Succubus Quest Side Rin - 或る娼婦の憂鬱 - ------------------------------------------------------------------------- 王都グルッペン、ミランダの宿。 そこでは日々、愛を求める人々が集い 性愛と肉欲の交わり合う快楽の宴を繰り広げていた。 娼婦たちは今日も、男たちの漲る性欲の捌け口となるべく 己の身体を酷使していた。 そんな中、一人の女は呟く。 「…ねえ、たまには、お客さんに気持ちよくされちゃいたいって思わない?」 他の娼婦たちはこぞって笑った。 何を言っているのやら。 私たちは、お客を悦ばせてこその仕事でしょう、と。 「うん、まぁ、そうなんだけどね」 特に彼女…このミランダで随一の指名率を誇る彼女は 客に絶頂させられた事など、一度たりとも、ない。 彼女にとってそれは誇りであると共に…ちょっとした、憂鬱でもあった。 自称、キアズマから流れてきて10余年。 この仕事をし始めてどれほど経ったろうか? 最初こそ、男を満足させる事に四苦八苦していた彼女も 今やミランダNo1の高級娼婦。 もはや、一般客にとっては、手の届かない存在ともなりつつあった。 だからこそ彼女は、呟く。 「はぁ…ちょっとした刺激が欲しいなぁ…」 その言葉を目聡く聞きつける女性がいた。 「…見所のある男が最近ここへ来ているわよ」 彼女は、その言葉に耳を傾けた。 「あら、ホント?もしかして…あたしと話してたりするかしら?」 「何度か会話しているわね。私も彼には、飴玉と引き換えに…いえ、なんでもないわ」 「?」 良くは分からないが、常連ではあるようだ。 既に一度会話しているなら、顔は忘れない。 だが、それほど強い印象を持つ男はそうはいない。 「うぅん、思い出せない。因みに、その男の人って私と一度でも寝たかしら」 「いえ、まだ一度もこの宿を利用してはいないと思うわ」 「なぁんだ。冷やかし?」 「有り体に言うなら、そうね」 彼女は少しガッカリした。 そんな根性なしの男が相手では、満足できそうにない。 目の前にいる怪しげな娼婦の言葉も、信用できたものではなさそうだ。 「まぁ、期待はしないで待ってようかしらね」 彼女がそう呟くと… 「ふふ…そうね、これをお持ちなさいな」 怪しげな娼婦は、彼女に一輪の花を手渡した。 「何、これは?キレイな花ね」 そうして香りを嗅ごうとしたところを制止される。 「それは、貴女を満足させた男性に贈ってあげなさい」 「…プレゼント、ってこと?ふぅん…なかなか洒落ているわね」 自分を満足させてくれた男性に、花を贈る… なんだか、順序も立場も逆な気がするが… 「まあいいわ、ありがたく頂いておくわね」 そう言うと、彼女――― ミランダの高級娼婦、リンは 一輪の花、シンセミアを自らの懐へと静かに仕舞うのだった。 - Fin -