世尊
 「来る日も来る日も
人を拝むこの常不軽菩薩にも ついに入滅の時がきました。
  しかし
臨終の際の常不軽の心は 今までにない程 最高に澄みきった状態に成って そのまま持続し
  過去世の
威音王如来いおんおうにょらい が説いた法華経の教えを 強く自得受持したい気持ちが起きました。
  そして
ついに 臨終の間際にて常不軽菩薩は 法華経の教えを 強く自得受持できたのでした。
  その自得
受持した功徳によって 常不軽の六根は 清浄の境地へ到達したのです。
 その結果 この世での常不軽菩薩の生命は さらに二百万億那由他歳も増益ぞうえき されたのでした。
  さらに 生命が増益された常不軽菩薩は 人々の迷いを除く神通力をも 会得
えとく したのでした。
  寿命が延びた常不軽は
さらに生き続け 世の衆生のために 法華経の教えを説きつづけました。
  これを見て 今まで
常不軽をバカ呼ばわりしていた比丘比丘尼たちの態度が激変しました。
  又 常不軽菩薩は

  楽説弁力
ぎょうせつべんりき ーねが て法を説いてあらゆる人を説得する力も得て さらに
 
大善寂力 だいぜんじゃくりき ー善を持ってなにものにも動かされぬも 会得できました。     「楽説無礙弁才
  この大神通力を目の前で見た世間の人々は 皆 常不軽菩薩の説法を耳を凝らして聞きはじめたのでした。
  そして 法華経の教えに信伏しんぷく していく人々が どんどん 増えていったのでした。
  このように
常不軽菩薩 無数の人々を教化し 阿耨多羅三藐三菩提」の道へ導き入れました。
  そして
ついに 寿命が終わったのちにも 二千億ものたくさんの仏ほとけ 会うことができました。
  その仏は
すべて 日月燈明如来にちがつとうにょうにょらい という名号みょうごう の仏でした。

 常不軽菩薩は 日月燈明如来の許でも また法華経の教えを学び 解説
げせつ し説きつづけました。
 
この解説の功徳が因縁となってまたさらに常不軽菩薩 二千億の仏に会い奉ることになりました。
  こんどの二
千億の仏は すべて 雲自在燈王仏
うんじざいとうおうぶつ という名号みょうごう の仏でした。
  常不軽菩薩は さらにこの
雲自在燈王仏の許でも 法華経の解説げせつ 積極的に行いました。
  すると
また この解説の功徳によって常不軽菩薩の六根は清浄となり 遂に 仏の境地を得たのでした。
  の境地を得た常不軽菩薩は 心に畏れは全く無くなり
澄みきった心で 今でも法を説いているのです。

                     
心に畏れは全く無くなり →心無罣礙 しんむけいげ   般若心経の心無罣礙
 得大勢菩薩 とくだいせいぼさつ
 この常不軽菩薩は
最初 若干じゃっかん の諸仏の供養から始めたのです。
 仏の教えを尊重し
讃歎し 自ら進んで修行を積み善根ぜんこん を植えたので 仏の功が与わりました。
 さらにそこからも
増上慢になることなく 謙虚けんきょ な心を失わず 菩薩行の修行に励んでいました。
 菩薩行をつづけた功徳にて
多くの仏に出会い その仏のもとで さらに 法を説き続けていました。
 常不軽菩薩は
このような修行の結果 功徳が成就阿耨多羅三藐三菩提を 得ることができました。
 得大勢菩薩
そのときの常不軽菩薩とは ほかでもない この世尊なのです。
  
                
ええ~ 常不軽菩薩は世尊だったんですか!ビックリしたもう ‥‥ボサツマン
世尊は このように過去世にて 数多くの先仏せんぶつ のもとで 長い長い修行を重ねていました。
  この法華経を受持し
読誦し解説人のために法を説く 怠ることなく実行していました。
  そしてついに
仏の悟り阿耨多羅三藐三菩提を得ることができました。 これは真実なのです。
  得大勢菩薩 そのときの私を賤いや しめ 怒鳴りまくった比丘
比丘尼優婆塞優婆夷たち
  自らの罪の報いを受けて
二百億劫年おくこうねん もの長い間 仏の教えに合う縁が切れてしまい
  法を聞きたくても
仏の教えから遠ざかり 信者たちに合う機会すらも 与わりませんでした。
  彼らは
種々な苦しみから救われる機縁
きえん にも出合うことなく 千劫せんこう という長い間
 
阿鼻地獄界 あびじごくかい において 大苦悩の人生を送っていました。
  やがて
その宿業しゅくごう が尽き罪が消えた時 彼らは又 常不軽菩薩の教化に出会うことができました。
  このことを
人間界では偶然と呼ぶが 仏界ぶっかい では必然なことです。なぜなら真理だからです。

  得大勢菩薩よ
その昔 常不軽菩薩を軽んじた四衆の人たちとは ほかでもありません。
  今
この説法会せっぽうえ にいる跋陀婆羅ばつだばら ほか 五百の菩薩たちほか
  師子月
ししがつ 等や 五百の比丘びく たちや 尼思仏にしぶつ ほか 五百の優婆塞うばそく たちなのです。
  しかし 今の彼らは
仏の教えを学び阿耨多羅三藐三菩提 あのくtらさんみゃくさんぼだい を目指す修行者なのです。
  しかも皆
悟りへの道への志しが固く けっして退転することのない心をもっている者たちです。

  得大勢菩薩よ
仏の世界へ導く教えとは この妙法蓮華の教えのことです。
  いまこそしっかりと
法華経の無量な教えを 悟らねばなりません。
  この教えは
もろもろの菩薩に功徳を与え 菩薩の境界きょうがい の者を 仏の境界へ導く教えです。
  今 しっかりと
仏の智慧を具えることができる最高の教えであることを 悟らねばなりません。
 
強くハッキリと言いましょう
  大菩薩衆よ
私の入滅後は 常に法華経の教えを受持 読誦 解説 書写 励まねばなりません。
  つまり
五種法師の行」を行うことが あなたたちの修行なのです」。    つづく   この品の教えの要点