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福谷修

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福谷修
怪異ファイル 福谷修 TO文庫
「原因」
『最初はこのマンションに何かあるんじゃないかと思ったんです』
CGクリエイターのIさんの夫はイギリス人で、夫婦と生まれたばかりの長男と三人で暮らしている。
ある日、掃除のために夫の書斎に入ったIさんは、室内が異様に寒くなっていると感じた。
夫に聞くと、やはり急に室内がひんやりすることがあるらしい。他にも、本棚の本が突然床に落ちたり
壁に飾った写真が飛び散ったり、押し入れの中で音がして、中を見ると衣装ケースが半分開いて
いることもあったという。
Iさんが不安に感じていた矢先、今度は夫がマンションの階段で滑って骨折する事故が発生する。
Iさんも家の中で転倒するなど、ケガが絶えなかった。
Iさんが母親に相談すると、霊能力があるという初老の女性を紹介し、マンションを見てもらうことにした。
女性は、Iさん夫婦からこれまでの経緯を聞いた後、物珍しそうにリビングなどを確認していたが
夫の部屋に入るや表情が一変した。
女性は、壁に貼られた二枚の布をじっと見つめた。布には白い家紋が染め上げられている。
『これをどこで?』
女性が夫にたずねると、ある服にあったもので格好よかったので切り抜いて飾った、と説明した。
『その服はありますか?』
夫が押し入れの衣装ケースから取り出した。それは黒い振袖の喪服だった。
もともとIさんの親族の家にあり、年代物の上に誰も着ないため処分する予定だったが、喪服の家紋の
デザインを気に入った夫の頼みでIさんが引き取ったのだ。
喪服は、左右の胸の部分だけが四角く切り抜かれていた。
『たぶん、これね・・・』
壁の家紋を喪服に戻し、Iさんが縫い付けて、再び収納ケースに戻すと、それ以来異変は止んだという。

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​​ 恐怖のお持ち帰り2 福谷修 TO文庫
「通過」
女優のIさんが地元の高校に通っていた時の話。
寝坊したため、いつもより二つ遅いバスに飛び乗った。
一番後ろのシートに座り車内を見ると、三人ほどの老人が乗っているだけで閑散としていた。
2つ遅いバスだと、こんなにも空いているのかと思った。
やがて、バスは次の停留所に着いて後部のドアを開けた。
外でバスを待っていた人たちは、バスを見て戸惑った表情をしているだけで乗ろうとしない。
---え?なんで? 乗らなくていいの?
と思って見ていると、その中にクラスメイトがいた。
『発車します。閉まるドアにご注意ください』
アナウンスと共にブザーが鳴り、ドアが閉まった。

昼休み、Iさんは遅刻して来たクラスメイトに、どうしてバスに乗らなかったか尋ねた。
『だって、あのバス、メチャメチャ混んでいたでしょ。なんか、顔色の悪いサラリーマンがいっぱい
乗っていてさ。 ドア付近にも立っている人がいたし。 みんな、諦めるしかなかったんだよ。
Iさん、あのバスに乗っていたの?』

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恐怖のお持ち帰り 福谷修 TO文庫
「撮影妨害」
ベテラン監督のS氏がホラー映画の撮影で、海岸近くの廃墟でのことだった。
リハーサルを終えて、いざ本番を始めると、これまで正常に作動していたカメラが急に止まってしまった。
カメラマンがチェックするが、カメラには何の問題もない。しかし、本番に入るとカメラが止まる、その繰り返しだった。
スケジュールが押していたため、誰も『幽霊のしわざ』とは口にできなかった。
『くそ~! ふざけんなよ!!』
ふだんは温厚なS氏が珍しく激高して、地下室のコンクリート壁を思い切り蹴飛ばした。
『おい、幽霊! 見ているんなら黙って見てろ! このクソ野郎が!!』
そう言って何度も壁を蹴った。
(よし、あと一回だけカメラを回そう。ダメなら撮影場所を変えよう)
S氏は祈る気持ちで再び本番に臨んだ。
すると、今までのことが嘘のようにカメラが動き出した。
(まさか、俺の声が幽霊に届いたのか・・・)
その後もトラブルはなく、撮影を終えることが出来た。
『問題は、その後だったんです・・・・編集をしようと、撮った映像をチェックしたら、どのシーンにもコーンコーンって
壁を叩く音が入っていたんです。現場では誰一人聞いていない音です。聞こえたら撮影を止めています。
完全にセリフに被っているから使い物にならない。』


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