ファンキー 中村 |
Amazon | 楽天市場 | ||
ファンキー中村 |
ファンキー中村 |
不安奇異夜話 不明門の間 ファンキー中村 竹書房文庫 |
「恩賜の軍刀」 十年ほど前の話。当時私が経営する会社では『家屋解体』を専門に行うグループがあった。 『社長、実は困ったものが出てきまして・・・・現場に来てほしい』との要請を受けて現場へ。 『朝一番で神主が祝詞をあげていると、大地震と言うか台風と言うか、物凄く建物が ガタガタと揺れたんです。神主も驚いて、こんなことは初めてだって』 『それで何が出てきた?』 社員が持ってきたのは一振りの軍刀であった。 恩賜の軍刀・・・戦前、天皇陛下から授与された名誉な品。 施主はこの軍刀を受け取らないばかりか、いらない、捨ててくれと言うとのこと。 私は施主に電話をして、この御刀はお祖父様が大切にしていた品なので遺志を受け 継いで欲しい旨、伝えました。 その晩の寝入りばな、社員から電話が入って、すぐに現場に来てほしいと言う。 車で現場に行ったが誰もいない代わりに、白い軍服に身を包み多くの勲章を胸に付けた 伊藤博文公にそっくりな軍人と思われる人が立っていた。 『面目次第も御座らぬ』 そう言うと右手を上げ敬礼をした状態で薄くなっていった。 『ちょっと待って!』 自分の声で覚醒すると、なんと布団の中だった。 翌日、施主から電話があり、刀は大切に保管するので返してほしいとのこと。 早速、軍刀を持って伺ったついでに、なぜ気が変わったのか訊ねてみると 『昨夜、元気だった頃の祖父が夢に出て来まして、怒鳴られた揚句、軍刀の鞘で頭を 殴られまして・・・・』 『お祖父様のご尊顔を拝見してもよろしいですか?』 施主が持ってきたアルバムに写る姿は伊藤博文公にそっくりの、あの人物だった。 |