吉夏社(kikkasha)
【哲学・思想・教育】 |
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教育者アラン
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アラン読解に最適の一冊 ●哲学とは何か、教育とは何か、科学とは何か、宗教とは何か。オリヴィエ・ルブールなどと並ぶ現代フランスのアラン研究の第一人者が、教育、宗教、政治、フロイト精神分析、科学などに対するアランの立場から、その広範な思想を縦横に解説する。アラン読解入門に最適な一冊。 (表題作の原著は一九六四年刊行) |
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著 者 |
ジョルジュ・パスカル Georges Pascal 一九二二年生まれ。現在、グルノーブル大学名誉教授。哲学・教育哲学専攻。アランの孫弟子であり、フランスのアラン友の会の会長も務める。オリヴィエ・ルブールと並ぶアラン研究の第一人者。 主な著書に次のようなものがある。 『アランの哲学』『アランの思想を知るために』『カント』『デカルト』『大哲学者のテキスト』『哲学必携』。 |
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目 次
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教育者アラン 序 第一章 アランの見る子供の世界 1 子供の状況 2 幼少年期の発想様式 第二章 人間形成 1 教育学の基礎 2 一般教育学 3 教育技法 アランの独創性 アランと宗教 フロイトとアラン 宗教問題と教育 市民哲学者 アランと科学 註 アラン著作略号一覧 訳者解説 |
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訳者解説
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……アランとベルクソンの秩序に対する考えはまったく同じである。ただ現われ方が違うだけである。アランは交通信号の例によって秩序のもつもっとも端的な性格を示している。彼は戦争反対であったのにひとたび戦争が始まると、わざわざ一兵卒として志願し、最前線で民衆出自の兵たちとともに戦ったのである。彼には有名な「軽蔑は従うための理由である」、「従いつつ軽蔑する、これ王者なり」、「身体で従い、けっして精神では従わないこと。完全に譲ること、と同時に完全に抵抗すること」という言葉がある。これらの言葉はアランの中に始終出てくる。これこそ秩序の維持と精神の自由の維持との秘訣であり、革命家たちのもって銘ずべき逆説である。 もう一つアランとベルクソンの考え方の大きな違いを示す例をあげておこう。それは選挙制度に対するものである。アランはこの「市民哲学者」(本書収載)でも述べているとおり、「比例代表制」をさけ「直接選挙」を取るのであるが、ベルクソンはまったく逆なのである。それはベルクソンが「大衆」の判断を信用していないからである。ベルクソンは民主主義の問題はエリートの育成と、彼らを指揮のポストへ参加させることにあるとし、不当な特権を廃止しつつも「新しいアリストクラシイ」を教育の目標に置く。これはアランの教育理念の逆である。 訳者・橋田和道(翻訳業) |
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書評・紹介
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『内外教育』(時事通信社)2000年6月2日号(書評) 《豊かで厳正な教育観を読みなおす》 アランはフランスの哲学者で教育者でもある。十九世紀末からニ十世紀にかけて活躍し、他方面にわたるテーマについて論じた。そのテーマは教育はもちろんのこと、宗教、政治、精神分析から科学、文芸などにわたっている。彼は、問題と正面から向き合い、考えることを楽しんだ。現代のような激動の時代の風潮と比べると、アランの考え方はゆったりして、繊細に見える。しかし、それを支えている論理は、驚くべき厚みを持っている。そのために本書は、現代の風潮を批判的に映し出す鏡のような働きをする。教育論として見ると、アランが重視するのは判断力である。その根拠は、約四十年にわたる教職経験に裏打ちされており、彼が生徒とどのように向かい合ったかを想像させ、ほほ笑ましい。 【堀内守氏評】 『聖教新聞』2000年7月12日(書評) 《精神形成の哲学者を多角的に》 アランにとって真の教育の目的とは、万人に「精神」を形成し、「啓発された市民」を育成することである。だから常に、教育方針が精神形成に適しているかどうかという点で教育を論じる。…教育は自分の本性を生かし、その本性を支配することを教え、それは「野蛮状態から救い出す第一歩」であると語る。「人間らしいところにまで自分を高めない者は、いつまでたっても気分と本能の奴隷」なのだ。彼の求めた、本当の教育はすべて、同時に道徳教育であり、そして培った自由な精神こそ「最高の人間の価値」なのである。アラン理解のための好個の書である。 佐藤学編『教育本44』平凡社(論考) 《「自由な意志」を追求する深く確かな思索》 著者ジョルジュ・パスカルは、アランの孫弟子であり、教育者としてのアランの思想の真髄を彼のプロポの中に見い出して、教育に関するアランの思索を哲学的に探究している。もちろん、アランの思索の研究はアラン自身の著作を読むことを前提としているが、パスカルの『教育者アラン』は、アランの教育論をその骨格に即して明快に提示しており、アランの原著を読まなくとも、アランの思索の魅力を堪能しながら教育の見識を高めることができる好著である。 ……パスカルは本書において、アランの含蓄のある思索を中実にかつ生き生きと再現している。アランの随想にちりばめられていた宝石のようなフレーズが、本書ではいくつかの織物の図柄に組み込まれて再提示されている。アランの原著を読むのも大切だが、パスカルとの対話を通してアランの思索の襞に触れるのも、それに劣らず刺激的である。 【佐藤学氏評】 |
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リンク |
l'Association des Amis d'Alain(アラン友の会) |