吉夏社(kikkasha)
【フランス文学・芸術・批評】 |
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シュルレアリスムと聖なるもの
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現代詩と聖社会学 ●文学者や芸術家たちにとって、シュルレアリスムは「聖なるもの」の次元を社会に導入するための運動であった。ジョルジュ・バタイユやミシェル・レリス、ロジェ・カイヨワらに続く、聖社会学的視点からシュルレアリスム詩の生成や機能を分析する、アンドレ・ブルトンも絶賛したシュルレアリスムの重要文献の翻訳。 シュルレアリスム詩、そこには「聖」の社会/宗教的体系と、個人/呪術的体系への分化、そして詩と呪術との二重映像的投射という重要命題がひそんでいる。 (原著は一九四五年刊行) |
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著 者 |
ジュール・モヌロ Jules Monnerot 一九〇九年、フランス領マルチニック島フォール・ド・フランスに生まれる。パリに渡ったモヌロは、三〇年ごろからアンドレ・ブルトンらシュルレアリストとの交友を持つようになる。同時期にブルトンの周りに集まった人物に、ジャコメッティ、ルネ・シャール、ロジェ・カイヨワ、ジョルジュ・ユニエなどがいる。三二年に雑誌『正当防衛』を、三六年にはアラゴン、バシュラール、ツァラらと『探究』を創刊(いずれも短命に終わる)。また三七年、バタイユ、ピエール・クロソウスキー、カイヨワらによる「社会学研究会」の設立にも加わる。社会学的見地からさまざまな著作を発表。九五年、歿。シュルレアリスム詩人ジュリアン・グラックとの交流は終生続いた。 主な著作には『社会的事実は事物にあらず』、『共産主義の社会学』、創作集『人は眼をあけたまま死ぬ』などがある。 下記の書籍にもモヌロのテキストが収載されています。 ドゥニ・オリエ編『聖社会学』工作舎(「ジョルジュ・バタイユについて」) バタイユ他『無頭人』現代思潮新社(「哲学者ディオニュソス」) |
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目 次
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読者への前書き シュルレアリスムと聖なるもの 1 希望なき呪術 2 表現の危機 3 シュルレアリスムの社会学について 4 グノーシス派とシュルレアリスム 5 未開人 6 夢の権利宣言 7 異常なもの 8 極限をさまよう人々 9 超現実と聖なるもの 10 悲劇的なるものの戸口 追記 ランボー シュルレアリスムの歴史? 原註 訳註 牧神社版へのあとがき 新版へのあとがき |
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訳者あとがき
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…モヌロは本書の扉に次のように書きつけている。「感受性の歴史の試みでもあり、同時に応用哲学の試みでもあるこの書物の中で、問題になっているのは詩人でも詩篇でも作品でも個人でもなく(大詩人その他のことは、文学史家にお任せしよう)位置と日付けをもったこの詩が人間の条件に対して担っている意味である」。著者の言う「位置と日付けをもったこの詩」が、主として一九二〇年代におけるフランスの超現実主義詩を指しており、加えて彼が一九三〇年以降ブルトンと交友をもつにいたったこと、および社会学・民族史学への強い志向をあわせもつことを考える時、モヌロの描くべき軌跡はおのずからわれわれの脳裏に現れるのではあるまいか。 訳者・有田忠郎(西南学院大学教授) |
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書評・紹介
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『現代詩手帖』2001年4月号〈特集・シュルレアリスムと戦争〉(論考) [本号に収載の、永井敦子氏による論考「ジュール・モヌロの転成」に、本書の内容と著者についてが詳細に論じられています] 『新文化』2000年11月23日(紹介) 第一次大戦後の今世紀初頭、フランスの詩人アンドレ・ブルトンが起こした芸術運動であるシュルレアリスムは、たちまちヨーロッパ全土に広がり、芸術や思想に大きな影響を及ぼした。それは近代物質文明や合理主義に対して人間性の回復をめざす、ルネッサンスにも比肩する運動だった。その研究書のなかでもとくに評価の高いのが本書で、著者はブルトンと親交篤く、社会学者であると同時にシュルレアリスムの活動家としても知られる。日本では26年ぶりの復刊で、研究者待望の書。 |
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