妙音菩薩品 (4)
 世尊 つづける
 「
華徳菩薩けとくぼさつ 衆生たちよ妙音菩薩ただここに 一人だけおられると思っているでしょうが
  妙音菩薩は
教えを聞く衆生に合わせて三十四身の姿を現わすのです。
  妙音菩薩
あらゆる場所にあらゆる衆生の姿として出現されて法華経を説いているのです。

  その妙音菩薩の三十四身の代表的な
化身けしん とは、
  天上においては
 仏法を守護する天大将軍てんだいしょうぐん  仏法に帰依する在家の人である居士こじ 
  
王家に仕える官吏かんり 宰官さいかん  婆羅門ばらもん などですが、このほか
  
妙音菩薩三十四身に限らず教えを説く時と場合に応じてあらゆる姿や形で現われます。
  
また
 妙音菩薩はこの娑婆世界のみならずその他十方世界遊行ゆうぎょう しておるのです。
  そして
衆生の性質や機根の程度に応じてあらゆる方便を用いて教え導いているのです」。
 ボサツマン
 
世尊 34身に化身される妙音菩薩は 33身に化身される観世音菩薩と よく似ているように思います。
  ただ
遊行されている世界が違うのですね。                        「観音経偈/読経
  観世音菩薩は
娑婆世界遊行されているが妙音菩薩は十方世界遊行しておられるのですね」。
 華徳菩薩 けとくぼさつ 
 「
世尊どんな禅定ぜんじょう を行うと 妙音菩薩のような神通力を得ることができるのでしょうか」。
 世尊
 「それは
教化する相手に即応した姿に成る現一切色身三昧 げんいっさいしきしんさんまい を得ることです。
  妙音菩薩
この現一切色身三昧力量とてもすぐれているのです。
  だからこそ
広く無数の衆生に法の利益りやく を与えることができるのです」。
 この法座の娑婆世界のすべての菩薩衆や 妙音菩薩と共に娑婆世界へ参集された8万4千の菩薩衆は
  世尊
華徳菩薩の会話を聞き 心が清浄になりました。
  すると
 この法座の全員が 世尊の説法を聞き清浄な心になった功徳によって、
  現一切色身三昧
 げんいっさいしきしんさんまい (教化する相手に即応した姿に成る)会得できたのでした。
  又
同時に あらゆる善を勧めあらゆる悪を止める力である陀羅尼だらに 会得できたのでした。
 いよいよ妙音菩薩の一行は娑婆世界と別れを告げ自分の国浄光荘厳の国へ帰ることになりました。
  妙音菩薩は
釈迦牟尼仏多宝仏に別れの挨拶をし本国に戻り 浄華宿王智如来へ報告いたしました。
 妙音菩薩帰られた後 華徳菩薩法華三昧ほっけさんまい を固く決定けつじょう して 気を引き締めて
 世尊の顔を見つめて
 「世尊
私はこれからは尚いっそう法華経の教え一筋に打ち込んで参ります」と強い決意を伝えました。
  
  妙音菩薩品の
まとめ
  経文に
 仏の形を以て得度とくど すべき者には 即ち仏の形を現じて為に法を説くあるがこれは
  妙音菩薩は
ありとあらゆる形をとって十方世界のどこにでも出現されるという意味です。
  妙音菩薩の身体が
 金色に光輝き無限大の大きさであるのは理想の姿を意味しています。
  その理想の姿の妙音菩薩が
普通の人間の姿や形であられる釈迦牟尼仏に
  無価
むげ 値をつけられないほど高価瓔珞ようらく を奉られ 合掌礼拝を繰り返し行いました。
           
理想の世界に住む妙音菩薩は わざわざ娑婆世界まで来る必要はあるのでしょうか?‥‥‥ボサツマン
 ではなぜ?妙音菩薩は理想世界から穢れと邪悪に満ちた現実の世界へわざわざ来たのでしょうか。
 普通は
下クラスの娑婆世界から上クラスの理想の世界へ向学の為 学びに行くケースが多いのです。
 今回のケースは
逆のパターンですので
 理想の世界から
現実世界へ来るということは必ずそれなりの理由があるはずです。
 釈迦牟尼仏は邪悪に満ちた魔や魔民の妨害次から次と起きている この娑婆世界のなかにおいて
 衆生のために仏の
正法しょうぼう を説き理想社会の建設に常に邁進まいしん しておられます。
 こんな娑婆世界へなぜ? 妙音菩薩が遠い理想の国からやってきたのでしょうか?
 
  妙音菩薩が娑婆世界へ来た目的
次の二つ。
  
1 理想社会の具現者である釈迦牟尼仏 挨拶合掌礼拝し供養の心を表わし恩に報いるため。
  
2 その釈迦牟尼仏どんなに偉大でどんなに尊いのかということを証明するため。
  妙音菩薩の娑婆世界の衆生に向けた別れの言葉
  
『理想の実現は釈迦牟尼仏の如く一歩ずつ現実化してこそ尊いのである』。
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