如来神力品 (6) 二門行一 普見大会 ふげんだいえ 総決起大会
世尊
「次の経文を 説きましょう。
是こ の二つの音声おんじょう 遍あまね く 十方の諸仏の世界に至り 地ち 皆 六趣ろくしゅ に震動す‥‥とあります。
この意味は
この経文は、二門行一にもんぎょういつ の教えを説いています。
二つの音声とは、「一時謦欬」いちじきょうがい の声と 「倶共弾指」くぐたんじ が響く二つの音声おんじょう です。
地ち 皆、六趣に震動すとは、天地のあらゆるものが、心から感動したという意味。
なぜ、天地のあらゆるものが、心から感動したのでしょうか?
その理由のひとつは
諸仏が声を共にして、法華経が教える真理はひとつであると、声高らかに宣言したということ。
その理由の もうひとつは
菩薩行の最高境地である 自他一体の精神を娑婆世界に確立することを、諸仏が共に誓い合い
弾指たんじ の音を高らかに響かせ合ったのを、天地のあらゆるものが見て 心が歓喜したからです。
このように
諸仏の弾指の音は、宇宙を翔け巡り あまねく十方世界の隅々まで 響き渡りました。
この響きを聞いた十方世界の天地の衆生たちは 心の底から喜び感動し身体が震え感激しました。
この衆生たちにも、仏の教え(自他一体の精神)を実行しようという気持ちが、心の底から強く湧き起こりました。
そして、衆生は皆全員、手に手を取り合って 大きな声で菩薩行の実行を誓い合いました。
こうして、法座は、仏 菩薩 衆生等 全員の心がひとつになって 総決起大会の場となりました。
これを 普見大会ふげんだいえ とよびます。
最高の盛りあがりとなった普見大会ふげんだいえ は、衆生全員の心に、
法華経の教えは、菩薩行の実行により顕現けんげん されることを、深く刻みこみました。
菩薩摩訶薩・比丘・比丘尼・大衆たちよ
大菩薩行の集大成の境地とは この地上に世界の平和と娑婆世界即寂光土の達成なのです。
1時謦欬いちじきょうがい と 倶共弾指くぐたんじ の二つの音声おんじょう に感動し六趣に震動した天地の衆生は
全員で 菩薩行の実践を誓い合いました。 これが 二門行一にもんぎょういつ の教えです。
「天龍/夜叉/乾闥婆」:
次の経文を 説きましょう。
衆生 天龍 夜叉 乾闥婆 阿修羅 迦楼羅 緊那羅 摩睺羅伽 人 非人等 仏の神力を以ての故に 衆生皆
この娑婆世界の 無量無辺百千万億むりょうむへんひゃくせんまんおく の衆 諸の宝樹下ほうじゅげ の師子座ししざ 上の諸仏を見
釈迦牟尼仏しゃかむにぶつ 多宝如来たほうにょらい 共に 宝塔ほうとう の中に在して 師子の座に坐ざ し奉るを見たてまつる。
又 無量無辺百千万億の 菩薩摩訶薩及び 諸もろもろ の四衆ししゅ 釈迦牟尼仏を恭敬くぎょう し囲饒いにょう し奉るを見る。
既に 是れを見おわって 皆大おおいに歓喜かんぎ し 未曾有みぞう なるを得る……とあります。
この意味は
この経文は、尊い普見大会ふげんだいえ の情景を説いています。
娑婆世界の霊鷲山りょうじゅせん にて、諸々の諸仏同士が、菩薩行の実行を誓いあっている光景を
十方世界のあらゆる天地の生命が、仏の神力じんりき によって、見ることができました。
そこでは、釈迦牟尼仏しゃかむにぶつ・と「多宝如来」たほうにょらい が、一緒に並んで端坐たんざ されております。
ほかの諸仏は 宝樹の下の師子座ししざ に、坐っていらっしゃいます。
ほか 無数の菩薩摩訶薩ぼさつまかさつ は、釈迦牟尼仏をとり囲み、恭敬くぎょう (慎み敬う)しております。
この光景を見た天地一切の生命は、いまだ経験したことのない感動と喜びを感じたのです。
天から虫たちに至るまで、あらゆる生命の生き物たちは、仏の神力を普あまね く、見ることができました。
普見大会の教えは 未来の世では、自他一体の精神が娑婆世界に確立するので、
未来においても、すべての生き物が皆 等ひと しく 仏を見奉たてまつることができる。
未来においても、仏は必ずすべての生命あるものを 等ひと しく 悟りの世界へ導いてくれる。
仏は、こんな素晴らしい神力を具えている、という教えです」。 (7)へつづく 空中唱声 くうちゅうしょうしょう