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江原一哲

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江原一哲

江原一哲
怪談実話
コンテスト
傑作選3
跫音

江原一哲


メディアファクトリー
投稿怪談
「戦場ヶ原」 江原一哲
Gさんは、早朝の戦場ヶ原をカメラにおさめようと車でやってきた。
戦場ヶ原と言えばその昔、男体山の神と赤城山の神がそれぞれ蛇と百足に化けて中禅寺湖を
巡って死闘を繰り広げたと謂われる場所であるが、早朝の風景は静寂に包まれていた。
その風景の中、先ほどまで前を走っていたトラックが戦場ヶ原の湿原へ入り込んで行った。
トラックは湿原の中ほどで止まると、突然、荷台のリアドアが開いた。
すると、中から大量の水とともに黒く大きな物体が滑り出てきたのである。
横長で丸みをお帯びた物体の中央には鱗のようなものが見えた。
その物体は、轟音を響かせると宙に舞った。
体を鱗で覆った幅十数メートルの奇怪な物体が、空を飛び、男体山の方角へ消えて行った。

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怪談実話
コンテスト
傑作選2
人影

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メディアファクトリー
「カベトラ」 江原一哲
私が当時通っていた小学校の七不思議の中の1話が『カベトラ』だった。
その内容はいたってシンプルで、体育館に虎の形をしたシミがあるというものだった。
話の元は、虎を運搬していた車が事故に遭い、虎の檻が開いて脱走した話があった。
その虎は、町を彷徨い、最終的には小学校に進入して体育館に向かった。
体育館では一年生が縄跳びの練習をしていた。
虎は体育館の入口をくぐったところを目撃されたが、その後の姿は目撃されていない。
警察、消防等により虎の捜索が行われたが、ついに見つからなかったという。
そして迎えた小学校卒業の日。
卒業式を無事に終えた私たちは用務員のおじさんにお礼の挨拶に向かった。
私たちを前に用務員のおじさんは、カベトラに関する話を教えてくれた。
それは、この学校が出来た頃に一人の女の子が行方不明になり、その子がシミの姿になって
校内を移動しているというものだった。
用務員のおじさんは、『カベトラ』は消えた女の子が虎を壁の中に引きずり込んだものだと
笑いながら力説していた。
そして、前の用務員から聞いた話なんだと、念を押した。

数十年前、少女が本当に行方不明になったのか、虎が本当に消えたのか。
本当のところはわからない。
ただ、体育館で見た、二つの大きな目を持つトラの姿と、その傍らにさみしそうに立つ、髪の
乱れた小さな人影だけは、今も鮮明に憶えている。

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怪談実話
五千四十の死

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「黒い帽子」
Xさんは学生時代、和菓子屋でアルバイトをしていた。
バイトの日の前日、勤務先の社長の友人で帽子屋を営んでいる人物が亡くなり
社長はその葬儀に出るため、いつもより1時間早く出勤するように連絡があった。
Xさんは言われた時間に出勤すると、店の入り口で奥さんが水を撒いていた。
そのまま奥に入ると、いつものように社長が机に座っていた。
昨日の電話では、社長はすでに出発しているはずだった。
『予定が変わったのかな?』
そう思い、とりあえず挨拶を済ませるとローカールームに向かった。
出てくると社長がいない。
おかしいなと思っていると電話が鳴った。
奥さんが電話を取ったが、二言三言話すと両手で受話器を持ち、間もなく声が崩れた。
社長が葬儀に向かう途中で事故に巻き込まれて即死したという知らせだった。
電話は和菓子屋から30キロ離れた病院からだった。

Xさん曰く、最後に見た社長は、今まで見たこともない真っ黒な帽子を被っていた。


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