妙荘厳王本事品第27 みょうしょうごんのうほんじぼん (1)  」:「」:「」:
  世尊
 「遙かな
遙か遠い過去世において 雲雷音宿王華智如来 うんらいおんしゅくおうけちにょらい という名の ほとけ  
  自分の仏国土で
 法華経を常に真剣に説いて 衆生を導いておりました。
  国の名は
 光明荘厳 こうみょうしょうごん  時代の名は 憙見 きけん といいました。
  その国土の国王の名は
妙荘厳王 みょうそうごんおう といい夫人の名は 浄徳 じょうとく といいました。
  この国王夫婦には
 浄藏 じょうぞう 浄眼 じょうげん という名の 二人の王子がいました。
 王子は二人共 常に菩薩道の修行に励んでおりすぐれた智慧慈悲の徳大神力 具えておりました。
  また
 六波羅密」を行じ 慈悲の心 捨の心自分の施しに報いを求めず、自分が受けた怨 あだ を忘れる心
  
喜の心他人の喜びを共に喜ぶ心を持ち さらにもっと密で深い三十七の行 ぎょう までも行い習得して、
  
菩薩道ぼさつどう のありとあらゆる厳しい修行に 邁進まいしん しておりました。
 その結果 ついに 二人の王子共に 六つの三昧さんまい  会得できました。
  
六つの三昧とは                                       妙音菩薩の三昧神通力
   
1 浄三昧 じょうさんまい        煩悩を徹底的に 取り除こうとする三昧。
   
2 浄光三昧 じょうこうさんまい      自らの徳を周囲に照らし 世間を明るくする三昧。
   
3 浄色三昧 じょうしきさんまい     身の表情挙動行動のすべてを 清らかな徳で表わす三昧。
   
4 浄照明三昧 じょうしょうみょうさんまい  自らが徳を具え その徳でもって 周囲を浄化する三昧。
   
5 長荘厳三昧 ちょうしょうごんさんまい  徳の高さをより追及し どこまでも荘厳の身を目指していく三昧
   
6 大威徳藏三昧 だいいとくぞうさんまい  一切の人間に対して 無限の感化力をもつ徳を具える三昧。
 ある時、浄藏じょうぞう 浄眼じょうげん  母君に頼みました。
 「お母さま
 雲雷音宿王華智仏 この世で一番尊い法華経の教えを説いております。
  私たちも
 雲雷音宿王華智仏さまの御許みもと へ行って法華経の教えを 学びたいと考えています。
  
できれば 母君も私たちと一緒に行こうでは ありませんか?……いかがでしょう」と。
  母君は
 「それはたいへん良いことです。 
法華経の教えこの世の本当の教えであると 私も信じています。
  けれど
お前たちのお父上国王 婆羅門の教えを信じています。
  お父上も
 仏の真理の教えである法華経の教えを信じるように成ることを 私は願っております。
  そこで
 お前たち二人の王子からお父上に私たちと一緒に行ってほしいとお願いしてみてください」。
 二人の王子
 「それは不可能なことです。母君もお分かりのことでしょう。 
  父王は
 私たちの話を聞かないでしょう。 もし聞いたとしても 父王の気持ちは変わらないでしょう。
  人間は皆 仏さまの子なのに。 
ああ〜 私たちは正しい教えを信じる家に生まれたかったです」。
 二人の王子は悲しそうにつぶやきました 三人はすっかり黙り込み その場の空気は沈んでしまいました。
 その時 母君が急に
 「そうだわ
 王子たちよ。お父上がめっちゃビックリして 目が飛び出すような奇跡を演じてみたら どうでしょう。
  六三昧
ろくさんまい の境地 大威徳藏三昧だいいとくぞうさんまい を会得したお前たちなら可能でしょう。
  お父上に
 二人の大神力だいじんりき を見せてあげなさい。するとお父上の心はきっと変わるでしょう」。
 ボサツマン
  
素晴らしい母です。 自らの身で実行しなさいと言ったこの母君は 母親の鏡です、本当に賢い人です
  
 オイラもこの考えは良いと思う 相手の心を動かすには、際立った事をして見せることが1番です。
    
エモーシュナルなこと‥が 相手の心を揺り動かすものと思います
    真理に保守的な父親と 進歩的な子供たち そしてその中間に位置する母親‥‥どの家庭でもよくあります」。
 母君の意見に王子たちは大賛成 早速さっそく 宮殿に飛んで行き
 「お父上
見てください。私たちは こんなにも高く 空中に高く飛び上がれるのです。
  
          出だしは大成功度肝を抜かれた父王は 口はアングリ 目は飛び出ました ……シメシメウヒウヒ
  お父上 見てください。私たちは空中で
坐ったり、立って歩いたり、走ったりも出来るのですよ。
  次に
 頭のてっぺんから噴水を勢いよく放出します。次に 足の先から火炎を吹きだして見せますね。
  また
 自分たちの身体は 虚空こくう いっぱいにも広がるし 又逆に豆粒のように小さくもできるのです。
  どうです
すごいでしょう。
  では
 次に 空中で姿をパット消して見せましょう。そして 地中からニョッキと現われて見せましょう。
  どうですお父上
 すごいでしょう。
  今度は
 地べたに水が浸み込むように ふっと消えて見せます。
  今度は
 水の上を地上のように歩いたり飛び跳ねたりして見せます。
  お父上 
 私たちの凄い大神力ご覧になって 如何いかが でしたか?」。
 王子たちは父王の心を入れ替えて仏の教えに入信させる為に大神力を用いて、
  普通の人間には 到底真似出来得ない行為をやって見せ
仏法の真価を証明しました。
 この有様を見た父王はすっかり感服して
 「いやはや
実に素晴らしい。お前たちにこんな大神力が有るとは父としてもたいへんに嬉しいことだ。
  いったいお前たちは
こんなスゴ技をどこの先生に教わったのか‥‥」と 聞きました。
 
     
これまた 父王もえらい父親やなあ 子供の神力素直に認めるなんて なかなかできないことです。
     たいていの父親は 簡単に認めると
 父親の瞽権 こけん に関わるという気持ちになるものです。
     親は子の前では
何かと難くせをつけたり 揚げ足をとったり 屁理屈をこねることが多いのです。
     だが 真理を発見したら 即行動に移した この国王は立派です
‥‥‥ボサツマン
 二人の王子
 「私たちの先生は
 菩提樹の下で教えを説いておられる雲雷音宿王華智如来という仏さまでございます。
  あの菩提樹の下では
 大勢の人々が法華経の教えを聞き 修行に励んでおります」と答えた。
 父王妙荘厳王みょうそうごんおう 
 「
ほほ〜!そんな偉いお方が居られたのか ちっとも知らなんだわ。もっと早く知りかったものだ。
  お前たちよ
 父は是非 その仏さまにお会いしてみたい。案内しなさい」。
  即二人は空中から飛び降りて一目散で母君に報告に走りだしました。   よかったよかった
   
(2)へつづく