世尊、つづける
「自分たちの宮殿を差し出す決意をした梵天王たちは、大通智勝如来の前で合掌して、言いました。
私たちは、天上国の梵天ぼんてん です。前々から、仏をご供養申しあげる気持ちを強く抱いていました。
そして只今ー天上界の静寂で安穏な生活ーを捨て、如来を供養する目的で、ここへ参上し奉りました。
仏ほとけ さまは、なかなか世にお出になるものではありません。 また、お出になられたとしても
私どもが仏ほとけ さまにお会いできるご縁は たいへんに限られていて 難しいことでございます。
仏さまは、限りない功徳を具えておられ、生命ある一切のものを苦から解放し、お救いになられます。
天上界・人間界に住む生命ある一切のものの大師 だいし として、衆生を憐れみ、導き教えくださいます。
導きを受けた諸々の衆生たちは皆、大きな安心と尊い利益 りやく を、授かることができます。
心から感謝の気持ちいっぱいで参上し奉りました。 お会いできて、本当に嬉しく存じます。
私たち梵天は、前世からの福のお陰で立派な宮殿を授かり、静寂で安穏な生活を営んでおりました。
今、心からの感謝の気持ちを表わし、私たちの宮殿を 仏さまに捧げたいと思います。
どうぞ、私たちの心をお察しくださいまして、お受けとりくださいと、申し上げました。
「天上界」:「天人の寿命」:「人間界」
梵天王たちは、天上界で極楽の如く、毎日、楽しく暮らしていても、
仏の衆生済度しゅじょうさいど を手伝うというー使命心ーを、失うことはありませんでした。
天上界に住む梵天王たちが、仏を供養するために ー静寂で安穏な生活ー をあっさりと捨て、
人間界に降りて来たというのは、仏の説く最高の教えであるー妙法華の教えーを聞くためなのです。
天上界の安穏の境地で、長い寿命を授かり、悠々とした毎日を楽しく暮らす梵天たちにも
苦しむ衆生を救済したいと願う心は、過去世かこせ の代から脈々と受け継がれていたのです。
天上界に住む梵天王たちが、あえて、天上界の安楽な自分の宮殿を投げ捨ててまで、
人間界に降りてきて、仏の教えに帰依したのは、仏界を目指す固い心の現われなのです。
仏の道=慈悲心の道とは、人の役にたつ道・人を喜ばせる道・人を苦労から救う・創造的行動なのです。
仏界を目指し修行つづける梵天王は、自らが勧んで努力する道を、身心しんしん 共に理解していました。
慈悲心から出る創造的行動はー真理に通じる深い喜びーであり、仏の悟りに達する道なのです。
天上界に住む者も、人間界の衆生の救済を行う努力をしてこそ、はじめて、本当に成仏できるのです。
自らの力で衆生済度しゅじょうさいど を行うことが、自分も仏界の悟りを得る道であることを、
衆生の皆さんも、充分理解できたことと思います」。
☆日蓮聖人の言葉: 極楽百年の修行は、穢土えど(娑婆世界)1日の功に及ばず‥‥ 合掌 「響くことば」
つづく