蛙坂須美
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実話奇彩
怪談散華


蛙坂須美
実話奇彩 怪談散華 蛙坂須美 他
「知らない」
玲華さんが始発電車で発車を待ちながらうとうとしていると男女が言い合う声がした。
しつこく言い寄る男性を、女性が言葉少なに拒絶している感じた。ナンパだろうか。
『どうしてこうなんですかねえ』
『知らない』
『どうしてこうなんですかねえ』
知らない』
そんなやり取りをひたすら反復している。
朝っぱらからうるさいなあ。
斜め向かいの席。
水商売風の女の真横に、スーツ姿の男が腰掛けていた。
『どうしてこうなんですかねえ』
『だから、私が知るわけねえだろうが!』
男の体はスルメイカのように薄っぺらで向こう側が透けていた。
そそくさと降車し、次の電車を待ったという。


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