薬王菩薩本事品 (2)
末世まつせ の娑婆世界が 法華経の教えにより寂光土じゃっこうど になると 結論が出た嘱累品第22では
上行菩薩じょうぎょうぼさつ ほか無数の菩薩たちも 舎利弗しゃりほつ を筆頭した多くの声聞衆や縁覚衆も
天上界も・人間界も 人間以外の生き物たち・一切の生命たち 皆大歓喜だいかんぎ の心に湧いておりました。
やがて 宿王華菩薩しゅくおうけぼさつ が
「世尊、薬王菩薩やくおうぼさつ について、教えてください。
娑婆世界で遊行ゆうぎょう されていて、どんな時でも、どこにでも、自在に出現し衆生を教化して
自由自在な済度を行っておられる薬王菩薩は どのようにして、あのすごい偉神力を得たのでしょうか。
やはり 彼は普通の菩薩以上の 難行苦行なんぎょうくぎょう の経験を積んだ方なのでしょうか。
我々・菩薩衆・声聞衆・一切の衆生たちは、ここのところを知りたいのです。どうぞ教えてください」。
世尊
「宿王華菩薩よ、教えましょう。 遠い過去世に、日月浄明徳如来にちがつじょうみょうとくにょらい という仏がおりました。
この如来には、多くの菩薩衆や大声聞衆の弟子たちが おりました。
この如来の仏国土では 如来の寿命も菩薩衆の寿命も 四万二千劫と同じでありました。
その国土には 女人・地獄・餓鬼・畜生・阿修羅などは、全く、おりませんでした。
国土は美しく荘厳にて風格を具え、禅定の境地を得た菩薩衆や声聞衆が、宝樹の下に坐っています。
その虚空こくう では、天人たちが音楽を奏で歌を歌い 如来を供養しております。
日月浄明徳如来は、法華経の教えを
弟子の一切衆生憙見菩薩いっさいしゅじょうきけんぼさつ 多くの菩薩衆・声聞衆・大衆たちに 一心に説いておりました。
一切衆生憙見菩薩は、教えのためには、楽ねが って苦行を習い つまり
どんな辛いことも、どんな苦行もいとわずに、自ら進んで行い仏の道の修行に邁進まいしん しておりました。
つまり 一切衆生憙見菩薩は、日月浄明徳如来の教えに従って、仏の境界を目指して修行しておりました。
彼は 一万二千年間の精進しょうじん を経て、ついに現一切色身三昧げんいっさいしきしんざんまい を得たのでした。
現一切色身三昧とは、教化する相手に応じた姿を現じ 適切な教えを説く自在な力の境地です。
やさしく導くのが良い衆生には、やさしく説いて教えます。
又、厳しく教えるべき相手には不動明王ふどうみょうおう を現じ、烈火れっか の如く、ビシバシ教化します。
このように 自在な変化をもって、正しい教えを厳しく説ける境地が、現一切色身三昧の境地なのです。
宿王華菩薩しゅくおうけぼさつ よ、この境地を得ることは 法華経を説く行者にとって重要な戒かい であります。
日月浄明徳如来にちがつじょうみょうとくにょらい に心から感謝し法華経の教えを実践した弟子の一切衆生憙見菩薩は
一万二千年間もの修行を終え、ついに現一切色身三昧を得たのです。
一切衆生憙見菩薩は、日月浄明徳如来の説いた法華経の教えを供養しようと、心に誓いました。
その瞬間、即座に、一切衆生憙見菩薩は三昧境さんまいきょう に突入いたしました。
次に 彼は虚空こくう に昇り、地上へ向けて美しいさまざまな花を、地が埋まり隠れるほど降り散じたのでした。
又 さらに
ー此こ の香こう の六銖ろくしゅ は 価値げじき 娑婆世界なりー つまり
六銖というたいへん軽い目方の香だが、地球ほどの値うちがある香りの良い香こう を、
たくさん降らして、日月浄明徳如来の説いた法華経を供養いたしました」。 (3)へつづく