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怪談 四十九夜
断末魔


冨士玉女

怪談 四十九夜 断末魔 黒木あるじ編著 竹書房怪談文庫
「事故物件じゃないの?」 富士玉女
一人暮らしのミズホさんは、母親が病気になったので実家の中型犬を引き取ることになった。
それを機にペット可のマンションに引っ越した。エレベーターのない四階建ての三階。
十歳の雑種犬は階段もなんなく上り下りするので、かまわない。
便利な場所なのに相場より安いのは古い建物だからだろう、お隣さんのおじいさんは十五年住んでいるという。
新生活が始まり、仕事前に早起きして散歩に出かける。犬も大喜びで玄関を出る、が階段を降りようとしない。
なんとか促して中二階の踊り場を抜けると、そこから先は飛ぶように駆け降りていく。
帰りも階段を駆け上がるも、踊り場を前に急停止するのを無理やり三階まで上げさせる。
階段を躊躇する犬に諦めて、中二階から三階までは抱っこして上り下りする羽目になった。
そんなある日、お隣のお爺さんが教えてくれた。
『その踊り場で、住んでいたヒトが男に刺されて亡くなってね。もう十年経つんだけど、やっぱり犬にはわかるんかね』
妙な納得をした。十三キロの犬を抱えての階段はやはりキツイなと思い、エレベーターのあるマンションに移ろうと
画策中らしい。

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怪談 四十九夜 出棺 黒木あるじ編著
「視える人」 富士玉女
マミさんは視える人だ。しかし、それは生霊に限られる。
先日の合コンでちょっと気になる男がいた。
ほどよく酒が回ってきた頃、ふと彼の背後に視線を集中してみた。
快活野談笑する男の背後に、たくさんの巨大な黒点が見えた・・・・と思ったら『女性の目玉」だった。
『あの男は手広く女性を喰ってますね。しかもその女性たち、それを知っていて裏でみんなが結託してる』
知らぬは彼ばかり。生きているモノの方がおっかないですよ。
近いうちにかなり痛い目に遭わされるんじゃないかな、とのこと。


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