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原田空




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原田空
深澤夜

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深澤夜
「超」怖い話 戊(つちのえ) 原田空 深澤夜 竹書房文庫
「遅喋」 原田空
間もなく米寿を迎える翁から聴いた話。
五十年程まえのこと、甥御が嫁を迎えて女児を授かったという。
病気ひとつするわけでもなく、すくすくと育ったが、二歳を過ぎた頃、言葉の遅れを感じるようになった。
集落の同じ頃の子供たちが、月齢に合わせて二語、三語と意味を含んだ言葉を発するようになる中
甥御夫婦の子は発語こそあるものの、意味を成さない言葉を話す。
『ゲ』 『ガ』 『グ』のような濁音を含む言葉が目立って多い。
子が五歳を迎えようとする頃、一度、大きな病院で医師の診断を受けようという話になった。
田舎町なので、町長に相談して、県境の大学病院を紹介してもらった。
診察当日、丸椅子に座った医師は子に幾つかの質問をした。
子は医師の言葉を理解しているのか定かではないが、何事かを一心に話し続けている。
いつも通りの意味を成さない言葉。

一通りの問診の後、夫婦は医師から 『身内に外国籍の人間がいるか』 と訊かれた。
夫婦は首を横に振る。医師は首を傾け、眉間に深く皺を寄せる。
子が発していたのは、流暢なドイツ語であったという。

原田空
深澤夜

原田空
深澤夜
「超」怖い話 丁(ひのと) 原田空 深澤夜 竹書房文庫
「通子」 原田空
今年、三十路を迎える川村さんから伺った話。
彼女は、現在のご主人と六年前に入籍した。
彼女には習慣・・・というよりも変わった癖がある。
トイレに入ると、ドアを開けていなければ用を足せないのだという。
幼いころ、姉がふざけてトイレのドアを押さえ付け、閉じ込められたのがトラウマに
なったのだと川村さんは話す。
『無論、家以外の場所では我慢して閉めますよ』
しかしながれあ、ドアを閉めて用を足すと、動悸が激しくなり、未だに眩暈がして
脂汗が出てしまうそうだ。
ある朝、ご主人を会社に見送った後、トイレに行き、便器に腰を下ろす。
いつものようにドアは開けっ広げにしていた。
二人の幼い子供たちが、トイレの前の廊下を無邪気に戯れながら走って行く。
柱の陰から顔を覗かせ、ドアを開けて用を足す川村さんを笑いながら根がめていた。
彼女はご主人と二人暮らし。
ご主人は子供が嫌いで、川村さんは結婚後に二度、妊娠した子供をいずれも堕胎している。

原田空
矢内倫吾
高田公太

原田空
矢内倫吾
高田公太
恐怖箱 蟻地獄 原田空 矢内倫吾 高田公太 竹書房文庫
「ピッピッピッ」 原田空
ある女性の体験。
朝、ベッドから出ようとすると足元から『ピッ』と音がした。
何の音だろうと足下を見るが、何もない。
気のせいかと思い、ベッドから降りた。
『ピッピッピッピッピッピッピッピッピッ』
また音がする・・・・
その日は、幼くして交通事故で亡くなった娘さんの一周忌
生前、歩くと『ピッピッピッ』と音がする靴をお気に入りで履いていた。
その日は女性が歩みを止めるたびに『ピッピッピッ』と音がした。
『ママ、元気出して』と言われているようで、涙が止まらなかった・・・・

つくね乱蔵
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深澤夜

つくね乱蔵
原田空

深澤夜
恐怖箱 蛇苺 つくね乱蔵 深澤夜 原田空 竹書房文庫
「屁 二題」 原田空
商社に勤務している女性の体験。
ある夜、帰宅した彼女がビール片手にソファーでリラックスしていると
おならがしたくなった。
一人暮らしであるので、誰に気兼ねすることもない。
『ぷぅぅぅぅぅ~』
軽快感と、すっきり感を同時に味わっていると
『ぎゃはははっは~』
男の笑い声が部屋中に響いたが、もちろん一人暮らしである。
その声にびっくりした彼女は、またも
『ぷすっ』と漏れてしまった。
『ぎゃはははははははぁ~』
『くっくっくっくっくっくっく!』
『うわっはっはははははは』
数人の男の笑い声が部屋中に響き渡った。
それ以来、その部屋でおならはしていないという。


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