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服部義史
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北怪導 蝦夷忌譚

服部義史
北怪導 蝦夷忌譚 服部義史 竹書房怪談文庫
「彼女がいるとき」
ある日のこと、彼女が遊びに来て一緒にレンタルビデオを見ていた。
夕方になると、食事の支度を始めてくれた。
『もう少しでできるからね!』
『おう』
少しの間を置き、今のうちにトイレに行っておこうと思った。
ドアノブを握ると鍵が掛かっている。
(もう、早く出てくれよ。美紀・・・・)
急がすようにノックをすると、中からノックが返ってきた。
『そろそろヤバイから、美紀早く出て!』
『何が早く出てって?』
彼の背後に美紀さんが立っていた。
(え? あれ?)
ドアノブを回すと、トイレのドアは普通に開いた。

ノックが返って来るのは、いつも美紀さんが来ているときらしい。

服部義史
恐怖実話 北怪道 服部義史 竹書房文庫
「E別の古民家」
E別のとある道から少し外れると、ぽつりと建つ打ち捨てられたような家がある。
その日、津高さんはE別の古民家に二十三時に到着していた。
現地で仲間と待ち合わせをしたのだが、約束の二十四時になっても誰も来ない。
たった一人で中に入ることにした。
玄関の引き戸は、外からつっかえ棒をしているだけなので簡単に開いた。
土間が広く、目の前は居間のようで、茶箪笥や卓袱台がそのまま残されている。
津高さんは廃墟の定番の仏間を探し始めた。
居間から続く渡り廊下の一番奥が仏間であった。
次は風呂場でも探すか。と、仏間から出よとしたそのとき・・・・
後ろ髪を グンと引っ張られた。振り向くが誰もいない。
次は両肩を思いっきり引っ張られ、尻もちをつくことに・・・・
霊感など持ち合わせていない津高さんだが、これはヤバイと感じて突破を試みた。
勢いよく出した足を固定された形で前に倒れ、顔面を強打した。
見れば、津高さんの足を抑えつけたのは畳から生えた腕であった。
恐怖より危険を感じて、腕が足を離すタイミングで出口に向かって走り出した。
すると、卓袱台に座る老人の姿が目に入り、振り返る老人と目があった瞬間、意識が飛ぶ。
『ゆるさん・・・・ゆるさん・・・・許さん』 頭の中に老人の声が響き渡る。
 (ごめんなさい、ごめんなさい) 
立ち上がった老人は右手人差し指を伸ばし、津高さんの額に触れた・・・・
・・・・津高さんは車を走らせていた。運転していることはわかるが、自分の意思はそこにない。
どんどん加速し、ハンドルが揺れるのがわかる。そのまま電柱に激突し、記憶が途絶える。
一時は心肺停止の大事故で、長い入院生活の末、社会復帰したが右足は不自由になった。
それから心霊スポット巡りは止めた。 現在は、日常の有難みを痛感しているという。


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