薬王菩薩本事品 (5)
 世尊
 
現世の王子で過去世の弟子一切衆生憙見菩薩を見た 日月浄明徳如来は 顔をくしゃくしゃにして喜び
 
善男子よ 前世の弟子の一切衆生憙見菩薩よ 良く来てくれました。ほんとに懐かしいですね。
  
実は 私はあなたに頼み事がありました。 そこへあなたが 丁度良いタイミングで来てくれました。
  
私はもう この世で説くべき教えをすべて説き終えました。 私にも滅度の時がきました。今夜 涅槃ねはん に入ります。
  それで 私の最期の床 とこ  しつらえてほしいのです。
  
善男子よ 一切衆生憙見菩薩よ 私の滅後はあなたに仏法の広宣流布こうせんるふ  託します。
  
諸々の菩薩大弟子のことも 阿耨多羅三藐三菩提の法も 三千大千世界のすべての道場も 仏法に仕える諸天善神のことも
  すべて 弟子のあなたに任せます。 善男子よ
 いろいろと 苦労が多いだろうが 頼みますよ。
  
私の遺骨のことも あなたにお願いします。 広く世の人々が供養できるように 仏塔をたくさん建ててください。
  
塔を建てて 仏舎利ぶっしゃり を供養し 一切衆生の心に 仏を恋慕渇仰する心を植え付けてください。
  
塔の数は 多ければ多いほど あまねく人々の心にしっかりと 教えがうち建つのです。
  この供養は すべての仏の御心みこころ に叶う供養と なりましょう。
 しかし 仏が真に喜ぶ供養は形式ではありません。仏が真に喜ぶ供養は あくまでも 教えの実行という実質であるのです。
  なぜ 私がこんなにも厚い信任を示して、現世の王子であるあなたにお願いするかというと
  それは あなたが 前世で 真心からの供養の実行 つまり 身をもって法を実行した弟子だからです。
  仏には多くの弟子がおります 仏はすべての弟子の 真心から出た法の実行を見定めています。
  私は あなたのその真心からの実行を すでに前世で見極めておりました。だから
 あなたに任せるのです告げました。
 滅度の時をむかえた日月浄明徳如来にちがつじょうみょうにょらい 
  今後の一切を
一切衆生憙見菩薩の真心に頼み終えその日の夜半に静かに入滅されました。
  過去世の弟子
一切衆生憙見菩薩深い悲しみに打ちひしがれて泣き悶えるのでした」。
  
(6)へつづく
    ちょっと待ってくださいよ 師匠と弟子の法悦の場面がいきなり 悲しい話とはショックです‥‥‥ボサツマン