妙荘厳王本事品 (2)
二人の王子はニコニコ顔で
「母君 父上に大神力を見せたところ、父上は仏さまにお会いになると、約束してくれました。
きっと父上も 雲雷音宿王華智如来の教えに 入信していだだけるでしょう。
私たちは 母上の助言で 父親に対する一番の善行である 仏事ぶつじ を 行うことができました。
実は 母君ははぎみ もうひとつお願いがあります。 私たちが仏道へ出家することを、お許しくださいませ。
この世で仏に会い奉るは 優雲華うどんげ の咲く花を見るのよりも、難しいことと聞いております。
今 この機会をのがすと 諸難(障害)も 起こってきましょう。 「優曇鉢崋/方便品」
私たちには 仏の教えを学び・仏道ぶつどう の修行をする天命があるのです」と 母にお願いしました。
母君
「それは大変良いことです。 お前たちの言う通り、仏さまに会い奉ることは、難行なんぎょう なのです。
お前たち二人の出家を許しましょう。 しっかり修行するのですよ」。
王子たちは 両親に向かい申しました。
「父上・母上、私たち二人は心から感謝いたします。本当にありがとうございます。
優雲華の花はめったに見られない如く、又 片目の亀が大海で浮木の穴を容易に見つけられない如く
同じように まさに 仏に会い奉たてまつ ることは 本当に本当に 難しいことでございます。
幸い私たちは この現世で その会い難き仏法と出会う縁に 恵まれたのです。
これもすべて 前世にて善業ぜんごう を積んだ果報かほう であると感謝しております。
さあ 父上・母上 女官たちもお誘いして 早く 雲雷音宿王華智仏 うんらいおんしゅくおうけちぶつ の許へ参りましょう」。
世尊
「この二人の王子、兄・浄眼菩薩 じょうげんぼさつ は以前から、法華経の精神を完全に体得していて、
どこまでもその教えをすべて実行していく心を 固く決定 けつじょう しておりました。
弟・浄藏菩薩 じょうぞうぼさつ も 遙かな昔に諸悪から離れ、清浄の心になりきっておりました。
だが この二人の王子は、自分の解脱げだつ が 目的ではありませんでした。
衆生を諸々の悪道から救いたいと願う 大慈悲心である大きな菩薩心ぼさつしん が 心に強くありました。
この大きな菩薩心があったからこそ 二人は 高い三昧の境地さんまいのきょうち を得ることができたのです。
又 王妃おうひ (母君)も 以前から 正しい信仰に励んでいた人でした。
母君は若い時すでに 仏の尊さを深く理解する力・諸仏集三昧しょぶつしゅうさんまい を得ておりました。
さらに 諸仏の心の中のすべての尊い教え・諸仏秘密の藏しょぶつひみつのぞう を、深く理解しておりました。
母君も王子たちも高い境地を会得していたので、大神力だいじんりき を発揮できたのでした。
つまり 二人の大神力となって顕われた法の力・仏の力が 父王を仏法に信解しんげ させたのです」。
(3)へつづく