ー五千起去　ごせんきこ　の大衆ー
　五千人もの大勢の大衆が、イキナリ、法座ほうざ　を放棄して帰ってしまいました。
　何が起きたのでしょう？　怒っているのでしょうか？　なぜでしょう　どうしたのでしょう？
　世尊のモッタイブッタ態度に対する無言の抗議行動なのか？
　　　　　　　　　　　　　オイラも、一緒に帰ろうかなと、思ったけどやめました、でも、彼らに、怒った感じはなかったよ……ボサツマン
　実は彼らは、自分たちは悟りを得ているので、もう世尊の説法を聞く必要がない、と思っていたのでした。
　五千起去の理由は彼らの思いあがりでした。　世尊に対しての不満・不信の行動ではありませんでした。
　悟りを得た自分は、もう学ぶ必要が無いという、自分勝手で我儘で只の勘違いだったのです。
　　　　　　　　　あ〜よくあるよね、勘違い・気ちがい・寝ちがい・腹ちがい　……お前も勘違い多いのだ　……スイマセン
　彼らは、ながら的・義理的に説法会せっぽうえ　に参加していただけでした。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　義理的にとは、世尊に失礼なことだ　……拳ふりあげるボサツマン……
　　さきほど、世尊が指摘した増上慢の人々とは、彼らのことでした。　
　世尊は、彼らの驕慢きょうまん　な態度・増上慢な心を見抜いていたので、彼らを引き止めなかったのです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　……さすが世尊、去る者追わず、来る者拒まず……ふむ！
　世尊は、無理に引き止めると逆効果になるので、山の如く動かず・沈黙を貫いていました。
　　　　　　　　　　　　　　　　　武田信玄・風林火山/ 動からざること山のごとし　……　うむオイラも良いこと言うねえ〜
　この人たちも必ず　本当の教えを求める時が来ることを、世尊は確信していました。
　その時が、仏の真理の教えを説き、この大衆たちを救う時なのだ、と考えていました。
　一見、冷淡と思える世尊ですが、ここに、世尊の大きな慈悲心が顕われています。
　世尊は、この大衆たちのことを、忘れてはいませんでした。
　なぜなら、このあとの五百弟子受記品で、この五千起去の弟子にも、成仏証明を出しています。
　　
　増上慢の人々が去った法座は、心一途いちず　な人々ばかりになりました。
　世尊、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　優曇鉢崋　うどんばつげ　は、想像上の花で、日本のフキノトウに似ているらしい
　「大衆のみなさん、三千年に一度咲くと伝わるー優曇鉢崋ーの花は、まづ見た人はおりません。
　　これと同じく、これから説く尊い教えも、衆生にとっては　めったに聞ける教えではありません。
　　この法座に残った皆さんは、最高に素晴らしい機会に巡り合えたのです。
　　なぜなら、これから私が説く教えは、諸仏が今こそ説くべきだと判断した時のみ　説く教えなのです。
　　舎利弗しゃりほつ　よ、仏が説く教えはすべて真実の教えです。嘘うそ　や偽りいつわり　はありません。
　仏は教えを説く時、因縁説とか、譬え話とか、理論優先とか、さまざまに説き方を変えて説くのですが、
　　実は、仏は、ただひとつの大事なことを　説いているのです。
　　その大事なこととは　ー人間は何のために生きるのかを　本当にわきまえるー　ということです。
　　この大事なことをシッカリと掴むならば、衆生は皆仏に成り幸福を得ることができるのです。

　　つづけますよ、よく聞くのですよ。　では、この大事をどうしたらシッカリと掴むことができるのか？
　　それは、衆生一人一人の内面にある仏性　ぶっしょう　（仏の心）を、知ることから始まるのです。
　　衆生は、まづ最初に、自分の内面も仏と同じ本質であることを、理解しなければなりません。
　　これを理解した衆生は、清浄な心を取り戻すことができます。
　　つまり、衆生の心に今まであった自己本位の小さい考えが、スッパリと洗い流されて消えてしまうのです。
　
　　清浄な心をもつ衆生だけが、仏の教えを素直に聞き実行できるのです。　これは真実なのです。
　　心が清浄になった衆生にのみ、仏は教えを説きはじめるのです。
　　衆生に仏は、まづ、�@・仏知見　ぶつちけん　（仏の智慧）を開かせます。次に、�A・仏知見ぶつちけん　を示します。
　　　ー仏の眼・仏の智慧で見た世の中の真実の状態ーを　示し教えます。
　次に、�B・仏知見ぶつちけん　を悟らせます。ー仏の智慧を得た衆生は、苦悩の無い安穏な境地に到るーと悟し教えます。
　　�B・まで進んだ衆生は、ますます懸命に修行に打ち込むようになります。
　　懸命に修行に打ち込む衆生のレベルに応じて、
　　ついに仏は、精進しょうじん　を貫き通して懸命に修行の末に、ようやく到達できる至極しごく　高い境地である
　　�C・仏知見の境地に導くのです。
　仏は、すべての衆生に仏知見（仏の智慧）を会得して欲しいので、
　　�@・開かせ　�A・示し　�B・悟らせ　�C・導き入らせる　という順で、衆生を教化していくのです。
　　仏はこの世に　ー人間は何のために生きるのかを本当にわきまえて欲しいー　願いで、出世しゅっせ　しているのです。
　　故に、諸仏如来は　ただ菩薩のみを教化したもうのです」と、説きました。
　ボサツマン、大きな声で抗議
　「そんなバカな、ただ、菩薩のみを教化するって…、声聞・縁覚・比丘・衆生は、教化しないのですか。
　　皆・世尊の弟子ですよ。　今迄の説法と矛盾してます。　納得できません、説明を求めます」。
　　　つづく　　　　　　　　　　　　　……　世尊に抗議するなんて、ボサツマン、お前の頭おかしいぞ　……