Memento Mori
意味:死を思え(中世ヨーロッパで流行した言葉、ラテン語)

彼は死にたいと思っていた。

人生なんて所詮は苦痛の連続と彼は考えていた。
やることなすこと全てうまくいかず、このままでは就職しても
早々に窓際族だろうと彼はいつも心の中で思っていた。

そもそもこの世界がこのままうまく回っていくとも彼は考えていなかった
度重なる大手企業の倒産、いつまで立っても回復しない景気、
不祥事、猟奇犯罪、天災、人災・・・・。

このまま生きていてもろくなことはない。彼はいつもそう考えていた

そして、死にたいと考えた

ある冬の日、彼はこう考えた
「このまま死んじまったら、楽になるだろうな・・・。」
彼を取り巻く環境は、彼自身にとって苦痛だった。
所詮自分自身この世に必要のない存在だと、
口には出さぬがいつも考えていた
いつも自問自答していた。そして辿り着いた先が・・・

「死」

ふと、中学の時担任の先生から聞いた言葉を思い出した。
「人間は例え4月くらいの気温でも、
寝てしまえばそのまま凍死してしまう」
彼はおもむろに車の座席シートを倒し、横になった。
空には冬の星座たちが輝いていた

「どうせ人間いつか死ぬんだ・・・。」彼は一人そうつぶやいた。
そしてありとあらゆる罵言を自分に言い放った
そして静かに目を閉じようとした

── 何度もそのまま眠っちまおうと彼は試みた
しかし、思いとは逆に彼の頭は冴えるだけであった。

どれくらい目をつぶってたのだろうか。30分だろうか、1時間だろうか、
それともたった数分間か・・・。
その間、絶えず自分自身をけなしていたのだけは彼は覚えている

そして、ふと彼は目を開けた。そして意味もなく笑い出した
なぜ笑い出したのか、今となっても彼は分からない。
こんなことをしている自分自身が馬鹿らしくなった、
と彼は適当な理由をつけたが
それが正解かどうかは、彼自身にも分からなかった

そして、何事もなかったかのように立ち上がり、彼は家路へとついた。

死ぬのが怖かったのか、それとも死ぬのが馬鹿らしくなったのか、
どっちなのかは彼自身にも分からない
ただ一つだけいえること、それは、「死にたくなかった」と言うことだけ

── 彼自身が好きな言葉「Memennto Mori」の意味が
少しだけ分かったような気がした。彼はそう思った






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