木版画を指導していると、つい力が入ってしまい深く彫っている子を見かけます。そんな子に効果のあった言葉がけをご紹介します。
今年度、高学年担任となり、3年ぶりに木版画の指導を行った。そこで、授業前に版木の準備をした。
版木には三層構造のベニア板を使った。
その版木に薄墨をつけて、彫ったところが分かるようにしておいた。
以上2点である。
授業の中で、彫るための精神的な構えとして、安全確認を行った。
「彫刻刀は鉛筆持ちにします。そして左手を刃に軽く添えます。」
持ち方の練習をする。力が入らないと言う子どもには、それで良いんだと力強く言った。
「木版画で一番多い怪我が、左手に指すことです。彫刻刀は力を入れて彫ってはいけません。また、左手を刃の前に出してもいけません。この2つは守ってください。」
そう言って、版木の裏に、線や丸を彫る練習をさせた。
練習の時に、自分に向かって彫らないこと、そのためには版木を回すことも付け加えた。
この安全指導が徹底されていれば、彫りが深くなる子はいなくなるのであろう。
しかし、うちのクラスには1人、彫りが深すぎる子がいた。
一層目の白い板の部分を突き抜けて、二層目の茶色の板がたくさん出てきているのである。
深く彫りすぎると、彫りの方向や向きが刷ったときに出なくなる。
机間巡視で気づきやめさせた。そのままさせていたら、一層目をこすぎ落としていた勢いであった。
その時の言葉がけである。
「茶色の板が出たら彫りすぎです。力を入れると怪我をしたときに大怪我になるので、茶色が出ないように軽く彫りましょう。」
深く彫りすぎる子は、ふざけて行っているわけではない。むしろ集中しすぎて力が入ってしまったと考えるべきである。そのため、失敗だとは言ってはいけない。最初は感心するぐらいがいい。
しかし、怪我をするといけないから力を入れないようにと伝えるのである。これでその子のプライドも保てることになる。
全体指導では、色に着目させる。薄墨を塗ってあるので、黒い部分は塗り残しであり、茶色い部分は彫りすぎだと色のイメージで分かる。
そう言うと、その子も周りの子も納得して、以降、茶色い板は出なくなった。
(C)TOSS TOSS空知・角銅 隆