如来神力品 (2) 二門信一の教え 出広長舌 すいこうちょうぜつ
世尊
「私は今、法座の菩薩・摩訶薩、すべての衆生・生き物の目の前で、広長舌こうちょうぜつ を出して、
上梵世かみぼんぜ つまり、梵天ぼんてんまで伸ばして届かせるという、大神力を現じて見せました。
この出広長舌の意味を説明しましょう。 「梵天王」:「梵天・釈尊に懇願」:「天上界」
人は、失敗したときや、ちょっと恥ずかしい時 あっかんべ〜やペロっと舌を出して、テレ笑いをするでしょう。
古代インドでの習慣は、自分の言うことは真実である という意味の行動なのです。
つまり、私が、無限に長い舌を出して見せ、その舌を梵天(最上の天界)まで届かせたということは、
私(世尊)の説いた教えはすべて、永遠に真実であるということを示したのです。
また この出広長舌は 二門信一にもんしんいつ をも 説いているのです。
すなわち、私が出広長舌すいこうちょうぜつ いう、摩訶不可思議まかふしぎ な神力を現じたのは
私(世尊)の教えを聞いた衆生は、本仏と迹仏の教えを区別して考えやすいのだが
本仏の教えと迹仏の教えは、別々の二つの教えではなく、根本は一つの教えである、という意味なのです。
つまり、日本流で表現するならば 二枚舌は使わない という意味であります。
二門信一の教えとは、本門ほんもん と迹門しゃくもん の二門は、一つの真実から出ている、という教えです。
衆生の皆さんは、私(世尊)の説法を聞いたので、実在の本仏のことを、知り得ることができました。
私(世尊)は最初は、娑婆世界に生まれた人間として、自分の体験をもとに 教えを説いていました。
やがて、私(世尊)の本質は、無始無終むしむしゅう の本仏であると、皆さんに告白いたしました。
そして、人間は本仏に生かされているという自覚を得ることで、真の救いが得られると、説きました。
久遠実成くおんじつじょう の本仏の意思が、衆生済度しゅじょうさいど の慈悲心じひしん の見地けんち から、
迹仏しゃくぶつ としての 人間の私(世尊)を この世に出現されたのです。
仏の教えは、根本的にひとつの教えなのですから 本仏と迹仏の教えを区別する必要はありません。
私(世尊)が、出広長舌という大神力を現じた理由は、このような意味なのです」 (3)へつづく 毛孔放光 もうくほうこう