随喜功徳品  最終
 世尊
 「さて 今まで私は 法華経の真理の教えを聞いて 初随喜の心を起こした衆生の功徳を説いてきました。
  しかし そこまでいかない前の段階 つまりただ教えを聞く機会に触れただけの衆生たちでも
  又
 教えは聞いたが 初随喜の心がまだ動かなかった段階の衆生たちでも 功徳は必ず与わります。
  その理由は
 衆生には皆 仏性ぶっしょう があるからです。
  その仏性は何かとの縁
えん が出会ったとき 急に覚醒します。すると 衆生は仏の道を求め出すのです。
  つまり
 衆生が仏の救いの道へ導かれるときが このときなのです。

  こういう理由から
 衆生は教えに出会うことが先決せんけつ であり 最も需要なことといえます。
  だから
 仏の教えを聞いた衆生は 他の衆生に 仏の教えを聞く機会をつくるべきなのです。
  この行為は
 衆生にとっては 功徳を増すたいへんに尊い行為なのです。
  法華経を聞くという縁を勧めた衆生にも
 縁を素直の受け取った衆生にも 当然 功徳が与わるのです。
  
  
阿逸多あいった よく聞きなさい。
  ある衆生が
 法華経の教えを説く人がいますので、私と一緒に行って聞きましょう と、
  他の人を法華経の法座へ誘い
 誘った誘われた二人共に 法座で 教えの1句1偈でも聞いたならば
  誘った衆生は
あらゆる悪を止め善を勧める菩薩の陀羅尼菩薩と同じ所に 生まれかわるでありましょう。
  陀羅尼菩薩
だらにぼさつ とは 人々に教えを説き ります。
  また
 ある衆生が自ら 法華経の教えを聞きたいと願い 自分の足で道場へ行ったとします。
  そして
 その衆生が 座っていても立ったままでも仏の法華経の教えを少しの間でも聞いたならば
  その衆生は
 功徳が即与わって それからの衆生の人生が 大変良い環境と成るでしょう。
  さらに
 その衆生の来世は 大変素晴らしい良い所に 生まれることでしょう。
  あるいは
 立派な乗り物に乗って 天上界の宮殿に昇ることも あるでしょう。
  
  また
 ある衆生が説法の法座において あとから来た衆生に 空いている席を教えて勧めたり
  あるいは
 どうぞ 私の隣で一緒に聞きましょうと笑にこやか に声をかけて 自分の席を半分譲ったならば
  その衆生の来世は
 仏法の守護神である帝釈天たいしゃくてん 梵天王ぼんてんおう などの近くで 暮らすでしょう。
  または
 この娑婆世界で暮らすならば 転輪聖王てんりんじょうおう と共に 席を同じく坐ることでしょう。
 
  転輪聖王てんりんじょうおう とは
 仏の法に随したが い娑婆世界を統治とう じする 大王であります。
  この大王は
 王のずべての条件と仏の三十二の相を具足ぐそく する王で 外出のときには
  金輪王銀輪銅輪王鉄輪王の四人の部下を従えて 七宝
しっぽう で出来た輪宝りんぽう を転がしながら
  ガンガンと前を見て歩き この世のすべての悪を打破して進んで行くのです。
  四人の部下は
 須弥山しゅみせん を中心にした四州の大陸を それぞれ治めています。   須弥山の四州
  つまり このように
  法華経と他の衆生と縁を結ぶ衆生は 仏の功徳が授かる高い精神レベルの衆生なのです。
  その精神レベルの高さは
 帝釈天や梵天王や陀羅尼菩薩と 同等のレベルの高さなのです。
  精神も心も清浄になっているこの衆生の
 その後の人生は どんどんと良くなっていくのです。
  つまり
 清浄な精神と心は 肉体や環境を活性化させるのです。 これは 真理の法なのです。
  そして
 この衆生が 来世にもその次の来世においても 菩薩行を積み重ねるならば 
  その清浄な精神は
 益々 磨きがかけられ向上していくので やがて 
  世尊
(仏)と同じような 仏の相好そうごう に近づいていくことは 間違い無いありません」。
    
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