命) 化生けしょう (生まれた処が不明な生命)。
有想うそう 差別心をもっているもの。 無想むそう 差別心をもっていないもの。
非有想ひうそう 差別心があっては、実相を見ることができないと、悟ったもの。
非無想ひむそう 差別心があるとか無いとかを、超越してしまっているもの。
八解脱げだつ ものごとに対し、捉われのない見かた考え方を得るための、八つの修行。
(3)へつづく