釈尊の出宮 (2) 二度目の庭園散歩
父王は、憂鬱な心に支配されてしまった悉多太子を、心配して 悉多太子の心が楽しくなるようにと、最大に美しく室内を飾り、
美しい若い女性たちの舞踊や管弦・かんげん・の集いなど、毎晩、いたれりつくせり・豪勢に大饗宴の夜会・やかい・を催しました。
しかし、悉多太子は、喜ぶ様子はまったくありません。
オイラ、美しい若い女性・大歓迎です、オイラなら、すぐ楽しくなっちゃうのに ‥‥‥ボサツマン
悉多太子は、自分の知らない世界、自分の求める世界は、庭園の散歩にヒントがある、と確信するようになっていました。
又、王子は、庭園を散歩したいと 父王に願い出ました。
父王は、今度は絶対に、王子が汚れた世界を見ないように、よりいっそう、警戒を厳重にして、王子の庭園散歩を許可しました。
この二度目の庭園散歩には、警備専門の官吏たちが多く付き添って、釈尊の自由に散歩できない有様でした。
しかし、今度も天人が化けて 庭園内にひょっこりと姿を現わしました。
今度は烏・カラス・ではなく、老人の姿に化けて 太子の前の現われたのでした。
やせ細り骨に皮が張り着いただけの 痛々しい姿です。 顔は、渋柿・しぶがき・の皺・しわ・だらけの醜い表情なのです。
そんな老人が、ひょっこりと太子の目の前に現われたのでした。
怪しい者は、誰一人として庭園内に入れないように父王が、命令していたのでしたが、天人が空中から舞い降りてきたのです。
産まれてから今まで、元気で美しい人間ばかりを見て育ってきた太子は、初めて見る老人を見て、口はアングリ・目はパックリ。
ーあれはいったい何というものじゃ?ーと、家来に聞きました。 家来は、あれは老人でございます、と答えた。
ー老人とはどこに住んでいるのじゃ? ずいぶんと醜いが、あれは生き物なのか?ーと、太子は家来に聞き返した。
家来は、老人も人間でございます、人間は皆、年とったらああいうふうになるのでございます、と答えた。
ーすべての人間は皆、あんなに醜くなるのか?ー。 さようでございます、すべての人間は皆 老人になるのです。
家来のこの言葉を聞いた太子は、たいそうビックリいたしました。
人間とは皆、年がたてばあんなに醜く悲惨な格好になるものなのか?‥‥太子の心は暗くなってしまいました。
あんな醜い皺・しわ・だらけの皮膚にならず、足腰も曲がらず、常に若く逞しく、美しい人間のままで生きていく道はないだろうか?
と、太子は考えたのでした。
すべての人間が、皆、あんなに醜くなるというのは 大変恐ろしいことである、それを避けるにはどうしたら良いのだろうか?。
この、人間としての最大の課題に、太子は直面した太子は、この後、ますます心が憂鬱になるばかりでした。
さあ、大変なことになりました。
太子の憂鬱症・ゆううつしょう・が長びけば、人相観・にんそうみ・の言う通り、宮殿を飛び出し、出家するかもしれません。
太子の憂鬱症を直す方法は只ひとつ、この世はものすごく楽しいものばかりであるという考えに変えることしかありません。
父王はさっそく、国中から選りすぐった美しい夫人たちを太子の部屋に集めました。
おいしい御馳走を ふんだんに並べ 琴を弾じて ありとあらゆるこの世の歓楽・かんらく・を毎夜・毎夜、行いました。
しかし、太子は いっこうに喜びません。 むしろ日に日に悩む姿が深くなっていくばかりです。
だから〜オイラだったら、すぐに憂鬱症はなくなりますって‥‥‥え!うるさい‥‥すいません、ボサツマン
つづく 三度目の庭園散歩