高跳びで跳べない子には、踏み切り足を決めてあげることが有効でした。30分で全員が75cmのバーを飛び越えた高跳びの指導をご紹介します。5年生29名です。
最初に助走位置を決めさせた。
大きく分けて、右側、真ん中、左側である。
バーをつけていないウレタンマットに向かって、好きなところから出席番号順に走らせた。
不思議なもので、1人目はポールがついていないにも関わらず、高跳びの真似をした。すると次の子も、その次の子も跳んでいった。そうして一巡目が終わってからこう言った。
「その場で高くキックしてご覧なさい。(範示) 床に着いている足が踏み切り足です。右足で踏み切った人は向こう(バーに向かって左側)、左足で踏み切った人は向こう(バーに向かって右側)から走り込むのがやりやすいですよ。」
踏み切り足の確認も含め、一番走り込みやすい方向を見つけさせた。
2巡すると、ほとんどの子が助走位置を決めることができた。決められない子は真ん中の列に入れさせた。
75cmのバーをつけた。少々高いかとも思ったが、バーをつけていない練習で背の低い子も跳べそうな高さを選んだのだ。そして指示をした。
「跳べた人はマットの右側に、跳べなかった人は左側に並びます。跳べた人には大きな拍手をしましょう。」
と言って、出席番号順に跳ばせていった。
正面からの跳び込みを両足踏み切りで行った子がいるので、その子だけやり直しをさせた。踏み切り足が逆でベビーロールになった子は、よしとした。
跳べたら合格としたので、次々と拍手が起こっていった。
その結果、4人を除いてみんな跳ぶことができた。
その4人を集めて、個別指導をした。その間、跳べた子は見学していた。
使った物は跳び箱の踏み切り板である。
最初に、2歩の助走で跳ばしてみた。教師が1度お手本を示し、踏み切り板で片足踏み切りする事を教えた。
「2歩目で踏み切るのですよ。」
すぐ、2人の子が合格した。
その子たちは、踏み切り位置が早かったために、高さは十分に確保していたのに後ろの足が引っかかった子である。
拍手が鳴り響き、2人とも喜んで、できた子の列に入っていった。
問題なのはあとの2人である。1人は体育が全般的に苦手なA子、もう1人は自分の思ったとおりに行い指示を聞けないB男であった。
やる気満々のB男を待たせて、まずA子から指導することにした。できないのがA子1人になってしまった場合、運動能力よりも気持ちで負けてしまうと感じたからである。
A子の跳べない原因は、踏み切りができないことであった。バーの手前でストップしてしまう。
そこで、踏み切り板の1mほど手前にA子を連れて行き、2歩で踏み切り板に乗りなさいと指示をした。しかし、最初の1歩が踏み出せずにいた。そのため、
「体を倒して出てきた足が1歩目ですよ。」
と説明した。そして教師のお手本を示した。
最初困惑しているようだったが、1歩目の指導は短距離走の時に行っているので、「やったことがあるからできるよ。」と励ますと踏み出すことができた。
その後は順調だった。1歩目を踏み出すと逆足で踏み切る事が決まるので、踏み切り足を迷うことなく跳ぶことができた。
1回目はバーに足がかかってしまった。恐る恐る踏み切った感じである。
その間、見学の子達から「Aちゃんがんばれ」の応援が上がっていた。
2回目、見事に跳べた。
体育館中、拍手で包まれた。
しかし、念のために、もう1度跳ばせてみた。「もっと勢いをつけてやってみよう。」
3回目、勢いよく跳ぶことができ、見学の列に入っていった。
最後にB男である。距離をとってやる気満々で構えているのを制して、踏み切り板の手前まで来させた。
そして、B子と同じように1歩目の指導をして踏み切り足を決めさせた。
すると、すぐに跳ぶことができたのである。
見学のみんなから、大きな拍手が起こった。
全員で80cmに挑戦した。
その時も4人、跳べない子が現れた。
しかし、前述の4人のうち3人も跳ぶことができていたのである。踏み切り板を使用した練習で、踏み切り板を外したあともタイミングが取れるようになっていたのである。
なんとA子も1度で跳ぶことができたのである。
踏み切り足の場所を明確にでき、助走を2歩と限定することでどちらの足で踏み切るかも決まる。
また、バーの高さが踏み切り板に乗ることで相対的に下がるため、踏み越えやすくなる。
踏み切りという基本を繰り返し教えるのには、棒高跳びにあっても踏み切り板が有効であった。
(C)TOSS TOSS空知 ・角銅 隆