世尊
 
「では
業について説きましょう。 業ごう とは人間が行うすべての行為をいいます。
  そして
その人間の行為には 必ず結果が生じるのです。
  今
皆さんが暮らす現実世界に顕われているすべては過去に行った自分の ごう の結果なのです。
  たとえば
ある衆生が来世にて妙法蓮華の経受持したり読誦どくじゅ したということは、
  その来世の衆生が過去世に行った善行が
因縁となって積み重なった結果、
  その衆生の来世に
顕現 けんげん したということです。
  つまり
過去世の行為善行来世に法華経の教えを学ぶという結果として顕れたことなのです。
  これを
仏縁 ぶつえん といいます。
  衆生に仏縁が顕れることは
果報 かほう 顕れなので、衆生にはとても嬉しい有り難いことなのです。
  このように
行為にともなう結果があとに顕わす現象 ほう といいます。

  業の思想の基本原理は
自分の業
ごう は自分で刈り取るです。 ひとつの例を述べましょう。
 自分は
自分から望んでこの世に誕生したのではないの
だから
 頭が悪いとか
性格が悪いとか言われても自分のせいではない。
 自分の頭脳と身体は
父母から受け継いだのだから
自分の責任では無いと考える人がいます。
  この言い分においての半分はごもっともなのだが残りの半分は考え違いがあります。
 半分は先祖や父母の責任で
あとの半分は自分自身の責任というのが正確な答えなのです。
 半分が自分自身の責任というのが
スッポリと抜けた考え不足の言い分なのです。

 つまり
少年少女時代を過ぎてからの自分は自分の現世でのごうーなのです。
 自分の半生の業の結果だから
半分が父母の責任で
半分が自分の責任ということです。
 業の基本原則は自分の業ごう は自分で刈り取るです。
 例えば、愚痴
ぐち が多い人やイライラして怒りの気持ちを場当たり的に八つ当たりする態度の人は、
 悪くなったのは自分のセイじゃない
あいつが悪いのだ
社会が悪いのだと考える人に多いのです。
 しかし
何もかもすべてが
自分の過去の業の結果と考えるならば腹も立たないのです。
 
 ごう をよく理解してすべての現象は自分の過去の業の結果という気持ちになれば、
 心がスッキリ軽くなって、未来に希望が湧いてくるのです。

 
業による結果があとに残す現象 ほう といいます。ですから
 
ふくほう を望む衆生つまり良い現象を望む衆生は善業ぜんごう をどんどん積むとよいのです。
 善業を積めば積むほど
素晴らしい福報ふくほう が顕われその衆生の人生はどんどん良くなるのです。
 すると
さらに善業ぜんごう をどんどん積もうという気持ちがさらに高まり益々善業に努力するのです。
 すると、人生がまたまた良い方に加速していくのです。 これは宇宙の法則です
真実なのです。
 この法則は
その衆生の今生こんじょう (1回の人生)だけではありません。
 この世の努めを終えた後の
来世においてもこの法則は当てはまるのです。
 ですから
自分の生命が生きる来世の世界についても明るい希望をもつことができるのです。

 浪曲に
 親の因果が子にうつり‥‥というクダリ(文句)が、あるように、
 自分の業は
自分自身のことだけでなく子々孫々ししそんそん までにも影響が及ぶのです。
 衆生の皆さんも
自分自身のが良い報を生むように自発的に善業を多く積むようにしましょう。
             リンカーンの言葉 人間は、自分の顔に責任をもたねばならない     「響くことば

 皆さん
ごう というものを理解できましたねつづいて宿業 しゅくごう を説きます。
 
宿業しゅくごう とは人間の生命が無始の過去から生と死を繰り返しながら出来あがったごう のことです。
 つまり遠い過去世からの自分の行為や経験などを全部ひっくるめたのことなので、
 宿業しゅくごう 業のなかでも、とくに深遠
しんえん で実に複雑なものなのです。
 人間の行為
どんな些細 ささい なことでも身体や心や環境に必ず影響を及ぼします。
 そして
必ず痕跡 こんせき という結果を残すのです。
 
例えば日常の暴飲暴食などの悪い行為悪業病気を引き起こす原因となりますが、
 適度の運動は
身体を鍛えて丈夫な身体を維持します。 これらはすべて業の結果なのです。

 また
心に残った痕跡は記憶や知識や習慣や知能や性格などに 大きな影響を与えます。
 とくに
日常の気持ちの明るさや暗さ心の持ち方などは身体に強い痕跡を残すことが多いのです。
 心配事が常に心にあると
身体が元気ありません。心が明朗のときは身体が元気で大きく笑えるのです。
 故に
いつも落ちつきのある福々しい柔和な明るい表情自分で意識し保つことが大事です。
 衆生の日常生活では
自分から周囲の人々へ好印象を与える努力をすることが大切なことなのです。
 人間の心の痕跡の大半は心の表面に残りますまた一部心の奥底潜在意識として残ります。
  又
自分が気がつかないうちに外界から受けた影響や人類の誕生の歴史以来(まだ生まれない前)
  経験したことによる影響も
僅かであるが潜在意識の底に残っているものなのです。
  衆生の心の奥底には
何十万年も前のことさえも 潜在意識僅かながら残っていますので
  数世代前の近い先祖の行為や考えや心の状態の影響は
なおさら強く残っているのは当然です。
  精神医学の分野の説では、
  たとえば
トカゲや青ダイショウのようなものを見ると直接害を加えないようなものでも、
  なんとなく気味悪く恐ろしく感じるのは
地球上で爬虫類が蔓延っていた何十万年か前の時代に、
  人間がいじめられたり
食べられたりした記憶が潜在意識に残っているからといわれています。
  こういう理由があるので
人間の理性とは別に恐ろしいという感情を潜在意識で感じるのです。
  ま
なかには抵抗を感じない人もおりますが‥‥
  業の結果である業報ごっぽう 暗いマイナス的に思わずに明るくプラスに考えることが大事なことです
   次には一念三千いちねんさんぜん の教えを説きましょう」。
    つづく             一念三千の教え