吉夏社(kikkasha)
【ドイツ文学・芸術・評伝】 |
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E・T・A・ホフマンの世界
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空想と芸術家 ●鏡と自我、機械学、光学、自動人形、世界劇場、変身遊戯、聖者と愚者など、魅力的なモチーフに溢れるドイツ・ロマン派作家ホフマンの作品世界。怪奇な幻想と鋭い風刺をもった作品を描きながらも、同時に音楽家、批評家、法律家でもあったこの奇才の波瀾にとんだ生涯と諸作品の分析をコンパクトにまとめた一冊。略年譜も収載。 (原著は一九八一年刊行) |
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著 者 |
エーバーハルト・ロータース Eberhard Roters 一九二九年、ドレスデンに生まれる。ベルリン大学で哲学を学び、五六年に博士号を取得。七五年から八七年までベルリン美術館館長、八三年から八六年までベルリン芸術アカデミーの造形芸術部長などを務める。九四年、歿。 主な著書には次のようなものがある。 『バウハウスの画家たち』『ヨーロッパの表現主義者たち』『無からの創作-ダダの瞑想』『19世紀の絵画―テーマとモティーフ』『ベルリン1910-33』監修/邦訳、岩波書店。 関連書 R・ザフランスキー『E・T・A・ホフマン』法政大学出版局 吉田六郎『ホフマン-浪漫派の芸術家』剄草書房 木野光司『ロマン主義の自我・幻想・都市像-E・T・A・ホフマンの文学世界』関西学院大学出版会 |
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ホフマンについて |
ホフマン E.T.A.Hoffman 一七六六年、ドイツのケーニヒスベルクに生まれる。ドイツのロマン派文学を代表する作家の一人。大学で法律を学び、プロイセンの司法官となるが、戦争で失職。その後、画家、音楽教師、作曲家、批評家、小説家として各地を転々とする。怪奇な幻想と鋭い風刺を持つ、特異な作風が特徴。 主な著作には、後年精神分析家フロイトが題材として取り上げた『砂男』、森鴎外の翻訳でも知られる『スキュデリー嬢』、夏目漱石に影響を与えたとされる『牡猫ムルの人生観』などをはじめ、『黄金の壺』『悪魔の霊液』『ブランビラ王女』などがある。 音楽ではモーツァルトに傾倒し、十曲をこすオペラのほか、ミサ曲、ソナタやロンドなどのピアノ曲、交響曲などを残した。 ホフマンの著作 『ホフマン全集』創土社 『黄金の壺』『ホフマン短編集』以上岩波文庫 『ブランビラ王女』筑摩文庫 『くるみ割り人形とねずみの王様』河出文庫 『ホフマン1、2』国書刊行会など |
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目 次
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はじめに 1 火の精ザラマンダー 2 悪魔は万物の上におのれの尻尾をのせている 1 ケーニッヒスベルク時代 2 グローガウ時代 3 ベルリン時代 4 ポーゼン時代 5 プローク時代 6 ワルシャワ時代 7 再びベルリンへ 8 バンベルク時代 3 音楽の精神から現象世界の誕生 4 楽長ヨハンネス・クライスラー 5 ドレスデンとライプチヒ 6 『黄金の壺』 7 分裂 8 機械の原理 9 ベルリンのビーダーマイアー 10 鏡-自我 11 不和 12 ホフマンとわれわれ ホフマン略年譜 訳者あとがき 参考文献 |
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訳者あとがき
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……ロータースによれば、それでも単に現代社会を科学的に分析するのはホフマンの本務ではなく、ホフマンは現代生活においても不可欠である空想を駆使した先駆的文学を創造し、そのためにこのようなモンタージュなどの新しい手法を作り上げたのだとしている。ロータースは本書の最後でこれに関連して次のように述べる。「合理的思考の理性は、その持続的再生のよすがとして、内面の形象世界の深奥から供給される空想を必要とする。それはちょうど、空想が自ら発展するための尺度を獲得するために理性を必要とするのと同じである」。ホフマンはまさにこの点においても、内面と外面の相克を克服する理想的作家と言えるのではないだろうか。 訳者・金森誠也(元日本大学教授) |
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書評・紹介
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bk1 書評 《高名な美術史家が照らしだす「マルチ」なホフマン》 本書はコンパクトながら、この作家の生涯をたどりながら、あいだに重要な作品についての解説をおりこんで進行してゆく。時代の流れ、風潮と、そのなかを生きてゆく作家ホフマン。そしてその生から生み落とされる作品。その作品のなかに、時代を読み込み、また時代への照射を読む。…もちろんホフマンの作品を知っていればよし、なんとはなしに興味を持っているという人でも、良き入門書になる本である。 【小沼純一氏評】 |
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