吉夏社(kikkasha)


【ドイツ文学・批評】


カバー写真

カフカ=シンポジウム

クラウス・ヴァーゲンバッハ/マルコム・パスリー他

金森誠也

四六判・上製・256頁
定価
本体2500円+税

ISBN4-907758-13-8


在庫あり







新しいカフカ研究に
大きく貢献した重要研究

●今なお、数多くの謎を残しているカフカの作品とその背景。本書は、実際の草稿や印刷物などに従いながら、作品中に秘められた意図、現実世界との関連、全作品の成立時期、生前の全発表物、同時代人の評価などを、実証的に詳述していく五人の指導的カフカ研究者による意欲的試み。
(原著は一九六五年刊行)





著 者  

クラウス・ヴァーゲンバッハ
Klaus Wagenbach
 
ベルリン生まれ。出版業に関わるかたわら、フランクフルト大学などで、ドイツ文学や哲学を学ぶ。一九六四年にクラウス・ヴァーゲンバッハ書店を設立。ブロート版カフカ全集の編集者の一人。主な著書に『フランツ・カフカ』『若き日のカフカ』『カフカのプラハ』などがある。

マルコム・パスリー
Malcolm Pasley
 元オックスフォード大学文学部教授。カフカの草稿の管理人。新改訂版カフカ全集の編集者の一人。

ユルゲン・ボルン

Jurgen Born
 ヴッパータール大学プラハ・ドイツ語文学研究所所長。ブロート版カフカ全集、および新改訂版カフカ全集の編集者の一人。

パウル・ラーベ

Paul Raabe
 オルデンブルク生まれ。哲学博士。ドイツ文学ならびに図書館学の権威として知られている。著作としては、図書館史、文献資料収集史に関するものが多く、またカフカを含むドイツ表現主義運動についてのいくつかの重要な研究がある。

ルートヴィヒ・ディーツ
Ludwig Dietz
 文献学者。二種類ある「ある戦いの記録」の草稿を併記した『並列版・ある戦いの記録』をブロートと共に編集した。



目 次  

本書について

フランツ・カフカとフランツ・ブライ――再発見されたカフカの書評(パウル・ラーベ)
カフカにおける三つの文学的神秘化(マルコム・パスリー)
 『十一人の息子』
 『家父の気がかり』
 『鉱山の来客』
カフカ全作品の成立時期(マルコム・パスリー/クラウス・ヴァーゲンバッハ)
 年代記
 付録――八冊の青色の八つ折り版ノートの記述、順序、執筆時期
 成立時期一覧
一九二四年までのカフカの印刷物(ルートヴィヒ・ディーツ)
フランツ・カフカと批評家たち(ユルゲン・ボルン)
 『観察』
 『火夫』
 『変身』
 『判決』
 『流刑地にて』
 『田舎医者』
カフカの城はどこにあったのか?(クラウス・ヴァーゲンバッハ)

長篇小説『城』の章区分について(マルコム・パスリー)

訳者あとがき



関連書  
 本書に収録の、カフカの生の草稿に対する分析を扱った「カフカ全作品の成立時期」や「長篇小説『城』の章区分について」などについて興味をお持ちの方は、ぜひとも次の文献も併せて読まれることをお薦めいたします。『カフカ=シンポジウム』の成果も踏まえつつ、カフカにおける「編集文献学」の現代的水準が示されています。
・明星聖子『新しいカフカ――「編集」が変えるテクスト』慶応義塾大学出版会、2002年。

 
また、本書の「カフカにおける三つの文学的神秘化」で扱っている『十一人の息子』についての解釈ですが、それとは異なった見解があることを次の文献が紹介しています。
・ベルンハルト・ベッシェンシュタイン「十一人の息子」、クロード・ダヴィッド編『カフカ=コロキウム』法政大学出版局、1984年、に収録。
 このパスリー論文には『家父の気がかり』についての考察も含まれていますが、ドイツの文芸誌『アクツェンテ』のカフカ特集号(1966年)に掲載された、このテーマをめぐるパスリーとヴィルヘルム・エムリヒとの論争が、次の文献に訳出されています。
・ヴィルヘルム・エムリヒ『カフカの形象世界』審美社、1973年。




書評・紹介  


『出版ニュース』2005年8月上旬号(紹介)
新改訂版カフカ全集の編集者であり、生涯をカフカ研究に捧げたマルコム・パスリーをはじめ5人の研究者によるカフカの網羅的研究。
カフカの作品とその背景については今なお、数多くの謎に包まれていると言われるが、ここではカフカの実際の草稿や創作ノート全般にわたって詳細な調査・研究を行ない、作品の成立時期、作品中に秘められた意図、現実世界との関連、同時代の批評家による評価など、数多くの疑問が解明されてゆく。例えば『城』の場所について、『十一人の息子』がそれぞれどの作品を指すか、またカフカの2番目の婚約者についての謎など、知られざるカフカ像とその作品世界が見えてくる。



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