吉夏社(kikkasha)
【宗教・歴史、クレオール】 |
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ヴードゥー教の世界
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ハイチ・クレオール文化の焦点 ●カリブ海に浮かぶ国ハイチの国民宗教であるヴードゥー教。今まで多くの映画、小説、音楽などに素材を提供しながらも、その実態はほとんど知られていないこのアフロ・アメリカン宗教の、起源と歴史、神観念、儀礼までを通観する。ハーストンやミンツ、ハースコヴィッツ、デイヴィスなどの調査研究を足がかりにまとめられた、本邦初のヴードゥー教の紹介本。アメリカ文化やクレオールに興味のある方にもお薦め。 |
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著 者 |
立野淳也 Junya Tateno 一九六四年、広島県福山市に生まれる。一九八八年、國學院大学文学部卒業。 |
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目 次
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はじめに 1 ハイチとアフリカ人奴隷 ハイチ共和国 先住インディオとスペイン人の進出 アフリカ人奴隷と植民地社会 ダンスと宗教 逃亡奴隷と黒人法典 2 ハイチ革命とその後 奴隷たちの蜂起 トゥサンとハイチ独立 新たな弾圧 ハイチ農民社会 3 西アフリカの宗教とその展開 ダホメーの宗教 神と祖先 宗教集団 アフロ・アメリカン宗教 ニューオリンズのヴードゥー教 4 神々と人間 ロア崇拝 さまざまなロアたち 自然と神 人間と魂 5 儀礼と憑霊 ウンガンとボコール 礼拝の場 儀礼の方法 憑依の精神 註 あとがき |
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著者あとがき
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ヴードゥー教に関する本を執筆するためにハイチに渡ったハーストンは、ある書簡の中で次のように述べている。 「この仕事はとてつもなく広範、かつ複雑な体系のもので、アフリカ以外の地域では最も細分化し、現実的な力を得ていると思われます。アメリカで行なわれているフゥードゥーまじない師の交感魔術を超えるものです。カソリックの信仰儀礼と同様、整った形式ができているといえましょう。ふつうの本で十万語というのは、素材をかなり捨象し、簡潔にして主題を述べるしかできない分量です。このような手紙に書くのがいかに私にとって難しいかおわかりいただけると思います。切手の上で天文学の学説を説明するようなものですから」(中村輝子訳)。 彼女には遠く及ばないが、本書の執筆に際しても同様の思いを味わうことになった。 |
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書評・紹介
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『出版ニュース』2001年11月下旬号(紹介)
本書は、ヴードゥー教の起源に始まり、その歴史や信仰観、神の体系、儀礼などをトータルに解説したものだ。ヴードゥー教はこれまで、妖術や邪悪な風習といった差別・偏見に基づくイメージで流布されるなど、正確に認識されてこなかった。……ここでは、植民地社会の過程と、西アフリカの宗教の展開を背景として描きながら、自然と神、儀礼と憑依の本質に迫る。 bk1 書評 《アフリカから切り離された黒人奴隷による「世界の修復」の記録》 アフリカ大陸から切り離された黒人たちによる「自己が生きる世界の修復」をめざす執念が、ブードゥー教の来歴には込められていた。本書はジャマイカやキューバ、ブラジル、アメリカ合衆国ニューオリンズなど、他のアメリカ諸国における類似宗教の実態に言及し、一連の「アフロ・アメリカン宗教」の総体にまで視野を広げている。私たちのアメリカ観にも新しい奥行きを与えてくれる一冊だ。 【佐藤哲朗氏評】 bk1 書評 《ハイチの民衆信仰の歴史が明かすクレオール文化の真実》 前半部で著者は、ハイチにおけるスペイン人の植民地支配とアフリカ人奴隷の歴史から語り起こし、ハイチ革命前後の社会的背景を解説する。表向きはカトリック信仰を強要されていた奴隷たちは彼らの土着的な習わしを棄てず、カリブ海のその他の地域と同じように、異なる宗教を微妙なバランスで融合させていく。後半部では、海を越えた西アフリカ起源の民間信仰の神話体系と祭儀が説明され、その特異な秘密結社的集団の内実や舞踏・音楽文化が記述される。ヴードゥー教の多様な世界への招待となろう。 【小林浩氏評】 |
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関連書 |
・浜忠雄『カリブからの問い――ハイチ革命と近代世界』岩波書店 ・佐藤文則『ダンシング・ヴードゥー――ハイチを彩る精霊たち』凱風社 ・佐藤文則『ハイチ 圧制を生き抜く人々』岩波書店 ・フランケチェンヌ他『月光浴――ハイチ短編集』立花英裕・星埜守之編訳、国書刊行会 (以上、本年二〇〇三年に刊行されたものです) |
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リンク |
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