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拝み屋忘備録 怪談腹切り仏 郷内心瞳 |
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拝み屋忘備録 怪談腹切り仏 郷内心瞳 竹書房怪談文庫 「もうひとり」 真夜中、のどの渇きに喘いで目が覚める。 ベッドを抜け出し、キッチンへと向かう。 水道の前では、パジャマ姿の自分がこちらに背を向け、黙って水を飲んでいる。 |
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拝み屋備忘録 怪談 首なし御殿 郷内心瞳 竹書房文庫 「死してなお」 百恵さんが早朝、町内会の当番で近所のゴミ置き場に立った時のこと。 乳白色の朝霧が辺りにうっすら立ち込める、午前五時過ぎ。 今日は何分頃から人が来始めるのだろうと思いながら、目の前を横切る細い田舎道の向こうに ぼんやり視線を向けていた時だった。 朝霧で薄白く霞む田舎道のはるか向こうに人影がひとつ、ぼんやり浮かんで現れた。 やがて朝霧の中から人影が抜け出し、仔細がはっきり見えてきた。 とたんに百恵さんは、ぎょっとなってしまった。 こちらに向かって走って来るのは、全身血まみれの中年男性。 よく見れば、男は三村さんという、かつて百恵さんの近所に暮らしていた男性だった。。 もう何年も前、朝のジョギングの最中、車に撥ねられて亡くなった。 百恵さんが竦みあがってその場に硬直し続けるなか、やがて血まみれの三村さんは 笑顔でこちらを一瞥し、ゴミ置き場の前を走り去っていった。 ・・・・死んでもああやって、走り続けているのだろうか・・・・。 ゴミ置き場の前にへたりこみながら、百恵さんは思い惑ったそうである。 |
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拝み屋備忘録 怪談 双子宿 郷内心瞳 竹書房文庫 「コーヒーカップ」 朝早く、目覚めとともに熱いコーヒーを淹れる。 寝ぼけまなこでカップの中を覗くと、見知らぬ女がこちらを見上げて笑っている。 |
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拝み屋怪談 逆さ稲荷 郷内心瞳 角川ホラー文庫 「代筆」 私のドッペルゲンガーめいた体験。 高校一年の二学期のことだった。 当時、新聞委員会に所属していた私は、高体連の取材記事を書かされることになった。 試合当日の朝、私は母校の最寄り駅から列車に乗り込み、目的地の高校へと向かった。 しかし目的駅へと降り立ち、いざ市街地を探してみると、高校の所在地がわからない。 一時間ほど市街を歩き回ってはみたものの、結局高校を見つけることはできなかった。 幸い、取材記事の提出期日は一週間だった。 試合の結果は誰かに尋ねればわかるし、記事の中身ももっともらしいことを書き綴れば 誰からも文句は出まいと判じた。 翌日、果たして私の読みどおり、試合結果は同級生の口から簡単に知ることができた。 あとは適当に言葉を飾ってそれらしい記事に仕立てるだけである。楽なものだった。 試合から一週間が過ぎた昼休み、出来上がった原稿をたずさえ職員室へ行くと、満面の 笑みで私を迎え入れる担当教師の姿があった。 『素晴らしい記事だった。感動したよ!』などと、担当教師は私を過剰に褒めちぎる。 困惑しながらも黙って教師の言葉に耳をかたむけていると、朝いちばんで私が原稿を 持って職員室に来たらしい。 適当に話をごまかし、私が提出したという原稿を見せてもらった。 すると確かに私の筆名で、それも巧みな文章表現で書かれた原稿用紙を見せられた。 しかも原稿用紙に綴られた筆跡は、どう見ても私のものとしか思えないものだった。 『この調子で次もがんばってくれよ』 目じりをさげて私の肩を叩く教師の手前、『はい』と答えて職員室をあとにした。 結局、次にまかされた仕事は、悪い頭を使って高水準なものを仕立てあげねばならず 私は大層難儀させられる羽目になった。 |
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拝み屋怪談 鬼神の岩戸 郷内心瞳 角川ホラー文庫 「入らなければ」 二日目に飼い猫のミイが車に轢かれた。 五日目に通勤中の駅の階段で足を滑らせ、右足首の骨を折った。 十一日目に妻が大事に飼っていた十姉妹が四羽とも一斉に死んだ。 二十五日目に次男の首筋に奇妙な腫物ができ、日に日に膨らみ始めた。 三十八日目に自宅の裏手の物置から原因不明の出火があり、自宅を半焼した。 ・ ・ ・ 二百六十日目に妻が台所で足を滑らせ、頭を強く打って亡くなった。 知人の勧めで、さる宗教団体に入信し、自家の仏壇と墓を処分して八か月。 これだけの災禍が延々と続き、今でも止まることなく続いている。 知人や教団の関係者は 『あなたの家に悪霊が憑いている。絶対に助けますから』 と 毎日親身になって話を聞いてくれるし、除霊の儀式もおこなってくれる。 けれどもさすがに薄々感づいている。 原因は、悪霊のせいなどでは絶対にない。 できれば自家の仏壇と墓を処分する前からやり直したいと、加山さんは語っている。 |
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拝み屋怪談 来たるべき災禍 郷内心瞳 角川ホラー文庫 虚実の境が見えなくなってしまった時、人にとってあらゆるものが、怪異となり得る危険を孕む・・・。 現役の拝み屋が体験した現世のこととも悪夢とも知れない恐るべき怪異。 すべては20年以上前、ある日曜日の昼下がりに一人の少女と出逢ったことから始まった。 その少女、14歳の桐島加奈江は果たして天使か怪物か、それとも・・・・・ 訪れた災禍を前に恐れ慄く一方で、必死に解決を図ろうとする拝み屋の衝撃実話怪談! |
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拝み屋怪談 禁忌を書く 郷内心瞳 角川ホラー文庫 「献花」 中学生の誠也君から、こんな話を聞いた。 誠也君が通学に利用している道路の端には献花が供えられている。 花は小さなプラスチック製の花立てに生けられ、季節の花が絶えることなく供えられているという。 向暑のみぎり、県内全域に烈しい暴風雨が吹きすさぶ早朝のことだった。 横殴りの雨の中、どうにか自転車を進ませていると、やがて前方に献花が見えた。 花は普段と変わらず、花立ての中に整然と佇んでいた。 献花をちらりと横目で見ながら通り過ぎた・・・・が、そこで『はっ』と思い、自転車を止めたのだという。 こんな烈しい雨風だというのに、花立てはぴくりとも動いていない。 思わず、自転車から飛び降り、花立ての様子をまじまじと観察してみた。 花立ては固定されておらず、花そのものさえ、そよそよと揺らいでいることもなかった。 目の前で平然と佇む花立てにどうも納得がゆかず、不遜を承知で恐る恐る花立てを持ち上げてみる。 花立ては何の抵抗もなく、片手でひょいと持ち上がるほど軽いものだった。 だんだん怖くなってきた誠也君は、それ以上詮索するのをやめ、急いで学校へ向かった。 花立ては、今でも同じ場所に佇んでいるという。 |
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拝み屋怪談 花嫁の家 郷内心瞳 メディア・ファクトリー 拝み屋を営む著者が相談を受けた話の数々。 全ての話がある家系に繋がっている。 一番まともな相談者が『母様』と呼ぶ、頭部だけで生きている物とは? 『母様』を持ち出した、その相談者が亡くなり、著者が相談者の遺志を引き継ごうとするが 先輩拝み屋に止められる。 それでも行こうとする著者に、先輩拝み屋が助勢してくれることになった。 『母様』を処理したのは先輩拝み屋だった。 彼は、その数時間後に亡くなる・・・・ 数年後、『花嫁が必ず3年以内に死ぬ』といわれる東北の旧家へ嫁いだ女性から 相談を受けるが、この相談者もある家系の一族だった。 一番まともな相談者の従姉妹だったのだ。 著者は悪戦苦闘の末、良い方向へ導くことができていた。 その矢先、花嫁が急死する。 東日本大震災で、舅を助けるために家に戻って被災したのだった。 電話で夫が止めたが、聞く耳を持たなかった。 |
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拝み屋怪談 怪談始末 郷内心瞳 メディア・ファクトリー 「弾顔」 真夏の深夜、吉田君が遊び仲間数人を連れて地元の海岸線を車で走っていた。 両脇を松林に挟まれた狭い一本道を飛ばしていると、突然後ろから猛烈な エンジン音が近付いてきた。続いてハイビームの閃光が車内を照らす。 白い軽自動車が、吉田君の車の真後ろをべったりと張り付くように激走している。 道路が狭いため、路肩に車を寄せて道を譲ることもできない。 『あの車、シメよう』 ということで即座に意見が一致した。 すぐさま、アクセルをベタ踏みして後ろの軽自動車を引き離していく。 適当な距離が開いたところで、車体を斜めに傾けながらブレーキペダルを踏みこんだ。 急ブレーキの大音響とともに吉田君の車が停まり、続いて軽自動車が停まった。 吉田君たちは、ただちに軽自動車を囲んだ。 車内には黒ぶち眼鏡をかけた気の弱そうな青年と、地味な服装の若い女が乗っていた。 怯える二人をみんなで怒鳴りつけていると、背後の暗闇にうっすらと光を感じた。 全員が顔を向けると、蛍光塗料のような淡い緑色の光に囲まれた球体が凄まじい 速度でこちらに向かって飛んできた。 それは、吉田君の頭上一メートルくらいの中空を弾丸のように びゅん! とかすめて 飛んで行った。それは髷を結った男の生首だった・・・・ 『すみません・・・あれから逃げていたんです・・・・』 眼鏡の青年が詫びを入れた。 |
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怪談実話 お不動さん 郷内心瞳 小笠原幹夫 島一 敬志 坂本淳仔 月森馨夜子 野田なのな 鯱田佳狼 メディア・ファクトリー 「お不動さん」 郷内心瞳 お不動さんの池の鯉を盗み、あろうことか、鯉こくに料理した上に不味くて生ゴミで捨てた。 次の日の朝、部屋には湯気が立ち昇り、部屋で飼っていた熱帯魚の水槽には煮崩れした 熱帯魚が白い塊になって死んでいた。 水槽の硝子に手を触れると火傷するほど高温になっている。 夏のことでサーモスタットを使用していなかったにも関わらず、部屋に置いていた全ての 水槽で同じことが起こっていた。 昨夜の鯉への仕打ちが思い出され、涙がこぼれた。 そして、可愛がっていた愛魚の無残な最期の姿に、大粒の涙がながれた。 心底、反省した私はお不動さんへ謝罪に出かけた。 愛魚の命と引き換えになったのか、その後は特にお咎めはない。 |