環境&社会問題
「田中正造が現代に生きていたら何を考え、何を問題提起しただろうか?」…という視点に立って、現在、惹き起こされている様々な問題を取り上げてみました。皆さんも一緒に考えてくださいね!
環 境 ホ ル モ ン

 環境ホルモンとは…
 生活環境中の化学物質が体内に入ると内分泌機能の変調を生じさせホルモンのような働きをして奇形の発生や脱雌性化・脱雄性化など、主に生殖作用などに影響を与える。これらの化学物質が環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)と呼ばれている。
 この因果関係を究明するため、環境庁では「外因性内分泌撹乱化学物質問題に関する研究班」を設置、平成9(1997)年6月に中間報告を公表した。環境ホルモンについては、その実態に不明な部分が多く、現在多くの調査研究が進められている。
 その特徴を列記すると…

  • 環境中に存在する様々な化学物質が、野生生物や人に対して、あたかもホルモンのような作用を示すことを環境ホルモンという。
  • 野生生物への主な作用は、奇形の発生、脱雌性化・脱雄性化等が指摘されている。
  • ヒトへの影響は、膣癌・乳癌の増加、精子数の減少による不妊症の増加が疑われている。
  • ホルモンのような作用をする物質としては、ダイオキシン類をはじめ、DDT、有機スズ化合物、ビスフェノールAなどが疑われている。
  • ダイオキシンとPCBは、環境ホルモン界をリードする最悪な二大巨頭。
 環境ホルモンと疑われている化学物質(一部)…
化学物質名用    途備    考
ダイオキシン類   化学物質の合成過程や廃棄物の燃焼過程で非意図的に生成される化学物質(プラスチックの燃焼時などに発生)
ポリ塩化ビフェニール類熱媒体、ノーカーボン紙材料、電気製品(絶縁体)化審法の第1種特定化学物質
ヘキサクロロベンゼン殺菌剤、有機合成原料化審法の第1種特定化学物質
ペンタクロロフェノール木材の防腐剤、除草剤、殺菌剤農薬登録は平成2年に失効
シマジン除草剤(トリアジン系)農薬登録、水濁法、地下水・土壌・水質環境基準、水濁性農薬、廃掃法、水道法
ディルドリンシロアリ駆除剤(有機塩素系殺虫剤)化審法の第1種特定化学物質
マラソン(マラチオン)殺虫剤(有機リン系)、輸入小麦・輸入米に残留の歴あり農薬登録、食品衛生法
DDT殺虫剤1981年化審法1種、1971年農薬失効・販売禁止、食品衛生法、POPs
メソミル殺虫剤、小松菜・レタス・白菜に残留農薬登録、毒劇法
トリフェノルスズ船底塗料、漁網の防腐剤1990年化審法2種、1990年農薬失効、家庭用品法
ビスフェノールAポリカーボネット樹脂、エポキシ樹脂の原料、PC製食器、哺乳瓶等に使われる学校給食用の食器で問題化
ノニルフェノール
4-オクチルフェノール
界面活性剤の原料、業務用合成洗剤の分解生成物海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律
フタル酸ジ-2-エチルヘキシルセロハン、染料、殺虫剤の製造、プラスチックの可塑剤として使用、接着剤、レザー、印刷インキ、安全ガラス、雑貨(塩ビ、アクリル樹脂製品)、織物用潤滑油などに使用水質関係要監視項目
フタル酸ジ-n-ブチル接着剤、レザー、印刷インキ、安全ガラス、セロハン、染料、殺虫剤の製造、雑貨等に使用海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律
ベンゾ(a)ピレンコールタール処理、石油精製、コークス製造、灯油処理、発電などの製造過程からの発生煙草や自動車燃料の燃焼などの生活上からも発生する非意図的生成化学物質
フタル酸ブチルベンジル床壁用タイル、燃料用、ペースト用、人造皮革、室内装飾品などに使用海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律
  • 備考欄の化審法とは、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」。水濁法は「水質汚濁防止法」。毒劇法は、「毒物及び劇物取締法」。家庭用品法は、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」。廃掃法は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の略。
  • 表記の化学物質のほか、鉛、水銀、カドミウムなども疑われている。
  • POPsとは、「残留性有機汚染物質」を意味する。
  • 環境庁報告書を参照
 野生生物への影響事例…
生 物場 所内分泌かく乱作用推定される原因物質
腹足類エゾバイ科(複数種)シンガポール、インドネシア、マレーシア雌のインポセックスTBTの可能性が高い
イボニシ、レイシガイ(アクキガイ科)日本沿岸雌のインポセックスTBT、TPTと断定
魚 類サケ属北米五大湖甲状腺の過形成(疾病率100%)雄の二次性微欠如、早熟未特定
ホワイトサッカー(サッカー科)北米五大湖(スペリオル湖)成熟遅延、生殖巣縮小、加齢による生殖能の低下、雄の二次性微欠如、血中エストラジオール・テストステロン濃度低下未特定
カダヤシ(メダカ目)米国フロリダ州雌の雄化(臀鰭伸長)未特定
ローチ(コイ科)、ニジマスイギリスの河川雄のビテロジェニン血中濃度上昇、精巣発育遅延ノニルフェノールと推定。ピルに含まれる合成女性ホルモン関与の可能性も
コイ多摩川雄のビテロジェニン血中濃度上昇、精巣発育遅延ノニルフェノールなど複数の化学物質が関与している可能性が高い
マコガレイ東京湾雄のビテロジェニン血中濃度上昇未特定
爬虫類ミシシッピーワニアポプカ湖(米国フロリダ州)雄:ペニス矮小化、血中テストステロン量低下、精巣機能不全 雌:血中エストラジオール濃度上昇、卵胞での異常卵・多卵、卵巣の退行 幼体:低孵化率、死亡率上昇湖内に流入したDDTなどと推定
鳥 類ヤマシギ、ハイタカ、ミサゴ、ミヤマガ、ラス、ヨーロッパヒメウなどイギリス、北アメリカ産卵数減少、繁殖期遅延、産卵失敗、卵の小型化、卵殻薄化、破損卵増加、卵内での死亡増加などDDT、DDEと断定
アメリカオオセグロカモメサンタバーバラ島(米国カルフォルニア州)雄:雌化、個体数減少 雌:レスビアン個体出現、生殖器の退行未特定
セグロカモメ北米五大湖甲状腺異常(肥大、上皮組織過形成など)DDTの可能性
ハクトウワシ北米五大湖低孵化率PCBまたはDDE(DDT)の可能性
アジサシ、カモメ北米五大湖雌の両性生殖器官具有化PCB、DDTとの説
哺乳類カワウソ、ミンク北米五大湖繁殖激減餌魚中のPCBの可能性が高い
フロリダヒョウ米国フロリダ州雄:精子数減少、潜在精巣症、血中エストロジェン量増加エストロジェン様作用をもつ農薬との説
アザラシオランダ個体数の減少、免疫機能の低下PCB
シロイルカカナダ個体数の減少、免疫機能の低下PCB
ヒツジオーストラリア(1940年代)死産の多発、奇形の発生植物エストロジェン(クローバ由来)

 ※ 通産省報告書、環境庁報告書、日本水産学会講演要旨集より作成

〔2000/12/19〕

 参考になるWebサイトのリンク…



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